ノベルズ読書日記その19

晴夜が読んだ本の感想を書いていきます。
評価は4段階  S=最高!! A=良かった B=イマイチ C=さいてー
基本的にネタバレありなので、ご注意ください!

索引

2011/12/24  評価 A
スタンレー・ホークの事件簿 T 仮面〜ペルソナ 山藍紫姫子 角川文庫

タフでクールな不良刑事スタンレーと、貴族的な美貌をもつその上司ロスフィールド警視、そして妖しい魅力を放つ精神科医ジン。
美しくも危険な3人の男たちがバージルシティを震撼させる連続殺人事件の謎に挑む。
互いに反目しあう男たちの視線がドラマチックに、熱く絡みあう時、予想もできない新たな扉が開かれる…。
 仮面ーペルソナ/月光浴ールナティック/ウロボロス


  薄いので旅行にちょうど良いと思って持参。
  いや、山藍さんの作品なので警戒すべきでしたが、冒頭を少し読んで、珍しく普通の小説?なんて思ったのが失敗……。
  ま、失敗でもないけど、隣の人に覗かれたらちょっとまずいようなエロ描写が多く出てくる小説なので、通勤ラッシュにはオススメできません。
  それと同性愛に抵抗がある人にもおすすめできません。
  ただ内容は面白いです。

  「File1 仮面〜ペルソナ」と「File2 月光浴〜ルナティック」は、つながっています。
  時系列的にも近々の話です。
  巻末に、「特別付録 ウロボロス」というのが掲載されていて、これは全く別の話……かな、と思いますが、こちらも面白かったです。

  96年発行の作品を修正して文庫化したものだそうですが、角川さんって流石だなあ、と思っております。
  というのはBL系のレーベルではなく普通の角川文庫で何冊か山藍さんの過去作品を発行していることです。
  BL作品であるという色眼鏡をかけずに、作品を評価しているということだと受け止めています。
  特に、以前角川文庫として刊行された「色闇」の素晴らしさといったらなかった。

  というわけで、この話の三角関係(スタンレーとロスフィールドとジン・ミサオ)は、山藍だったら3Pも当たり前なので解消はしないでしょうけれど、続巻を読むのが楽しみです。

  と、さっき、「ウロボロス」は全く別の話、と書きましたがそういうわけでなく関連しているのかも、という気にもなってきました。
  でも今ひとつ関係性は謎ですけど。
  ラングレーがスタンレー?? アークライトがアリスティア? あ、そうやって書くと名前も似ているような気が。
  気のせいかなあ。

  それとこれは全然関係ないけど、ルナティックにウロボロス、偶然にもTIGER & BUNNY に符牒があいますね。

2011/12/22  評価 A
燦 2  光の刃 あさのあつこ 文春文庫

江戸での生活がはじまった。
伊月は藩の世継ぎ・圭寿とともに窮屈な大名屋敷住まい。
一方、異能の一族に生まれ育った少年・燦も、祖父の遺言を守り、江戸の棟割長屋に暮らす。
その二人が町で出会った矢先に不吉な知らせが届く。
さらに屋敷でも圭寿の命を狙う動きが。
少年たちが江戸を奔走する、文庫オリジナルシリーズ第二弾。


  面白いですね。前巻も良かったけど、今回ものめり込むように読んでしまいました。
  まあ、全体で何冊になるのか分からないけど、1冊目と比べると今回の方がまだまだ起承転結の「承」といったところで、展開も少なく驚きも少なかった。
  若者が主役(中心)ということが良い効果なのか、ところどころ軽快だったり、マンガのような間があったりするのも読みやすい要因かも。
  早く早く続きを!

  前にも書いたような気がしますが、この爽やかなシリーズも続きが気になりますが、「弥勒の月」シリーズの方も是非続きをお願いしたいです。

  そうだ。1箇所だけ残念なところが。
  伊月が須賀屋に原稿を持ち込んだシーンで、店主の天三郎が風呂敷包みを解いた、と書いてあり次の瞬間には手代も読み終わっていて、自分も読み終わった前提で話が進んでいたのでびっくりしました。
  いつ読んだのか全然分かりませんでした。
  あまりの急展開にそのページ周辺を何度も読み返しましたが、やっぱり風呂敷包みをほどいた瞬間に2人が読み終わったことになっているように見えます。

2011/12/19  評価 A(S寄り)
ぼくのメジャースプーン 辻村深月 講談社文庫

忌まわしいあの事件が起きたのは、今から三ヵ月前。
「ぼく」の小学校で飼っていたうさぎが、何者かによって殺された…。
大好きだったうさぎたちの無残な死体を目撃してしまった「ぼく」の幼なじみ・ふみちゃんは、ショックのあまりに全ての感情を封じ込めたまま、今もなお登校拒否を続けている。
笑わないあの子を助け出したい「ぼく」は、自分と同じ力を持つ「先生」のもとへと通い、うさぎ殺しの犯人に与える罰の重さを計り始める。
「ぼく」が最後に選んだ答え、そして正義の行方とは。


  いや〜、これは辛い話でした。
  主人公のぼくが頑張れば頑張るほど、こっちの胸が痛む。
  可哀相すぎます。
  なんて健気で、なんて純粋なんだろうと。
  こんな大人びた小学生がリアルに居るわけない、小学生男子の思考回路がこのようなはずは無い、って分かっているけど、胸を打たれました。
  彼が一生懸命であればあるほど泣けてきます。

  実際、ラストの100ページくらいは半泣きで読んでました。
  秋山先生がふみちゃんのことを「優しい子です」って表現したところも泣けました。
  よく見てるなあ、と。
  こんな風に見ててくれる人ってなかなかいないよな、とか。(見てくれるのは親くらいだ!)
  秋山先生が、主人公のぼくに、「あなたはPTSDです」って宣言したところも泣けました。
  そうか、だから失敗作のマドレーヌを甘いって言ったのか、と納得しました。

  ぼくの名前が一切出てこないのはどうしてなんでしょうね?

  ふみちゃんが最後、喋れるようになって本当に良かったです。
  こんな事件は現実にたくさん起こっているけど、本当に良くない。
  人の心をこんなに傷付けてはいけない。
  「名前探しの放課後」、「子どもたちは夜と遊ぶ」も読んでみたいと思います。

  このお話は、さしづめアンデルセン「雪の女王」の男の子版だ、と思った次第です。

2011/12/18  評価 B
天頂より少し下って 川上弘美 小学館

一実ちゃんのこと/ユモレスク/金と銀/エイコちゃんのしっぽ/壁を登る/夜のドライブ/天頂より少し下って
7本の短編集。


  川上弘美は熱烈なファンが多い、という印象を以前から持っていたので、一度読んでみたいと思っていました。
  つまりこれが初の川上弘美作品となります。
  短編だったのがいけないのか、魅力がさっぱり分かりませんでした。
  どうも文章の相性も悪いような気がします。
  読みやすい文章ではあるのですが、もってまわった言い回しが時々引っかかります。
  また、描かれる世界が私の好みでなく、あまり魅力を感じませんでした。
  一番問題なのは、唐突に終わることです。
  え、ここで終わり?? 7本全てにそう思いました。
  これで終わってしまうのでは、この話の意味は? と、置いてきぼり感満載。
  うーん残念です。有名な「センセイの鞄」などを読むとまた違うのでしょうが、残念でした。


2011/12/12  評価 A(B寄り)
今日を刻む時計 〜髪結い伊三次捕物余話 宇江佐真理 文藝春秋

大火で住み慣れた家を失った伊三次とお文。
あれから十年、二人は新たに女の子を授かっていた。
そんな二人の目下の悩みは、独身を続ける不破龍之進と絵師になる修業をしている一人息子、伊与太の身の上…。
 今日を刻む時計/秋雨の余韻/過去という名のみぞれ雪/春に候/てけてけ/我らが胸の鼓動


  久しぶりに伊三次シリーズを読んだ。
  が、読み始めて物凄く戸惑ってしまった。
  なんだか、みんな歳をとっている!!
  あれから10年、こんな事がありました、こんな境遇になりました、みたいになっている。
  しかも、読み始めた最初の話は、新たに生まれたという女の子視点であった。
  初お目見えキャラなのに、いきなりその子の視点で俯瞰しなければいけない。慣れるまで骨が折れました。
  しかも、このシリーズのセカンドシーズンもしくはサードシーズンに突入したようで、知っているキャラが10年で変貌していたりで、勝手が違いました。
  そもそも伊三次の出番が物凄く少なくて、主人公じゃないみたいだったのも気になりました。

  6編収録されている本ですが、終始一貫、「龍之進が独身で親や周囲がヤキモキし、本人も嫁取りしないとなーと考えてる」みたいなことが中心になっていまして、私のような者からすると、女性を見ればすぐに自分の嫁としてどうか?と想像する龍之進に嫌悪感を覚えました。
  どの話もそうだったので余計にです。
  お前は発情期の犬か。と、嫌悪感です。
  女のことばっかり考えて目移りしていることに腹立たしさを感じます。キモイです。
  しかも、この6編の話を通じて、嫁候補みたいな女の子が何人か登場し、最後にようやく決まりますが、なんか27歳まで独り身だったりしているわりには、かなりあっさり決めてしまって「ほんとにそれでいいの?」と逆に問い質したい気分になりました。
  却っていい加減な男にみえて逆効果ではなかったでしょうか。
  父親の友之進がいなみを妻に迎えるエピソードが素晴らしかっただけに、とっても残念です。

2011/12/7  評価 A(B寄り)
臥竜の天 上下 火坂雅志 祥伝社

時は戦国末期。
みちのくの大地から隻眼で天下を見つめる十九歳の若者がいた。
伊達家当主、政宗である。
下剋上の世にあって馴れ合う奥羽大名の慣習を打ち破り攻めに出た政宗だったが、畠山氏に裏切られ、父・輝宗を喪う。
悲しみを乗り越え、怒涛の勢いで奥州制覇に動き出す政宗。
一方、上方では豊臣秀吉が天下統一に向けて奥羽にも手を伸ばそうとしていた。


  この評価は、少し厳しいかも知れませんね。
  伊達政宗の小説というと、やはり夏に読んだばかりの山岡荘八全8巻が偉大過ぎて、どうしても比べてしまいます。
  こちらは全2巻なので、比べること自体が間違っているのですが、あの内容(政宗の生涯)を2冊に凝縮てんこ盛りなので、一つひとつのエピソードがどうにも薄くて、色々残念でした。
  山岡荘八の小説に描かれているエピソードと同じだからこそ、脳内補填してしまったり。
  特に下巻が悲惨。
  下巻は、秀次の立場が危うくなったところから、政宗の最後まで描いているので、話がびゅんびゅん飛びます。

  もしも8冊読むのは大変だから、という理由でこちらを読むことは、私としてはあまり薦めたくないところです。
  伊達政宗ならば、できれば山岡荘八を読んで欲しい。
  2冊に凝縮したものでは、物足りないのが正直なところです。

  ただ、火坂さんの文章は読みやすいです。
  ここまで長年にわたる内容にせず、せっかくだからもっと短い年数にしてエピソードを濃密に描いた方が、寧ろ良かったのかも知れないです。
  それと、黒脛巾組(くろはばきぐみ)という政宗子飼いの忍び達が登場するのですが、これは良かったですね〜。
  あと、屋代勘解由の描き方も良かったです。

2011/11/30  評価 A(B寄り)
左近の桜 長野まゆみ 角川文庫

武蔵野にひっそりとたたずむ一軒の古屋敷。
そこは、世界をはばかる逢瀬のための隠れ宿「左近」である。
十六歳になる長男の桜蔵は、最近どうも奇妙な男にかかわることが多い。
生まれながらの性質なのか、その気もないのに、この世ならざるあやかしたちを引き寄せてしまうのだ。
彼らは入れかわりたちかわり現れては、桜蔵を翻弄するのだが。


  久しぶりに長野まゆみを読みました。
  ほとんど衝動買いです。タイトルと表紙に惚れたのです。
  読み始めたらとっても幻想的で、長野まゆみらしく儚い淫靡さが素敵でした。
  描かれる世界は、今市子のマンガ「百鬼夜行抄」を思わせる、あやかしが登場する幻想世界でした。
  章が進むごとに、主人公の桜蔵(さくら、と読む。高校生男子)の美人度が増すのも良く、表向きは父親ということになっている柾(まさき)との関係もなんだか怪しくて、とても興味深く面白かったです。
  次巻が出たらぜひ買います!

  だけど、好みを言うと、同じ長野まゆみであれば「白昼堂々」「碧空」……と続く、凜一のシリーズの方が好きです。
  凜一は、自分をゲイだと自覚していて、好きな男に惚れきったまま好きだと言えない、あの感じが良かったのです。
  桜蔵は、彼女がいたりして、自覚が無いのがちと残念。
  まあ、その辺りは続巻に期待します!

2011/11/15  評価 A
デフ・ヴォイス 丸山正樹 文藝春秋

時を隔てた二つの殺人事件。
生活のため手話通訳士になった荒井は、刑事事件に問われたろう者の法廷通訳を引き受け、そこで運命の女性・手塚瑠美に出会う。
第十八回松本清張賞最終候補作。


  警察事務官を退職した男が主人公で、日本手話が使えることから先天性ろう者の手話通訳として重宝され、とある事件(自分のトラウマでもある)に関わっていく、という社会派小説。
  面白く読みました。
  そもそも、手話に、日本手話と日本語対応手話の2種類があることも、この小説で知りました。
  我々が想像する手話は日本語対応手話のようです。
  先天的に耳の聞こえない人にとっては日本語対応手話は分かりづらいとのこと。
  日本手話とは、文法が異なるようです。
  主人公は両親も兄も聴覚障害者であることから日本手話が使えるという設定。
  自身はろう者ではなく、ろう者同士の間に生まれた耳の聞こえる子ども(コーダというらしい)で、そのことが傷になっても居るのです。

  本当に知らない世界でした。
  そもそも、聴覚障害者、健常者という言い方は好きじゃない、と登場人物が話していて、「そうなのかー」と。
  なんといいますか、もともとの言い方(今や放送禁止用語)がひどい言葉だったので、それよりは良い言い方だと思っていたのですが、そういうことでもないんですね。
  また、ろう者の間では、先天的に耳の聞こえない人と、後天的に耳が聞こえなくなった人との間に差別まではいかなくても、壁があるみたいで、そうしたことも知りませんでした。

  本書の中心となる事件や、過去の事件など色々と錯綜するので、面白くもあり、小説としては分かりづらくもあるのですが、自分にとって目新しい世界が繰り広げられていることから、最後まで楽しく読みました。

  気になったのは、主人公の恋人が登場するのですが、警察の内部情報を主人公に流していたことです。
  それはまずいだろ。いくら主人公が退職した人(元関係者)とはいえ。
  また、主人公がこの女性を本当に好きかどうかも全然私には分からず、男の方が流されているようにしか見えず、寧ろ本当にこの女性はこの男でいいのか?ということが気になりました。
  だってこの男、結構いろんなことを女性に隠していたり、なんといっても、子どもを取引材料にしましたからね!
  再婚は考え直した方が……。余計なお世話ですが。
  ま、女の方も、再婚してくれるなら誰でもいい、みたいなことなのかも知れませんけど。
  あーやだやだ。だから男女の恋愛っていやなんだよ。
  そんな要素が無ければなおグッド。

  KTさま、貸してくださってありがとうございました!!

2011/11/8  評価 A(B寄り)
タイニー・タイニー・ハッピー 飛鳥井千砂 角川文庫

東京郊外の大型ショッピングセンター「タイニー・タイニー・ハッピー」、略して「タニハピ」。
商品管理の事務を務める北川徹は、同じくタニハピのメガネ屋で働く実咲と2年前に結婚。
ケンカもなく仲良くやってきたつもりだったが、少しずつズレが生じてきて…(「ドッグイヤー」より)。
今日も「タニハピ」のどこかで交錯する人間模様。
結婚、恋愛、仕事に葛藤する8人の男女をリアルに描いた連作短編集。
ドッグイヤー/ガトーショコラ/ウォータープルーフ/ウェッジソール/プッシーキャット/フェードアウト/チャコールグレイ/ワイルドフラワー


  TBS「王様のブランチ」でベタ褒めだったので、買ってみました。
  が、「王様のブランチ」の視聴者の年齢層のことを考慮することを忘れてました。
  この本に描かれているのは、私にとっては、関係のない世界でした……。
  番組のコメンテイターが、「読後キュンキュンします!」と言ってましたが、私みたいな腐った女はBLにキュンキュンするので、こういう真っ当な男女の真っ当な関係には、どうやってもときめきません。
  こればかりは仕方のないことです。

  まあ、そういったことさえ除けば、連作短編集は大好物ですし、キャラクターも立ってますので、楽しく読みました。
  ちょっと登場人物が多いかなとも思ったのですが、ま、いいかと。
  だけど、中心人物の北川夫妻は、あまりにも善良過ぎて食傷してしまいました。
  私にはもっと個性の強い、小山理恵ちゃんと川野くんカップルや、キャリアウーマンの大原課長辺りがそそられます。
  本書の1番目も最後も、北川夫妻の物語だったので、このカップリングが本書の一押しなんでしょうが、残念でした。
  妊娠発覚で終了ってのも、残念な終わり方でした。
  番組でのベタ褒めっぷりを思えば、他の方はほっこりするんでしょうね、きっと。

  まあ、BLでもこういうシリーズ物ありますからね。
  私はそっちを楽しむことにします……。

2011/11/5  評価 B
歳三の首 藤井邦夫 学研M文庫

箱館戦争で五稜郭より出動し、一本木関門付近で一発の銃弾によって命を落とした土方歳三。
しかし土方の首はいったいどこに消えたのか?
新撰組隊士であった永倉新八は、土方の首を追って箱館へと向かう。
なぜ永倉は、土方の埋葬場所を突き止めようとするのか!?


  ある日、本屋さんの中を歩いている時、目の端をよぎった文字がありました。
  「歳三の首」
  見間違いか? と思ったのですが、そんな文字を見てしまっては、足を止めるよりありません。
  私の凄いところは、それは平積みでもなければ表紙を表に出していたわけでもなく、普通の本と同じように、本棚にしまわれていた、ということです。
  つまり、私の目は、背表紙の小さい文字で「歳三の首」を捉えた、ということです。
  それも、違う方向を目指して歩きながら。
  足を止め、本棚から引きだし、裏表紙のあらすじを読んだ私は、その本をレジに持っていきました。
  完全に衝動買いでした。すげーな、俺。と思いながら(笑)。

  さて、戊辰戦争が終わり、永倉新八が杉村家の養子になるべく蝦夷・松前を訪れ、そこで市村鉄之助に出会うところから物語が始まります。
  箱館では、古高俊太郎の従弟・古高弥十郎が、憎き土方歳三の死体を掘り起こし、その首を落として晒し首にしようと、部下を総出で捜索していたわけです。
  で、新八と鉄之助が、それを阻止しようと奮闘する話です。

  珍しく新八が主人公です。
  そして、珍しい着想に加えて、まず気になったのが、「この話、どうやって落とすの?」ということです。
  というのは、土方さんの遺体は、箱館のどこかに埋められている、ということになってまして、あちこちにあるお墓のどこにも遺体は埋葬されていないわけです。
  そんなことは周知の事実であることから、この小説の落ちもある程度は見えてくるところですが、まあやはり普通のファンとしては、帰着点が気になるわけです。
  まさか、遺体を出すのかしら。とかね。
  で、まあ、ネタバレも甚だしいので敢えて言いませんが、この小説の落ちにはドン引きでした。
  そうですか。こうしちゃいますか。残念ですね。
  といったところです。
  278ページ。
  驚愕の瞬間です。

  いや〜〜、この人はなんでこのような小説を書いてしまったんでしょうね。
  しかも、文庫書き下ろしかと思ったら、文庫落ちじゃないですか。
  うーん、とんでもない。途中までは面白かったのにねー。

  あ、あと、島田魁を出しても良かったかもね。
  いっそのこと。

2011/11/4  評価 A(B寄り)
漂砂のうたう 木内昇 集英社

明治維新から十年。御家人の次男坊だった定九郎は、出自を隠し根津遊郭で働いている。
花魁、遣手、男衆たち・・・変わりゆく時代に翻弄されながら、谷底で生きる男と女を描く長編小説。
第144回直木賞受賞作。


  こないだ(2010年下半期)の芥川賞・直木賞受賞作のうち、読んでみたいな〜と思った唯一の本。
  ただこの著者、デビュー作が新選組の本なのですが、文章が読みづらかった(好みじゃなかった)覚えがあるので、ちょっと読むのに躊躇したりもしました。
  でも実際に読み始めてみたら、案外行ける!と思いました。
  確かに文章に特徴があるのですが、それだけに、脳内に映像が浮かびやすいのです。
  明治10年という時代も、私にとってはちょっとツボでもあり、また、遊郭という光と影のコントラストの強い(影の方が濃い)舞台も、そそられるものがありました。

  主人公の定九郎は完全にモラトリアム人間で、自分の居場所はここではない、とずーっと思って生きている。
  元々自分は武士であり、遊郭の立番という仕事は本意ではなく、仕事に面白さも見いだせず、いつか逃げ出す機会を待っている。
  周囲の人間も自分とは相容れないし、ここは自分の居場所ではない、という感じ。現代の若者にも通じそうですね。
  そんな定九郎が、根津遊郭を揺るがす、とある事件をきっかけに、自分の居場所は自分で見つけるものなのだ、と気がつくのでした。
  300ページ弱かけて、ようやく定九郎は真人間になれた、といったところでしょうか。

  定九郎に対する人物として、龍造という妓夫が出てきますが、これが自分の仕事に誇りを持っていて、きちんと自分の人生を生きていて、いい男なのです。
  加えて生い立ちに事情があったりして、かっこいい。
  「生きていりゃあ何かしら痕が刻まれる。誰でもそうだ。だがどんな痕であれ、そっから逃げなきゃならねえ謂われはねえんだ」
  という龍造の科白がとても素敵でした。
  キーになる花魁・小野菊も、男前で素敵な女性でした。

  脳内に映像が浮かびやすい、と前述しましたが、影の濃い映像でありつつも、色彩が鮮明で幻想的でありました。
  まず遊郭ということで、やはり夜景でございます。
  たくさんの照明(提灯とかですよね)に照らされる毒々しい派手な着物。赤い襦袢。
  格子の中にはキセルを使う遊女もいるかもです。
  しかも、江戸時代と比べるとさびれているようなので、ちょっとうらぶれた感じ。
  ね、想像すると、なんかいいですよね。少し裏に回ると、たぶん明るい表と比べて嘘のように暗い路地とかあるんですよ。
  あ〜素敵。なんか背筋がぞくぞくする感じの光と影です。

  こんな風に色々好きな箇所が多いくせに評価が辛いのは、全体的に展開が冗長だったからです。
  嘉吉とポン太が、定九郎の敵なんだか味方なんだか分からない時期が長くて、まあそこが後ろに引っ張るポイントなんでしょうけど、気持ち悪くて。
  特にポン太が、本当は死人なんじゃないか、と勘ぐれるほど、変わったキャラでした。

2011/10/27  評価 B(A寄り)
シューマンの指 奥泉光 講談社

シューマンに憑かれた天才美少年ピアニスト、永嶺修人。
彼に焦がれる音大受験生の「私」。
卒業式の夜、彼らが通う高校で女子生徒が殺害された。
現場に居合わせた修人はその後、指にピアニストとして致命的な怪我を負い、事件は未解決のまま30年の年月が流れる。
そんなある日「私」の元に修人が外国でシューマンを弾いていたという「ありえない」噂が伝わる。
修人の指に、いったいなにが起きたのか。


  考えた末、辛い評価を付けました。
  ピアノを弾く男子高校生が主人公、というのは好きなシチュエーションですし、確か「このミス」でも上位にランキングされていた気がして期待していたのもあります。
  それだけに、ラストは衝撃でした。
  この衝撃は、よく言う、良い意味での衝撃ではないです。
  「がっかり」です。
  大いなるがっかり。
  これはしてはいかんだろう、という、禁じ手で閉じられてまして、なのにどうして世間では評価が高いのか?
  解せません、はい。

  なので、本来ならばただのB評価としたいところでしたが、おまけのように(A寄り)になっているのは理由があります。

  それは、269〜280ページのシーンがものすごく良かったからです。
  とにかく美しく繊細で、二人の気持ちがよく分かると同時に、二人の魂が通い合う非情に良いシーンだったのです。
  修人がどのような思いで里橋に相対していたのかが分かった時の気持ちたるや!
  そうか、修人は、この時胸に音楽が響かなくなっていたのか。里橋が修人を尊敬し崇めていたのと同じように、修人も里橋が眩しかったんだ、と分かった時の、私の昂揚感!
  ピアノ男子の魂の交歓ほど素晴らしい物は無いですよ。
  この場面を読んでいる時には、これまでの色々なことは全部水に流してA評価を付けても良いとまで思ったほどでした。
  でも、最終的な落ちで、これまで読んできた全てが崩れ去り、当然その感動の場面も無かったことになってしまったので、全否定された感でいっぱいになりました。
  やっちゃいけないです。ああいう落ち。

  まあ、おかしなところはあったんだよね。
  なんで突然吾妻先生と函館旅行なんだよ、とか。
  いくらなんでも末松佳美に対する描写がひどすぎるだろうとか。はぁ〜

  同じ鍵盤楽器の高校生の小説としては「聖夜」があります。
  序盤の頃は通じるところもあったんですが、本当に残念です。
  ただ繰り返しになりますが、最後の全否定さえされなければ、269〜280ページは本当に素晴らしかった。

2011/10/21  評価 A(B寄り)
緑ヶ丘小学校大運動会 森谷明子 双葉社

運動会の朝、マサルは学校で薬のパッケージを見つける。
殺人の証拠だと考え、それを隠しておくことに。
一方、薬剤師の父親はドラッグが出回っていることを嗅ぎつける。
プログラムが進行するにつれ、明らかになる大人の思惑と、膨らんでゆく子供たちの想像。
そして意外な真実! 運動会の一日を舞台にした技巧冴え渡る長編ミステリー。


  お母さんを亡くしたばかり(2〜3年は経ってるか)の小学生男子が主人公で、運動会を背景に薬物騒動を描いた作品。
  ミステリー仕立てでもあり、児童文学の要素もありで楽しく読めました。
  主人公マサルに共感するところもあり、シングルファザーであるお父さんの戸惑いにも共感できたり。
  視点が色々で面白かったです。

  一方で事件の全体像がなかなか見えてこず、もどかしくもあり、最後まで引っ張られました。
  ただ、最後まで引っ張られただけに、ラストの曖昧さが非情にもったいないと感じました。
  えらくあっさり終わってしまい、なんとなく釈然としないです。
  結局真犯人は、表向きには判明していないことになってるし、たとえこのあと明るみに出るとしても少なくとも作中では何も無いので残念でした。
  裁かれるべきものは、読者の想像の範疇ではなく、きちんと裁かれて欲しいです。
  ラストシーンを爽やかに落としたことで、余計にガッカリ感が募った感じです。

  BL好きの私からすれば、多感な12歳少年を戸惑いながら育てているシングルファザー真樹夫と、なんとなく上から目線の友人・大橋の関係が、あやしくて仕方ない。
  ていうか、こういうシチュエーションのBL多いよな〜〜、なんて本編の筋とは全く関係ないところで感心してました。

  KTさん、貸してくださってありがとうございました!!

2011/10/16  評価 S(A寄り)
ROMES 06 まどろみの月桃 五條瑛 徳間書店

世界最先端の施設警備システム・ROMES06を擁する西日本国際空港で、ついにテロ事件が起きた!?
中国のVIP暗殺を試みるテロリスト・グループのあまりにも周到な計画。
ROMESの天才的なシステム運用者・成嶋は、故国と家族──すべてを失った男の執念から、空港を守り抜くことができるのか?


  良かったですー。
  五條さんの本は久しぶり。調べたら、2009年12月を最後に読んでいませんでしたよ。
  革命シリーズも続きを買ってはあるものの、2冊ほど積ん読になってます。いかん。

  「ROMES 06」シリーズは、五條さんの作品の中ではわりと地に足の着いた物として私は認識しておりまして(桜庭探偵事務所シリーズのような、肩の凝らない作品に位置づけていた)、気楽に読み始めたのですが、八角波夫の来歴がだんだんと見えてきた辺りから、しっかり心を掴まれました。
  本書を貫いている民族の誇りは、五條さんの初期作品に通じるもの。
  失礼ながら、まだこのようなテイストで書いてもらえるんだと安堵しました。
  最近読まなくなってしまったのは、この手のカラーが薄れ気味だったこともあるのです。
  もっともまだ読んでない本もあるので、勝手に分析するのは反則ですが。

  最後の最後、砂村がバイクで突入し、パサンやテンジと向き合って、彼らの信念の強さ(執念)を感じた場面が一番好きです。
  この熱い信念を、成嶋は八角波夫と相対した時に感じていたのだと思いました。
  しかし、自爆テロを礼賛するわけではありませんが、八角波夫の強い信念には打たれました。
  この人は本当は普通に穏やかに暮らすことを望んでいる善良な人だと思うので、こんな風に強く頑なにならざるを得なくさせた社会が悲しいです。
  すべては強権、弾圧によるもの。
  誰だって家族や故郷を理不尽に奪われれば憎悪すると思う。
  戦いは避けるべきことでしょうが、応援してしまう自分も居ました。
  人生を賭けるほどの信念の強さに憧れもしました。
  もっともこんな臨界点まで人を追い込んではいけないと思うのですが。
  プロローグとエピローグも良くて、八角さんのファンになったなと自覚しました。
  本当に素敵な人だと思います。

  クライマックスも良かったです。
  この方は結構尻切れ作品が多いのですが、本書は次巻へ引っ張る部分を除いては色々決着していたので、納得の上読書を終えられました。
  成嶋が八角のことを恩師に似ていると言ったことがとても気になっていて、成嶋の核となる部分と対決する日がいつか来るのだろうと、先が楽しみでもあります。
  そのときには、まるまると太ってしまった愛犬ハルが、もっと活躍するといいなーとも思っています。


2011/10/6  評価 B(A寄り)
謙信の軍配者 富樫倫太郎 中央公論新社

曾我冬之助は新たに宇佐美姓を名乗り、若き長尾景虎(上杉謙信)の軍配者となる。
しかし実際に戦況を支配していたのは「毘沙門天の化身」景虎その人だった。
常識外れの発想で勝ち続ける天才・景虎に、足利学校の兵法は通用するのか?
冬之助の旧友・山本勘助が率いる武田軍との攻防が続くー。


  というあらすじでしたが、残念でした。
  あらすじと中身が違って残念、というのの他に、シリーズ最終巻としても残念だったし、「謙信の軍配者」というタイトルと中身が違っていたのも残念でした。
  残念×3です。

  「早雲の軍配者」、「信玄の軍配者」ときて、このシリーズの最終巻。
  「信玄の軍配者」が面白かったので、楽しみにしていました。
  しかも、謙信の軍配者(冬之助)は1冊目からあまり目立つところのないキャラだったし、どんな風に描かれるのだろうということも楽しみでした。
  1冊目・2冊目で小太郎と四郎左に光が当たっている間、冬之助は影のような存在だったし、2冊目でかなり不幸な境遇に陥って、その後どうやって這い上がるかということにも期待をしていた面もあります。
  だけど、読んだ感想としては、この本は「謙信の軍配者」ではなく「続・信玄の軍配者」だったなあ、ということでした。
  「信玄の軍配者」と同様、主人公は四郎左(山本勘助)だったからです。
  「信玄の軍配者」で、四郎左がとても魅力的に描かれていて、私も「信玄の軍配者」はとても面白かったと思いましたし、その後日談が気になるところではありましたが、やはりシリーズ全体を思えばそこは切り分けて、冬之助に焦点を当てるべきだったと思います。
  ただでさえ、越後は景虎が戦の何もかもを仕切ってしまうのですから、尚更冬之助に焦点を当てないと、完全に埋もれます。
  文中に「越後に軍配者は必要ない」なんて書いている場合ではないのでは。
  (作者自身がシリーズを否定することになるじゃないか。若しくは、だとしたら余計に冬之助をもっと描かないと!)

  それと、内容としては川中島の戦いがメインではありますが、長尾景虎の描写が、けっこうひどいですかね。
  謙信ファンの皆さんは、この景虎で大丈夫ですか?
  それとも若い時はこういう感じですか。
  富樫さんは武田贔屓なのでしょうか。
  中身のほとんどが武田の視点だったこともあって、上杉(長尾)に気持ちが行きません。

  かなうならば、改めて冬之助をフィーチャーした本当の最終巻を書いて欲しいところです。

2011/9/26  評価 A(B寄り)
プラチナデータ 東野圭吾 幻冬舎

犯罪防止を目的としたDNA法案が国会で可決し、検挙率が飛躍的に上がるなか、科学捜査を嘲笑うかのような連続殺人事件が発生した。
警察の捜査は難航を極め、警察庁特殊解析研究所の神楽龍平が操るDNA捜査システムの検索結果は「NOT FOUND」。
犯人はこの世に存在しないのか?
時を同じくして、システムの開発者までが殺害される。
現場に残された毛髪から解析された結果は…「RYUHEI KAGURA 適合率99.99%」。
犯人は、神楽自身であることを示していた。


  東野さんの本はとても読みやすく、大抵の作品は序盤から吸引力をもって最後まで読めてしまう。
  本書も同様。東野さんの本を久しぶりに読んだけれど、そういうところは全然変わっていなかった。
  次々に新刊を出し、出せば売れることも驚嘆するけど、どの作品も吸引力があるというのもすごいなあと。
  それとも何かコツがあるのかな。

  さて、本書はDNA捜査システムという、人の遺伝子から検索をかけて犯人を捜すという新システムを題材にした推理小説。
  小説そのものの犯人はわりとすぐに分かってしまうのだが(殺害された人が複数あるので、その共通項をたどるとおのずと分かる)、あちこちにちりばめられた謎の全体像がなかなか見えなくて、最後まで読みふけってしまいました。
  一応最後の50〜100ページくらいでパズルのピースをはめるように次々に解答を得られるのですが、それがいくつもの謎が一気にとけるので、ちょっと出来すぎな感じがしてしまったのが残念。

  主人公が多重人格という設定がおもしろく、その発露のきっかけとなったお父さんのエピソードが切なくてとても良いが、もう一人の龍平のキャラがぶれたような気が。
  最初のうちは、もう少しエゴの強いキャラだった気がしたのに、いくら最後だからって「もう俺は消える」と言って欲しくはなかった。
  それとも、龍平本人が色々気付きだしたことでもう一人の存在意義が無くなりかけているってことか?

  というわけで、色々不満はあるが、通勤電車で読むには充分楽しめました。
  ラストシーンはさわやかで、お父さんとの因縁(トラウマ)も解決しそうで、後味が良かったです。

2011/9/20  評価 B(A寄り)
夜の写本師 乾石智子 東京創元社

右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠。
三つの品をもって生まれてきたカリュドウ。
だが、育ての親エイリャが殺されるのを目の当たりにしたことで、彼の運命は一変する。
女を殺しては魔法の力を奪う呪われた大魔道師アンジスト。
月の巫女、闇の魔女、海の娘、アンジストに殺された三人の魔女の運命が、数千年の時をへてカリュドウの運命とまじわる。
エイリャの仇をうつべく、カリュドウは魔法とは異なった奇妙な力をあやつる“夜の写本師”としての修業をつむが…。


  ファンタジー読んだのは久しぶりでしょうか。いつ以来だろう。
  ノベルズ日記のページを繰ってファンタジーの本を探しましたが、……2010年の途中で飽きました(おい)。
  とにかく久しぶり! だと思います。

  とは申せ、なかなか内容が頭に入って来ず、実は苦労しました。
  主人公が魔道師になっていく話かと思いきやその道が閉ざされたり、読書のペースが掴めませんで。
  しかも裏では「伊達政宗」を読んでいたし。(ん? どっちが裏?)
  ようやく面白くなってきたのは、500年前、1000年前、100年前、と時代がさかのぼった辺りからです。
  そこに至るまでの最初の160ページくらいは苦痛でしたが、その遡った辺りから段々ストーリーが分かってきて、楽になりました。
  「あ〜、なるほどね〜!」と思いました。
  こういう過去からの因縁とか、結構好きでございます。

  最後の、主人公とアンジスト(ラスボスに当たる)の決闘シーンはのめり込みました。
  のめり込みすぎて、トリップしてました。
  病院の待合いで読んでいたんですけど、名前を呼ばれても気付かず、ちょっと現実とエズキウムが脳内でぐちゃぐちゃでやばかったです。
  現実に戻ってくるために息を吐いたら、看護助手の方に誤解されて「お待たせしちゃってごめんなさい」と謝られ、いやいやそうではないですからーっと恐縮。
  むしろ最後まで読ませて、と思ったり(笑)。
  そういう本でした。

  この作家さんは存じ上げないのですが、文章がちょっと読みづらいのが難です。
  貸してくださったKTさんもラストが腑に落ちないとおっしゃっていました。
  ただ表紙は綺麗です。KTさんも表紙買いだったそうです。
  KTさま、いつも横流し、ありがとうございます\(^o^)/

2011/9/15  評価 A(S寄り)
伊達政宗 全8巻 山岡荘八 講談社山岡荘八歴史文庫

戦国BASARAを見るにつけ、本物の伊達政宗ってどんなだっけ、と読んでみました。
山岡荘八の本を読むのは高校の時に「織田信長」を読んで以来です。
いや〜〜、全8巻。濃密でした。
7月から丸2ヶ月かかりましたが、後書きによると5年間連載されていたそうです。
一人の人生をじっくり描かれてあり、世界に浸れました。
あ、因みに本書は、大河ドラマ「独眼竜政宗」の原作本に当たります。大河も再度見たくなりました。

さて、伊達政宗といえば、数々の有名エピソードがありますよね。
たとえば、秀吉に呼び出された際、白装束で出向いたとか、十字架を背負って街を歩いたとか、お母さんに毒を盛られたとか、弟を斬ったとか、摺上原の戦いで大敗したとか、お父さんを人質にとられて死に至らしめたとか、とんでもないきらびやかな衣装で衆人の度肝を抜いたとか。
それらのエピソードは、1巻〜2巻の間にほとんど出尽くします。
だというのに、その2冊の私の読書スピードは緩慢でした。
どうも乗れなかったのです。
特に第1巻などは、政宗が本当に出来杉くんで、とりつく島もない。
感情移入はできないし、どうも持ち上げられ過ぎていて、後世にこじつけた逸話なんじゃないの?なんてことが端々出てきたり。
巻末の人取り橋の戦いで政宗がぼこぼこにされ、ようやく溜飲を下げた次第です。
ぶち切れてくれて本当に良かったです。若いくせに自制が効き過ぎていて面白くなかったのです。

それがですね、3巻以降突然面白くなりました!
1〜2巻読んでいる時はどうなることかと思いましたが、ようやく初日が出たって感じでした(違う)。
3巻は、朝鮮出兵〜秀吉の死〜関ヶ原の一歩手前。4巻は関ヶ原前後。
5巻は大坂冬の陣の手前。6巻は冬の陣、7巻夏の陣。8巻は政宗の死までです。
なので、いわゆる戦国時代のごたごたは1〜2巻なんですよね。
3巻以降、なぜ面白くなったかというと、強大な覇者・秀吉、後には家康に、睨まれながらも知略でやりこめる(というか自分の良いように道を切り開く)姿に小気味よさを感じたのでした。
かなりピンチの連続で、はったりが効かなければとっくに殺されているよなー、というドキドキする展開の連続。
一揆を煽動する書状が秀吉の手に届けられ、詮議されている場においても、「その書状は偽物だ」と傲然と言い放ったり。
文中に、放胆に見えて細心とありましたが、まさにそうで、次の手を考え、先手を打っていく姿が素敵。でもかなり強引というか、露見した時の態度がまた堂々としているのも素敵。(ふつうなら死んでますよ、ええきっと)

3巻〜4巻では、政宗と家康という知恵者2人の間でわたわたしている今井宗薫がすごく良かったです。
この3人のシーンになると笑いがこみあげてきました。
2人とも頭が良くて凡人の数歩先を生きているから、その間の使者なんて、ほんとにやりたくはないよね! と宗薫に同情したり。
途中から出なくなってしまったのが残念。

3巻ではほかにも、楽しいシーンが。
政宗が初めて淀の方に対面する場面で、淀について、
「なるほど豊艶な美人であった。しかし、いささか油が乗りすぎている、と政宗は思う。唇も厚ければ胸も厚く、膝も肩もみな少しずつ厚すぎて、しかもそれが美人の鋳型にはめたように整いすぎている。よほど女子に餓えている時はともかく、さもないといささかならず色っぽ過ぎてうっとうしい。わしならばやはり愛姫を取るの」
なんて書いてあるのがツボにはまりました!!
政宗の女性遍歴では、側室・猫御前(飯坂氏)が有名ですけど、本書には、4巻から南蛮女性マリアも登場します。
大久保長安から紹介され、「西洋の女性を側室にした戦国大名は他に居ない」ということに食指を動かされ第8夫人にしたものです。(ギヤマンの眼に心奪われたシーンも好き)
フィクションであってもそうでなくても、南蛮女性は政宗に似合うな〜、と思ってしまいました。
しかもマリアはキャラが強烈。
最終的には家臣に払い下げましたが(可哀相だ)、殿様は奔放だなーと。
奔放だけど、本書では政宗くんの衆道のことは触れられてなかったです。
(熱烈ラブレターの相手、作十郎くんを出して欲しかったところ)

マリアの他にも4巻からは濃いキャラが登場します。
前述の大久保長安と松平忠輝です。
本当にこの2人の濃さには、おなかが一杯になりました。
長安などは、死ぬシーンまでも濃くて(頭がおかしくなって毛虫を焼いたりする。きもい)、つらかったですね。
忠輝はもういつ処刑されてもおかしくないようなギリギリの所を歩んでいるキャラでしたが、思いの外長生きでした。
この人も政宗と同様、30年早く生まれていたら、実力で大大名になったかも知れないです。
忠輝については「顔がでかい」という表現が何回もされていて、それも気になってしまいましたが。

5巻では、支倉六右衛門がとうとう登場し、月の浦に建造した大船に乗って旅立ってしまいました。(本当は忠輝が乗るはずだった船。船の名前はサン・ファン・バウティスタ号だったと戦国鍋TVで言ってた)
なんか、真面目で誠実そうでとてもいい家臣。
しかも、政宗から背負わされた役割が重すぎる!
フェリペ三世(文中ではフィリップ三世)に掛け合って軍艦を日本に寄越すよう仰せつかっているのです。
その際、フェリペ三世が何隻軍艦を回してくるか? 5隻ならスペインは英国に劣らない、3隻なら英国と互角、0隻ならスペインはもう終わり。
こんなことを考えられるところが、政宗の面白いところですね。
その使節団の中に千々石清左衛門の名前を見たけど、ミゲル、旅立ってないはずだよね?? 
ただし、政宗くんのこの思惑は、何故か家康にすっかりばれてることが6巻で明らかに!
ばれていたことにショックを受けて政宗は寝込んじゃうし!!
本書の政宗は家康の手玉にとられている感があり、まるでお釈迦様の手のひらの上を駆け回る孫悟空状態。
もう政宗くんは始終寒気を覚えておりまする。
家康、恐ろし。柳生宗矩もかなり恐ろし。
その支倉くんは8巻でようやく帰国しました。一応7巻時点で、政宗はルソンに使いをやっていましたが、帰国した際の支倉くんの心中を思うと、気の毒としか言い様がありません。
軍艦は無理でしたが(スペイン国力低下のため)、フェリペ三世には謁見かなっているし、ローマ法王とも謁見がかなっているし、ものすごく有能な家臣であることの証明と言えます。

戦国BASARAでも「竜の右目」として常に政宗の傍らに居る片倉小十郎景綱ですが、本書においても良い味をだしております。
とはいえ、出番はあんまり多くありません。
1〜2巻の頃は、従弟の成実とともに3人セットで行動してましたが、成実の姿がまず出てこなくなり(ほんとに一時出奔していたらしい)、そのうち中盤は小十郎の姿も消えました。
が、出てくると良い味。美味しいキャラです。
年齢が政宗よりも10歳上(本書では11歳上)ということもあるのですが、温厚で賢くて非情にバランスがとれている。
4巻の最初の頃、「俺が知恵を貸すんだ」と拘ってキリキリ怒る政宗に対して、「知恵というはそのようにプリプリと拘りながら貸さねばならぬものでござりましょうかな」と首を傾げるシーンがあり、甲走った主君を持つと苦労するなと思いました。
7巻の政宗と小十郎の最後の対面のシーンは秀逸でした。
大坂夏の陣から戻ってきた政宗を、もう玄関までお出迎えも出来ない病身の小十郎。
両脇から小姓に支えられ、政宗の顔を見て「われらの殿じゃ」といって泣くんだよ。
そんな状態でも、小十郎は「心にかかることが5つござりまする」と言うのだ。
それがいずれも「政宗の生涯の最後に大きく響く重大事」ばかりだったのだ。
常に主君を思い心配し、病床にあっても最新情報も得て時世を睨んでいたのだ。すげえよ、小十郎。
この最後の対面は、二人の絆の強さを感じられ、涙なくしては読めません。
「心と心が通うてあるゆえ」とか政宗が言うんだよ。ううう。
そのときに、身体は借り物であって、人は旅客だと言うわけだ。身体は壊れても魂は永遠。
小十郎の身体は病に冒され無くなっても、常に殿の傍に居る、ということなのだ。
あ〜〜素敵(*^。^*)
この「旅客」という考え方は最後まで続き、8巻のサブタイトル「旅情大悟」の旅情とはそうした人生そのものを指すと思われます。


思ったのですが、たとえば信長ならば長篠とか桶狭間とか、家康なら三方原とか、それらしき代表する戦いがあるものですが、伊達政宗って無いんですね。
いいところ1巻最後の人取り橋の戦い、2巻に描かれる摺上原くらい。
でもいずれも、軍記物にはなり得ないようです。
同じ山岡先生の「織田信長」全5巻が読みやすかったのは、その辺りにあるのでしょうか。
大坂冬の陣・夏の陣があるけど、政宗は活躍しないしね。
本人の派手さのわりに、駆け引きみたいな政治活動?が主流になってくるのは、生まれた時代が30年遅かったことに由来するのか。
実際、8巻ではもう世は泰平になっていて、秀忠は隠居、家光がばりばり動き始めてましたから。
ちょっとした陰謀はあるけれど秀忠からの信頼も厚く、副将軍の地位も安泰。
隙あらばと天下を狙っていた政宗くんとは、このころにはだいぶ異なっています。
むしろ、もっと大人になっていて、秀忠を包み込む境地やら家光を青二才とこき下ろしながらも盛り立てる境地やら、8巻サブタイトルの「大悟」そのもの。
戦国の世ではないので畳の上で天寿を全うしたわけですが、すごい人生だったなーと改めて思いました。
筆者あとがきでも、織田信長と比較している箇所がありましたが、確かに初期はすごく似ているんですよね。
そしてこうやって読んでいくと、家康ってすげえな、と思います。
昔はタヌキオヤジの印象しかなかったけど、頭は切れるし誠実だし物凄い人。
認識を新たにしました。
最後の方に出てきた水戸頼房も頭が切れてかっこよかったですね。

関係ないけど、伊達家のお家騒動を描いたらしい「樅の木は残った」を読みたくなりました。

2011/9/14  評価 A(S寄り)
織田信長の天下布武日記 (武ログ壱) 武ロガー右筆衆 二玄社

小説でも無いのに、読書にカウントしてよいか悩みましたが、面白かったので……。
コミックでもないし、カウントすることにしました。

あの織田信長がブログを開設したら、という架空設定のもとに、架空に作成されたブログをまとめて一冊にした本です。

もう〜こんなものが出る時代なんですね(^。^) 
歴史ブーム万歳\(^o^)/

時代は永禄3年〜天正10年までです。
信長の人生については山岡荘八の本やドラマその他でよく知っているため、楽しく読みました。
信長のキャラが面白く、ブログを炎上させてしまったり、数年放置して不意に復活したり、愉快でした。
いかにもやりそうだし。
寄せるコメントも面白かったです。

敢えてこの本用にキャラ立ちを作ってる部下もありましたが、みな個性的で面白い。
特に、こうやって見ていくと、秀吉ってすげえな、と思います。
汚れ仕事?を押しつけられつつも、着実にこなしていく様であるとか、秀吉の家臣はみんなどこか魅力があって面白いのがたくさん居る。
しかもどんどん変わった家来が増えていく。
秀吉の配下として、三成や刑部が登場したのも楽しかったです!
今の私は刑部萌えですからね(笑)
東北弁の政宗と、たしなめる小十郎も良かったです。

もうとにかく企画にあっぱれ。
ちなみに武ログ弐は直江兼続みたいです。
参は出るのかな〜〜

評価甘いですかね(^_^;
でも面白かったので許して欲しいです。

2011/9/4  評価 B(A寄り)
短編復活 集英社文庫編集部 編 集英社文庫

回想電車(赤川次郎)/角筈にて(浅田次郎)/特別料理(綾辻行人)/
蛍ぶくろ(伊集院静)/岩(北方謙三)/猫舐祭(椎名誠)/38階の黄泉の国(篠田節子)/
プレーオフ(志水辰夫)/苦労判官大変記(清水義範)/梅試合(高橋克彦)/
盛夏の毒(坂東真砂子)/超たぬき理論(東野圭吾)/さよなら、キリハラさん(宮部みゆき)/
キャンパスの掟(群ようこ)/いるか療法−突発性難聴(山本文緒)/青の使者(唯川恵)


  「小説すばる」に掲載されたよりすぐりの短編小説を16編収録、だそうです。
  結構錚々たる作家さんです。
  五十音順に掲載しているのが、面白い。

  読みやすかったのは東野圭吾「超たぬき理論」、宮部みゆき「さよなら、キリハラさん」、山本文緒「いるか療法−突発性難聴」。
  16編中一番良かったのは山本文緒「いるか療法−突発性難聴」です。

  浅田次郎「角筈にて」は相変わらず幽霊落ちかよ、と思ったら、全編幽霊落ち収録の「ぽっぽや」に入っている話だそうです。
  ということは私は読んだはずだが覚えてない……。
  どうも浅田さんとは相性が良くないなあ。

  そうそう! それと、綾辻コロス、と思った!
  綾辻さんの「特別料理」という作品は、夫婦がレストランで、ミミズとか変な虫とかの料理を次々に食べる話です。
  私はただでさえ綾辻作品を好まないのに、ここに来て何て物を読ませるんだ!! と電車内で怒り心頭。
  さすがにゲテモノ喰いの話は読書途中でギブアップしました(T.T) ひどいよ〜〜気持ち悪いよ〜〜

  群ようこ「キャンパスの掟」が、妙なところで終わってましたが、続き物??
  清水義範「苦労判官大変記」は流石でした。
  ちょうどこのあいだ源平の舞台を見たばかりだったから、余計に感慨深いです。
  篠田節子の「38階の黄泉の国」は、結局なんだったのか。一夜のアバンチュールかと思いきや……。
  健気に母を思う息子が可哀相です。
  赤川次郎は久しぶりに読んだけど、どうも昔っぽい印象ですね。と思ったら、88年に初掲みたい。道理で。

  全体的にブラック落ちも目立ちました。
  短編だとブラックが書きやすいのかな。
  KTさま、貸してくださってありがとうございます。
  おかげで普段読まない短編を今年はたくさん読んでいます。

2011/8/22  評価 A(B寄り)
本日は大安なり 辻村深月 角川書店

一世一代のたくらみを胸に秘める美人双子姉妹、クレーマー新婦に振り回されっぱなしのウェディングプランナー、大好きな叔母の結婚にフクザツな心境の男子小学生、誰にも言えない重大な秘密を抱えたまま当日を迎えてしまった新郎。
憧れの高級結婚式場で、同日に行われる4つの結婚式。
それぞれの思惑と事情が臨界点に達した、そのとき……。


  ホテルアールマティは老舗の結婚式場で、ここで結婚式をあげたい、と憧れる女性が多いところ。
  同じ日に式を挙げる4組のカップルと、アールマティで働くウェディングプランナーのそれぞれの視点で交互に描いた、挙式当日のお話。

  最初は、読みづらくて結構手こずりました。
  なんせ、私は結婚式にとんと興味が無く、登場する女の子がウェディングについてとうとうと夢を語る場面などは辛い以外の何物でもなかった。
  乗り気でない彼氏の気持ちが分かる!とか思うほどであった。
  (もっともこの彼氏が乗り気でなかったのは、別の理由があったからなのでしたが)
  それが、だんだん誰が誰だか分かるようになっていった辺りから、面白くなってあとは一気読みでした。

  好きなのは、東くんとりえちゃんカップルについて悩む8歳の真空くんですね。
  彼のくだりになるとほっとしました。
  なんかやっと言葉の分かるキャラに出会えた、的な安心感です。

  双子姉妹についても、気持ちはなんとなく分かるけど、結構どうでもよく。
  二人が入れ替わっていることに、最初から気付いていた彼氏の懐深さ(ていうか、ややこしい女性が好みらしいが)にも感心はしたけど、それより親は気付くだろうよ! と思ったり。

  どうしても解せなかったのは、危うく重婚になりそうだった鈴木陸雄です。
  (=前述の、乗り気でなかった彼氏)
  結婚式当日まで、ばれないものなんでしょうか。
  陸雄は既婚者なのに。
  少なくとも、いくら陸雄が招待状を燃やしたとはいえ、三田あすか(結婚式を挙げる相手=浮気相手)が職場で結婚式のことを吹聴したり友達に話したりすれば、おのずと陸雄の情報が耳に入りそうなんだけど。
  友達が、「えー、招待状なんてもらってないよ」とか言えば一発じゃないかと。
  だいたい、陸雄は結婚式場を燃やすことまで企むくせに、浮気相手と別れる気がまったくないところが許せん。
  ま、小説だから、いいんだけど。こんなに熱くならなくても。

  おくづけの○月○日初版発行、というところ、○月○日(大安)初版発行になってました。
  そういう遊び心は嫌いじゃありません。

  あ、キャラのどれかが、他の作品にも登場している人のようです。
  東くんの友達の、ゴルフクラブを持って現れた不良青年がそうではないか、との噂です。

  KTさん、貸してくださってありがとうございました。

2011/8/14  評価 A
春を背負って 笹本稜平 文藝春秋

サラリーマンをやめて、父親の山小屋を引き継いだ亨。
父の後輩のゴロさんと、この小屋を守るための悪戦苦闘の日々が始まった。


  この酷暑に「春」の本かと思うでしょ? 
  でも実際には、春から夏、秋、冬、そして次の春、とすべての季節を網羅していました。
  山を舞台にした小説です。
  登山をしない私にも、山小屋とはどのようなところか分かりやすく、うつりゆく季節に応じて変化する風景などが描かれ、美しい本でした。
  登場する人たちもあたたかい人たちばかりで、日頃の生活の中で忘れられている大らかさが、この本には有ります。
  そう、何故か都会の人はいつもギスギス、イライラしています。
  ちょっとしたことに腹を立て、ぶち切れますが、この本に描かれている世界では、もっと自分の生に対して前向きで、ゆっくり時が流れているように感じます。
  このようなゆとりを求めて、今登山がブームだったり離島で生活する人が増えたりしているのかも、などと思いました。
  私自身も昔から怒りっぽいのですが、どうしても自然に身をやつせない身体なので(アウトドアは具合が悪くなる体質なんです。森林浴なんてもってのほか)、自らの努力で快適環境を作っていくよりありません。
  山にも海にも出掛けることはないでしょう。
  自然のゆとりは本から得ます。

  初めての作家さんでした。
  調べたら山の本と警察の本を主に書いている方のようです。
  KTさま、お貸しくださりありがとうございました!

2011/7/29  評価 B(A寄り)
幸福な生活 百田尚樹 祥伝社

「新刊ニュース」に連載されていたらしい短編をまとめて収録したものです。
母の記憶/夜の訪問者/そっくりさん/おとなしい妻/残りもの/豹変/生命保険/
痴漢/ブス談義/再会/償い/ビデオレター/ママの魅力/淑女協定/深夜の乗客/
隠れた殺人/催眠術/幸福な生活


  というわけで、百田尚樹の短編集。
  18編も収録されており、つまり1編が短いわけなのですが、18編中ほとんどの作品がブラックに落とされておりました。
  最初の3〜4本くらいは面白く読んでいましたが、あまりにも同じようなブラック落ち加減に、だんだん先読みするようになってしまいました(「○○が本当はこうなんだろう」みたいな)。
  で、本当にそう落ちるという……。

  読みやすくはあるのですが、登場する夫婦の関係や、男女キャラの造形がわりと画一的だったり、同じような展開だったりするので、むしろ18編も集めて本にしたのは失敗だったのではないかと。
  他の作品に1〜2編混ぜて刊行する分には、目先も変わるし楽しく読めるかもしれないです。

  KTさま、お貸しくださりありがとうございました!! いつも感謝です!

2011/7/23  評価 A
燦 1 〜風の刃 あさのあつこ 文春文庫

江戸から遠く離れた田鶴藩。その藩主が襲われた。
疾風のように現れた刺客は鷹を操り、剣も達者な謎の少年・燦。
筆頭家老の嫡男・伊月は、その矢面に立たされるが、二人の少年には隠された宿命があった。
尋常でない能力を持つ「神波の一族」の正体とは?


  面白かったです。さすが、あさのあつこ。
  日本の江戸時代が舞台なのに、なんとなく韓流ドラマっぽくもあり、マンガっぽくもある展開。
  こんなところで終わっちゃって、次巻は一体いつ出るのよ!!って思いました。
  本書は1巻ですが、序章のようです。
  ひとまずこの第1巻で、ストーリーの土俵が整ったといったところです。
  キャラも分かりやすくて良いです。

  キーとなる燦が鳥使いというのが素敵。
  しかも鷹ですよ。なんて華麗な。

  「夜叉桜」のシリーズも最近はとんとお見かけしませんで、こちらはそうならずに完結してくださることを祈るばかりです。
  それも早い段階でね! 続きを出してくれ〜。

  あ、「夜叉桜」のシリーズと比べると、こちらは軽いです。ラノベ風味。
  やはり主人公の年齢がこちらの方が若い(16歳)ので、仕方ないのかも知れません。

2011/7/16  評価 A(S寄り)
四色の藍 西條奈加 PHP研究所

夫を何者かに殺された藍染・紫屋の女将・環は、同じような事情を抱える女たちと出会い……。
女四人の活躍と心情を、気鋭が描く痛快時代小説。


  このあらすじ(公式)↑、おおざっぱですね(^_^;

  この人の作品はホントにはずれがないな、と実感しました。
  (あ、前作「無花果の実のなるころに」は私的には残念作だったっけ、そういえば)
  登場人物は相変わらず魅力的だし、なんかみんないい人だし、読後ほんわかします。
  読んでよかったなーと思えます。

  最初、読み始めた時には、女性ばかり登場するので苦手な予感がしましたが、読み進むうちにそんなのはどこかへ行ってしまいました!
  女性、みんな素敵です。
  特に、私はお唄が一番好きです。
  伝法な口をきく、色っぽいおねえさん。
  ぜひ元気な赤ちゃんを産んで立派に育てて欲しいです。

  つらいことがあっても一生懸命生きている人には、是非幸せになってもらいたいと、読書しながらいつも思うし、きっと書いている西條さんもそのような意識をもっている方なのだろうな、と思います。
  この人の作品は全部読んでいます。この先も新刊が出るたびに読むことでしょう。

2011/7/12  評価 A(S寄り)
凍りのくじら 辻村深月 講談社ノベルズ

藤子・F・不二雄をこよなく愛する、有名カメラマンの父・芦沢光が失踪してから五年。
残された病気の母と二人、毀れそうな家族をたったひとりで支えてきた高校生・理帆子の前に、思い掛けず現れた一人の青年・別所あきら。
彼の優しさが孤独だった理帆子の心を少しずつ癒していくが、昔の恋人の存在によって事態は思わぬ方向へ進んでしまう…。
家族と大切な人との繋がりを鋭い感性で描く“少し不思議”な物語。


  「オーダーメイド殺人クラブ」を読書中、「辻村深月を読むなら、“凍りのくじら”を読んで」とKTさんにオススメされました。
  で、早速読んでみたところ、面白かった!
  ツボってしまいました。

  確かに、お父さんのくだりは色々微妙な部分もあるにはあるけど、後から考えれば「あれ?おかしいな」と思っていた様々なことが、最後の種明かしで全部腑に落ちたような。
  ただ、親の旧姓は分かるんじゃないだろうか、というところだけが引っかかる。
  引っかかるけど、まあいいか、と思えた。

  それと、一番ツボだったのは、お母さんとの関係性でした。
  合わない、と理帆子は語っていたけれど、そこはそれ、親子だからさー。
  一人で子を育てるお母さんの気持ちを思うと、クラスメートから突き飛ばされて怪我をした場面で、お母さんが「子ども同士のことですから」と発言したことに、私は拍手喝采でした。
  もう一人のクラスメート(突き飛ばした方)のお母さんがヒステリックに、うちの子は悪くない、と言い張っている様子は大変見苦しく、逆に夫が居るからこそのこの態度なんだろうな、と思えたりして、私は関係無いが非情に悔しかった。
  理帆子のお母さんは、凛としていて、素敵な女性です。
  また、お父さんの最後の写真集にお母さんが寄せた文章が、とにかく泣かせます。
  私は電車の中で危うく落涙寸前。
  鼻水をズルズルすすりながら、母から娘へのメッセージを読みました。(本当は夫へのメッセージ)
  私も母から似たような手紙をもらっており、母の娘への愛情という意味でオーバーラップしてしまい、涙が!!

  本書は、お父さんとお母さんの、娘への愛情がものすごく伝わって来る、私にとってのツボな本でした。

  それから、キーパーソンとなる育也のキャラ造形も大変素晴らしく、(ピアノの才能がある小学生男子、という設定が素晴らしい) また、大きくなった彼の様子も好感が持てました。
  主人公・理帆子の友達の中では、私は美也ちゃんが一番好きです。
  見た目はどうかわからないけど、この子はとっても真っ直ぐで素直な子だと思います。
  理帆子の元彼の若尾が気持ち悪かったけど、最後はどうなっちゃったんでしょうね。
  希望としてはちゃんと罰せられて欲しいんですけどね。

  「ドラえもん」ってすごいな、と改めて見直したり。
  ケーブルテレビで「のび太の海底鬼岩城」を放送したら、必ず見ます!

  それと、1箇所、石ノ森章太郎の「サイボーグ007」と表記されたところがあって残念。
  きっと誤植ですよね。文庫では直っているのかな。
  「009」好きとしては、なんとも……。
  なんで007なんだろうと色々考えましたが、理由は思いつきませんでした。誤植と信じています。

  KTさん、オススメありがとうございました!!


<追記 7/15>
 成長した育也が登場する小説があるようです。

2011/7/9  評価 A(B寄り)
銀河英雄伝説 7 怒濤編 (再読) 田中芳樹 徳間書店トクマノベルズ

「新帝国」の皇帝ラインハルトは、オーベルシュタイン、ミッターマイヤー、ロイエンタールの帝国軍三長官を前にしていた。
自由惑星同盟軍を退役し年金生活を送っていたヤン・ウェンリーの監視役レンネンカンプ上級大将が、同盟軍の不穏分子に拉致されたあげく自縊した事件の責任を問われたヤンの処遇について、討議するためであった。


  時間をかけすぎました。
  4月に6巻を読み終わってからすぐに取りかかったはずなのに、他の本を先に読んだりなどしているうちに、もう7月ですよ!! ありえない……。

  でも、思ったのですが、やはり後半、読むのが厳しいです。
  6巻で暗雲が立ちこめてますが、7巻はモクモク暗雲だらけ。
  マル・アデッタ会戦(ビュコック提督の例の場面)など、私の心は土砂降りでした。
  このマイナスの波動はどうにかならないものでしょうか……。
  自由惑星同盟がこんなことになってしまい、ヤン提督が上昇気流のはずがなく、仕方のない展開なんですけど、読むのが辛くて辛くて。
  6巻はそれでもまだ、シェーンコップがヤンを救出する、垂涎のシーンがあったので楽しかったですが、7巻にそんな美味しい場面はないですからね。
  読んでも読んでもいいことはなにもない。
  胸躍るシーンなんて、何一つない!

  しかし、問題は、8巻ですよ。
  私、8巻読めないです。
  いきなり宣言するのもどうかと思いますが、やっぱり読めないわ。
  だって、8巻はヤン提督が、……(ピー)←自粛
  飛ばして9巻を読もうかな。
  実際、初読時においても8巻で私の精神は壊れ(笑)、一週間もの間涙に暮れ、それはそれは暗い日々を過ごしたものです。
  で、その後に読んだはずの9〜10巻及び外伝1巻の内容をさーっぱり覚えていない、という(^_^;
  外伝2巻の「ユリアンのイゼルローン日記」で息を吹き返すまで、私は文字通り死んでおりました。
  ということもあって、まったく記憶にない9巻と10巻は読まないといかん、と思っているのですが、8巻はちょっと!
  精神衛生上、無理!

2011/7/3  評価 A
橋ものがたり 藤沢周平 新潮文庫

江戸の橋を舞台に、市井の人々の情を描く珠玉の連作短篇集。
 約束/小ぬか雨/思い違い/赤い夕日/小さな橋で/氷雨降る/殺すな/まぼろしの橋/吹く風は秋/川霧


  10編の短編集。すべて橋が舞台に登場します。
  橋は架け橋であったり、向こうとこちらを隔てる物であったり、特別な思い出の場所であったり、話によって役割は様々です。
  10編とも、珠玉とはこのこと、と思える完璧な短編で、玄人の作品を読んだなーと思いました。
  大先生つかまえて「玄人」とは失礼ですが(^_^;
  達人とか匠とかと言い換えても可です。

  一番好きだったのは「赤い夕日」。
  斧次郎という初老の男性が出てきますが(回想にしか登場しない)、この人が良いのです!!
  回想だけなんて勿体ない。
  生き返って欲しいくらいです。

  「まぼろしの橋」も良かったなあ。
  爽やかな新婚夫婦が微笑ましく、妻の危機を救ったおじいさんもグッドでした。

  藤沢周平の本って面白いんですね。
  映像が容易に頭に浮かびます。
  でも単純に映像化したら陳腐になってしまいそう。
  私はやっぱり長編もしくは連作短編が好きなので、今度はそうした作品を読みたいです。

  KTさま、貸してくださってありがとうございました\(^o^)/
  本当は買ってみようかと悩んだ本だったんです。嬉しかったです。



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