その2晴夜が読んだ本の感想を書いていきます。
評価は4段階 S=最高!! A=良かった B=イマイチ C=さいてー
基本的にネタバレありなので、ご注意ください!
平(たいら)は元は陸上自衛隊所属の腕利きのヘリコプターパイロットだったが、ある事故が原因でヘリ恐怖症になってしまう。その後、通りに立って「自衛隊に入らない?」と若者を勧誘する部署に配属になるが、胸に巣くう虚無感を消化することができない。 ある日、平は偶然懐かしい顔に遭遇する。それは、自分のヘリパイとしての腕を買ってくれ、くだんの事故の時に事故機から救い出してくれた男・東馬修一であった。 著者の作品「亡国のイージス」にも登場する事件「辺野古ディストラクション」を描いた作品。 またしても読み終わるのに随分時間がかかってしまった。 本作品は「亡国のイージス」よりも以前に書かれた小説のようで、「イージス」に比べて技術的な面が熟していない感じを受けた。展開の仕方も、どこがどうとは言えないが、「イージス」に比べて今ひとつだった。 だが、人物描写の詳細さは相変わらず。「イージス」ほどではないにしろ、魅力的な人物が生き生きと動いていた。平しかり、日米混血で重要な立場にある東馬しかり、東馬の右腕で凄腕ハッカーの坂部しかり、坂部の妻や二人の娘のように振る舞う理沙しかり。 特に、満たされない心を抱えている東馬の魅力は、その青い瞳と相俟ってうまく描かれていたと思う。 (私は坂部の方が好きなのだが) 敢えて言うならば、理沙の描き方が、あまりにも人間離れしていたことか。 銃弾を受けても死なない(笑)。華奢な少女の風貌なのにランチャーとか軽々撃ってなかったか? 私は読みながら彼女をサイボーグかと思ってしまった。そして、米軍の新兵器はGUSOHではなく理沙なのか、とか思ってしまった(笑)。 まあ、揚げ足取りはこの辺にして、作者の主張のような物は「イージス」と同様、全面に出ていたような気がして印象はまあまあいいです。 あと特筆すべきは、文庫版の解説。大沢在昌氏が解説を書いているんだけど、その熱さに吹き出してしまいました。大沢さ〜〜ん、いい人過ぎるよ〜〜。 ![]() |
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夏休みが終わり、ハリー達は2年生に進級した。ホグワーツの学校生活にも慣れ、ますます楽しく過ごすハリーだが、生徒が何者かに襲われ石にされるという事件が続発する。犯人にされかけたハリーは、真犯人を突き止めるために、ロンやハーマイオニーと共に事件の真相を探る。 「ハリー・ポッターと賢者の石」に続く、シリーズ2冊目。 「賢者の石」は映画を先に見に行ったために、本を読んでも頭に映画の映像しか浮かばなかったので、今回は映画を見る前に本を読んでみた。 しかし、相変わらず水で薄めたような長さを感じる。もっと凝縮できないものか。 それとも児童文学とはこういうもの? このシリーズでどうにも馴染めないのは、ホグワーツにおける「スリザリン」の存在と、ハリーの主人公故の優遇である。 善悪がはっきりしていた方が話は分かりやすく面白いとは思うが、「スリザリン」の寮生達はホグワーツにおける「スリザリン」の位置をどう考えているんだろう。 子どもならば尚更、「邪悪」な寮を好むことはないだろうと思う。大体スリザリンの紋章?は蛇なのだ。 スリザリンは作中、意地悪な子ども(俗に言う悪役)の巣窟なんだが、その寮に配属され甘んじて悪役を受け入れる子ども、という存在がよくわからない。それも寮だから一人や二人ではない。単純に全校生徒の4分の1もの人数だ。 どうもスリザリンの存在は作者の都合としか思えず、好みでない。 同じ理由から、ハリーに対する優遇は好みではない。 ダンブルドア先生はハリーを贔屓していると思えるし、登場人物の悪役でない人は皆ハリーの味方だ。話の展開も、ハリーに都合が良い。 「賢者の石」にしても「秘密の部屋」にしても、最後の美味しいところを取るのはハリーだ。 最後悪役と対峙するのはハリー一人で、ロンは引き立て役だ。「秘密の部屋」では、どうしてロンと一緒に奥に入らなかったのか謎だったし、ハリーが帰ってくるまでロンが何をしていたのかを考えるとやはり設定が気に入らない。 ![]() |
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ロックバンド「CRISIS」のカリスマ的ヴォーカリストであるチェシャが自殺した。 その日以降、東京では妙な事件が多発する。自殺者の急増、原因不明の急死者や残酷なまでに屠られた他殺死体の数々が溢れかえり、ニュースにもならない程だ。 ごくごく平凡な女子大生・雛子は、霊感の強い美少女・馨に出会い、禍々しい渦にに巻き込まれていく。 面白い小説を読んだ後には、どんなものを読んでも大抵評価は辛いものだが、これはまた最悪だった。 登場人物は散漫に広がっていて効果的に配置されていないし、話の展開もなんだかわからない。 しかも、私の大大大嫌いな「尻切れトンボ」だ。 津原さんの本は「蘆原家の崩壊」で印象がよかったのに、これを読んでゼロどころかマイナスになった。もう読むことはないだろう。 そもそも、私は、この手(恩田陸さん風)の「不思議」小説は苦手だ。 解説では絶賛、プロフィールにも“「妖都」を発表し絶賛される”とあるが、絶賛する人の顔が見たい。 ![]() |
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海上自衛隊の護衛艦「いそかぜ」は、ミニ・イージス・システムを搭載する大改修を終え、イージス艦と同様の戦闘能力を備える艦となった。 「いそかぜ」は航海訓練のため、太平洋側沿岸を航海中である。 海曹長(先任伍長)である仙石は、今度の航海のクルーの人事が平常と異なっていることに気付いた。宮津艦長の息のかかった人間が多く、また変則的な経歴を持つ全く見知らぬ人物が混在しているのだ。 その頃、沖縄の米軍基地から毒ガス兵器「GUSOH」を強奪した北朝鮮人が都内のビルに籠城するという事件が起こっていたが、防衛庁や警察庁はこれを隠蔽する。 北朝鮮のテロリストと、海上自衛官。 まるで接点を持たない両者がこの後東京を震撼させる大きな事件を引き起こす。 とにかく面白かった。 自分の趣味が読書で本当に良かった、と思った。こんなにいい本に巡り会えるなんて。 息を付かせぬ展開。先がどうなるのか、登場人物がどのような選択をするのか、作品中に入り込んで(要は作家さんの手のひらで転がされて)悩んだり、笑ったり、ショックを受けたり、すっかりはまってしまった。 特に下巻は、寸暇を惜しんで読みながら、私は何度「いま佳境なんだ」と人に言ったことだろう。 考えてみたら、下巻は一冊全部が佳境みたいなもんだった。 登場人物の造形が良い。 序章で語られる3人の人物、如月行、宮津弘隆、仙石恒史の半生も、本編におけるこの三人の述懐もすべてが良い。(序章だけで泣けます!) たくさんの人物が作中には登場するが、どれもこれもキャラが立っているのだ。それもバランス良く。 それだけに作品に深みが出ている。 彼らの人生をかいま見ることで、生命の儚さ、強さがよく現れていると思う。 なにが一番良かったって、終章できちんと彼らのその後が語られていることだ。 最近の小説は、「ラストは皆さんで想像してね」と中途でぶち切れているのが多いので、それに比べて実におさまりがよく、これもまた好印象の一つである。 と言いながらも、上巻の中盤は結構つまづいていた。 まず私は海上自衛隊や護衛艦についての知識が皆無だった。 「一等海士」と言われても、いったいその階級がどの程度の物なのか、まったくわからない。 戦中の「少佐」とか「大尉」とかの階級は現在は使用されていないため、一等と三等のどちらが上なのかも分からなかった。 そのため、職場の人に教えてもらい、階級表のコピーを常にブックカバーに挟んで、覚えるまではそれを見ながら読んでいた。 護衛艦や軍備についてもまったく分からず、作中で説明してはあるのだが、やはり見てみないことには頭に描けない。専門用語が多いことも、つまづく要因だった。 そのため、読むペースが驚くほどがくんと落ちた。 だけど、読み切って本当に良かった。食らいつくだけの価値はあったと思う。 実に、映画のようだった。 海を彩る美しい配色も、海に生きる男達の人間模様も、真実と背中合わせの虚偽も、背信も、戦闘も、すべてが生き生きと描かれていた。 もう一度読み返したい作品である。 まだ読後の興奮が冷めやらないので、あまり感想になってないなー。 感動すると、言葉は出てこないみたいです。 ![]() |
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大手総合商社の化学薬品部門に所属し真面目に勤めていた稲田は、ニューヨーク駐在員としてアメリカで暮らすうちにコカイン中毒になっていく。 日本へ帰国する日が近づいたある時、稲田は知人から、日本でコカインを入手する方法を教えられる。もちろんその代価となる「情報提供」が条件である。 こうして稲田は、朝倉恭介が作り上げたコカイン密輸のシステムに組み入れられてしまう。だが、完璧に稼働していたシステムに、ある日一石が投じられる。 面白かったです。 タイトルは大変有名なのに、なかなか読む機会がなかったのですが、こういう話だったのですね。 描写が大変丁寧で、読みやすくわかりやすいのも良かったです。 薬物の怖さも十分伝わってきます。 それと、これだけの広がりのあるストーリーを、某シーンから書き始めるという斬新さ。最後まで読み終えてから1ページ目を読んで感心してしまいました。 気になったところは、三つ。 一つは、結末のあっけなさ。 後半かなり盛り上がり、どう展開するんだと気を持たせた挙げ句、かなり簡単に決着がついちゃいましたね。盛り上げられたこちらとしては、なんとなく肩すかしの印象です。 それと一番の疑問なのですが、果たして本当にこの密輸・販売ルートは完璧なシステムなのか? 作中では完璧だと誰もが言っていますが、ほんとにそうなのか疑念を覚えてしまいます。 二つ目は、ラストの朝倉の笑み。 空港で朱とすれ違うシーンは映画を見ているみたいでかっこいいと思うんですけど、その後飛行機の中で朝倉が会心の笑みを浮かべるところが、?です。 そりゃー、結果として大元は発覚せずに事なきを得ているけど、だけど一穴から失敗しているわけで、なのに上機嫌というのがどうも不自然な感じがする。 もちろん犯罪行為のシステムなんて恒常的に続くものじゃないと彼も分かっているだろうし、ここに至るまでに莫大な利益をあげているわけだし、この時点で何か新しい方法を頭に描いた上での笑いなのかも知れないんだけど。 ……と、気になったので、続編である「猛禽の宴」も買ってみました。 三つ目は、どーでもいー事なんですけど(笑)、筋肉の描写。 この朝倉、全編通して顔についての描写が一切ないんです。 主人公なのに、珍しいことですね。 が、何故か、朝倉の体つきの描写、特に筋肉の描写は詳細です(笑)。 のこぎりを扱うシーンで、「セーターの中で上腕筋と肩の筋肉が……」という描写がさしはさまれていたり、他のシーンでも筋肉描写が事細かで面白い。 朝のシーンも朝倉はマッパだったりバスローブだったりするんですな。 作者さんは筋肉好き? 途中、その視点に、楡さんは女性かとまで思ってしまいました。 ![]() |
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民間研究所に勤務する科学者・山之内明博士は、遺伝子操作により、石油を生成する細菌を作り上げた。毒素の強いこの細菌(ペトロバグ)を無毒化して、石油に代わるエネルギーとして利用できないか、と研究を続ける山之内を、石油の価値低下を望まない人々等が妨害する。 評価に悩んだ。AかBか。結局B寄りのAということに落ち着いたけど、甘いかなとも厳しいかなとも思い、どうも定まらない。 この作家の本は初めて読んだ。そのせいか、どうも捕らえ所が難しかった。 ひどく現実的かと思うと、チープな感傷がある。 現実的な所は面白い。この作品のメインは、石油を作り出す細菌の研究だ。枯渇が叫ばれて久しい石油に代わるエネルギーとして、どうにか役立てられないか、と主人公である山之内明博士は研究に没頭する。この細菌は、感染した物を石油に替えてしまうという特性を持っている。空気感染はないが、傷口等から体内に感染するとものすごい勢いで脳が浸食され、体が石油になってしまう。 山之内博士は、人類が安心して使えるエネルギー源になるよう、研究を重ねてこの細菌を無毒化したかったのだが、のんびり研究をさせておくほど世間は甘くない。 OPEC、米軍、アメリカの研究機関等、その研究には多くが注目していた。 ことエネルギー問題だけにとどまらず、環境問題、政治問題へと波及していくところが現実的で、大変面白かった。 だが、私がなじめなかったのは、この山之内博士に憧れる女性研究員・相原の存在である。 山之内の過去も現在もくるんで愛を注ぐ相原は、山之内の救いであるのだが、果たしてこの作品に恋愛要素が必要であったかどうか。 どうして、仕事、戦いといった理性の要素だけではいけないのか。 山之内の過去は確かに悲しい物だが、それを救うのが若い女性という設定がどうにも安直な気がする。 この恋愛要素をやめて、妹を殺したとして山之内を逆恨みする近藤との確執をもっと掘り下げた方がずっと良いと思うのだ。 百歩譲っても、ただの憧れにとどめておけば良かったのに。裸で迫ったりとか愛の言葉を告げたりとか、まったく無意味だし唐突だった。 ![]() |
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中華文化思想研究所は、かつては<会社>(=米国国防総省)の息のかかった組織であったが、現在は「アジア通信」という雑誌を発刊する、普通の出版社である。ここの所長である仲上は、40代男やもめで外見に無頓着、事務所のソファで惰眠をむさぼるなど、かなり情けなくだらしない様相だが、過去には<会社>のために働く情報屋であった。その仲上と、唯一の社員であるラリー・チャン(シンガポール在住の中国人。日本に留学後滞在)の二人を取り巻く事件の数々をまとめた、連作短編集。 五條さんの新刊! もうほーんと読書って楽しいよねー、五條さんサイコー!と読んでいるときはかなり幸せでした。 え、なのに、B寄りなの? うはははー。ちっと厳しいか? えーと、連作短編集ということで、読みすすむうちに仲上の過去に裏打ちされた現在の人柄、ラリー・チャンの成長具合が鮮明になってゆき、二人の信頼がどんどん強くなっていく様が伺えて面白かったです。 が、今回B寄りのAという評価になった要因は、この一点! この本は確かに連作短編集で一話完結だけど、すべての話に共通の謎(=ここでは仲上の過去)が存在し話毎に浮き彫りになるという形態になっている以上、ラストの話で、なんらかの結論(当然彼が仲上の前に出現した上で)が出ないと弱いと思うのだ。 だけどこの本では、それなりの結末は用意されているけど、詳細は語られず(次の機会に持ち越しなのか、どうなのか……)、1話目から盛り上がっていたわりには肩すかしの印象。言うなれば「熱氷」と同種類同程度の肩すかし、です。 なんか、やな癖がついちゃったわけじゃないよね。ちょっと不安です。 尻切れトンボってわけじゃありません。念のため。 いろいろな人から手紙をもらっているけど、仲上が返事を出したのはラウルにだけで、それだけにラウルに宛てた手紙の内容が彼の真実であることも分かるし、目には見えない二人の絆(もちろんチャンとは性質の異なるもっと強い絆)が分かる。 この二人の今後も楽しみだし、続刊が出たら迷わず購入します。だけど、同じ連作短編集ならば、「夢の中の魚」の方が断然上です。 収録されている中で一番好きなのは、「聖夜に君の名を呼べば」です。五條さんの真骨頂でしょう。 ![]() |
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30になっても定職に就かずふらふらしている猿渡と、怪奇小説を書くことを生業としている伯爵(←あだ名)の二人を軸に、旅先や彼らの周りで起こる不思議な出来事をつづった、連作短編集。 この本は実は衝動買いなのだが(タイトルとカバーのあらすじに惹かれた)、当たりだった。こんなこともあるのね。(だいたい衝動買いは失敗が多い) 私は短編があまり得意ではないのだが、これはとても面白かった。もっとも連作短編集なので、通常の短編集とは違うのだろうが。 この本には8本の短編がおさめられている。が、最後の1本とそれまでの7本とはだいぶ趣が異なっている。 7本は、上に書いたように、二人の周りで起こる怪異な出来事をまとめたものだ(京極堂シリーズをそぎ落としてあっさりさっぱりすっきり仕上げたような、京極堂ミニマムって感じの作品)。だが、最後の1本「水牛群」は、傷ついた魂の旅路の物語であった。 最初、主人公がそれまでの猿渡と同じ人物とは思えなかった。一体彼に何があったのか。読めばどうやら先の7本からは2年の歳月が流れていて、伯爵にも会っていないらしい。 だが、いくら不当な解雇でも、会社をくびになったことでここまで沈んで神経症のようになってしまうだろうか、と考え、気付いた。 「ケルベロス」では猿渡が腕を離してしまったことで一人の女性が亡くなっている。「埋葬虫」では大学時代からの友人が寄生虫により狂気の中にいることがわかっているのに、恐怖し交際を絶っている。これらの短編はそれなりに面白いのだが、最後、このようなアンハッピーな結末にも拘わらず猿渡の反応が、あまりにも冷淡なのが気にかかった。 冷淡で酷薄なのは表層だけで、本当は際限なく自分を責めていたのだとしたら。だとしたら、「水牛群」のような猿渡になるのも頷ける。食事がとれない、睡眠がとれない、焦れば焦るほど空回りをする。傷つき漂泊しつづける魂が、少しでも元に近づくことを祈ります。 猿渡は作者にとても近い人物として描いているのかも知れない。 出身地や家族構成が同じというだけではなく、「水牛群」を読んでそう思った。 ![]() |
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土佐勤王党の走狗として、言われるままに京洛で人を斬っていた岡田以蔵。 人斬り稼業をやめた今、京の地獄街とも言われる下木屋町で、お遊という女郎上がりと一緒に暮らしている。 お遊に子供が出来、つましいながらも幸せな生活が続いていく予感がありながら、その温さを受け入れられない以蔵。 自分自身の存在価値を人を斬ることでしか確認できなかった彼は、自分の中にぽっかり空いた穴を感じている。それを埋めるものを渇望し、焦り、苛立つ中で、坂本龍馬の用心棒を務める明楽萬次に出会い、共鳴し反発する。 この本は94年の小説すばる新人賞の受賞作。 若い人が書いただけあって、一般的に売り出されている時代小説とはちょっと趣が異なります。 例えば、武器がマンガチック。「ベルセルク」とかお好きかも。 私は、この作品を読んで、芝居だったらいいのに、と思った。 小説にしては、どうも分かりにくく、むしろ戯曲に換えて上演した方が設定やテーマが生きるんじゃないかな。 全編通して、まっかな夕焼けを頭に描きながら読んだ。頭で映像になりやすい。その当たりが受賞の理由だろうか。 ただ、繰り返しになるが、小説としては弱いと思う。残念だが生きていない。 ![]() |
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「新選組異聞うかれトンビ」、「新選組風雲録 激斗編」に続く、全5巻のうちの3冊目です。 時代的には、慶喜将軍就任、孝明天皇薨去〜御陵衛士結成〜大政奉還〜坂本龍馬暗殺〜伊東・藤堂死去、といったところ。 なんだか、疲れちゃった。読んでいてだんだん飽きてきちゃった。 思うんだけど、これは1冊目の「うかれトンビ」のように、忠助とお多加を中心にした物語にした方が良かったんじゃないか? なにも新選組をこんなに中心に据えて描かなくてもいいと思う。 広瀬さんの当初の予定がどのくらいの分量だったかは分からないけど、この全5冊は長いよ。 新選組を中心に据えたのも、出版社の意向じゃないか、と勘ぐってしまう。 とにかく、薄くて甘くて長いです。 ![]() |
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「新選組異聞うかれトンビ」の続編。タイトルを変更して続編を次々刊行、全5巻のうちの2冊目です。 時代的には、禁門の変〜伊東入隊〜山南脱走〜屯所移転〜家茂逝去 あたり。 いやー、まいった。こんなに依怙贔屓に満ち満ちた小説ももの凄い。 あまりの偏愛ぶりに、1冊目のA評価から一気に急降下です。 作者が誰を好きだか一目瞭然。好きな人を良く書こうとするあまりに、いい人にし過ぎて、行動に辻褄があってない。 山崎烝が、血眼になって探している桂小五郎を目の前にして、「武士の情け」という理由で、京都から落ち延びるところを見逃すはずがないのだ!! それは隊規違反で切腹でしょう。 とにかくひたすら驚いて声も出なかったのは、脱走した山南さんを、土方さんが馬で追いかけたところですかねー。 いやー、初めてみました。凄いシーンです。 いや、いいんです。好きなようにアレンジしてもそれは小説家の自由。だけど、辻褄は合わせてほしい。山南さんが逃げ延びられるように、という理由で、故意にゆっくり馬を歩かせたりしないで欲しいよ。 読んだはずなのに、2冊目以降あまり印象が残っていない理由が分かったような気がします……。熱狂していた当時の私ですら、この展開はダメだったのかも。 |
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「猫背の王子」の続編。 劇団カイロプラクティックを解散し燃え尽きたミチルが、海外で放浪の旅をして自分を見つめ直す話。 破壊と再生の話、とも言えるかな。 前作と引き続いて思ったことは、ミチルのキャラは妙な魅力があるということ。 「サグラダ・ファミリア」のガリの方がよっぽど好みで、むしろミチルは好みのキャラじゃないんだけど、どうにも惹きつけられる。 特に、この作品でのミチルはあまりにも憔悴していて、その痛さが胸に迫ってくる。本当に純粋で繊細なキャラだなと思う。 あとがきで、中山さんの知人は続きを待ち望んでいるようだけど、私は特に続きは読まなくてもいいや。 たぶんこの2冊で終わるのが一番良いんじゃないだろうか。 それにしても、フランソワのくだりは泣けた。 良い人が早死になのか、早死にだから良い人なのか。はぁ〜〜。 ![]() |
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江戸から京へ流れてきた盗賊・ましらの忠助は、偶然清水寺で土方歳三に出会ったことから、彼の元で間者として働き、土方という男に心酔していく。 また、同じ江戸から好きな男(吉田稔麿)を追ってお多佳という女性が京へ来ていた。彼女は江戸では神出鬼没の霞小僧という大泥棒であり、桂小五郎に関わるようになる。 この洛中編は、池田屋事変と禁門の変を背景に、登場人物の紹介かたがた導入部のような位置づけ。 えーとこの本は、私が高校一年の時に出たもので、その後さっぱり続きが出ず、忘れた頃に「新選組風雲録」と名を変えて別の出版社から5冊刊行されたものです。 当初、いろいろな新選組本をかたっぱしから読んでいた時期で、土方さんが泥棒を配下に付けて情報収集をする、という着想がとても面白く、かなり好きな作品でした。 高校の時、大学の時と読み、今回が3度目になります。それなのに内容はあまり覚えていなくて、かなり新鮮に楽しめました。 中学高校の時、広瀬仁紀さんの新選組は、司馬遼太郎さんの次に好きだったんです。他にも過去に「沖田総司恋唄」「土方歳三散華」「洛陽の死神」を読みました。 今読んで納得なんですが、キャラ造形が司馬さんのに似ているんですね。 司馬さんのキャラを、もっとマンガっぽくした感じです。 そして、どうも広瀬さんは土方さん贔屓のようで、かなり土方さんがいい人に描かれています(笑)。 なるほど、中学高校の私が好きになるわけだ……(笑)。 あ、「壬生義士伝」の感想に書いたのですが、この作品の沖田は天保15年生まれになってます(笑)。そうそうこのころはそうだったのよねー、と郷愁に浸ったりして。 ストーリーについては、まだよくわかりません。なんせ導入部だし。今後に期待です。 |
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司法試験に失敗した小幡が失踪した。小幡の友人である里美は、懇意にしている小説家・石岡のもとへ相談をもちかける。 小幡の失踪の影には、彼女のフロッピーディスクに記録されていたパロディ小説が関連しているのでは、と目を付けた二人は、それぞれ手分けをして22編の短編を読むことにする。 ごめんなさい。 もう、のっけから謝ってしまいます。 カバーのあらすじ紹介のところに、「1行1字すら気を抜けない新感覚ミステリー」とあるのだが、私にはだめでした。気が抜けっぱなしだったのがいけなかったのでしょうか。 御手洗&石岡ファンが作ったというパロディ(という設定の短編。10ページ〜40ページの物)を、13本立て続けに読まなくてはいけない辛さ! もともと短編小説やショートショートは苦手なので、大変苦労しました。 里美と石岡が巻末でそれぞれのパロディについて意見感想を述べているのですが、苦労した暁に読む物としては、これの方こそ力の抜ける会話でした。 おそらく、この雰囲気が良いのだろうなあ、と理解はするのですが、すみません。下巻へ進むことはできませんでした……。 ![]() |
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新宿署の刑事・村上緑子(りこ)は、レイプシーンを撮影したビデオについて捜査を続けていた。それが、本庁の意向により、月島で上がった水死体の所有物に同様のビデオのマスターがあったことから、合同捜査本部がもたれることになった。 どうしても自分の手で犯人を挙げたい緑子。それは、自分が長い時間をかけて追い続けてきた事件だから、という理由のほかに、どうしても本庁の刑事達に負けるわけにはいかない理由があるからだった。 性犯罪の取り上げ方、全体のテーマ、主人公のキャラクター、どれをとっても「なるほど、女性作家だ」と思わせる。 ある意味、男性には書けない物だ。(書いたとしても、このようにはならないと思う) そこが強みであるのだろうが、それが私にはちょっとつらかった。 緑子があまりにも「女」なのだ。緑子の心の葛藤も、過去へのこだわりも、恋愛観も。 女性心理をものすごく丁寧に描写しているだけに、おそらく共感する女性は多いだろうな、と思う。 私も一部共感した。 だけど、子供を産んでしまうと決意したり、確立が33%だと男に言ってしまったり、もう刑事はやめると口にしたり、相手が安藤じゃなくても泣いてしまったり……など、緑子の言動がいちいち引っかかった。いやだな、と思ってしまった。 共感はする。もしかしたら私もその立場に立ったら同じことをしてしまうかも知れない。 だけど、現在の私は自分の中の女性の部分を見たくないのだ。 ![]() |
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日本に滞在する外国人が殺された事件で使われた銃弾(横筋が入り刻印がない)を求めて捜査を続ける武本と潮崎。二人は池袋署の刑事である。 ある日、拳銃を持った男を追いかけた二人だったが、横から邪魔が入り、男は居直ってコンビニの店主に銃をつきつけてしまう。 邪魔をした男は麻薬取締官の宮田。薬物取り締まりのため、その男を長い時間をかけて追っていたため、警察に横からさらわれることを恐れて捜査の妨害をしたのだった。 武本のとっさの判断でコンビニの店主を救うことはできたものの、被害者を出してしまい後味が良くない。が、その後、武本と潮崎は、宮田の過去を知ることになる。 全体的に面白かった。キャラも生きていて良かった。(この終わり方、続編がおそらくいずれ刊行されるのだろうが、きっと購入します) ただ、やはりデビュー作だからか、突っ込みどころは多数。いいところと突っ込みどころが、細かく多数入り交じっているような作品だった。 キーポイントになるお茶の葉。 説明は大変わかりやすいのだが、でもどうしても気になる。そんなに封筒や箱にお茶の葉というのは入るものだろうか。指紋がつかないように入念なチェックをするような人が、お茶の葉がついた手なり服なりで作業するだろうか。 麻取と警察の確執というのも、かなり最近では小説などに一般に出てきていて、そう目新しい物ではなく、しかもここでは麻取が狂言回しのようになっている。樋口と武本の和解のようなシーンもあるが、これは必要ないのではないか。そもそも、宮田が麻取である必要があるのか? そう感じながらも、でもやはりキャラ造形が面白かった。 はじめは武本と潮崎のデコボコぶりにとまどったが、読み進むうちにいいコンビに見えてくるから不思議だ。 事件を追いながら、泣いたり悩んだり怒ったり葛藤に苦しんだり、みんな生きていて、この事件を契機に成長しているのが分かって良かった。 武本が引っ越しの時に、コンビニでおにぎりを見ながら、潮崎のおにぎりを思い出し淋しくなるシーンが好き。 一番好きなのは、二人で星和フーズへ押し掛けた時のシーンだ。犯人と思われる相手を、飄々としながらも畳みかけるように追いつめていく潮崎。黙して語らず要所要所で言葉を発し相手に威圧感を与える武本。コンビネーションが最高。 それとは全く別のシーンだが、潮崎の科白で「新宿武……なんか、新種の竹みたいですよねえ」というのも最高だった(笑)。 本格推理小説ファンには特に薦めないが、軽く何かを読みたい人にはいいかも。 ![]() |
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新選組隊士である吉村貫一郎は南部藩脱藩浪士。 危険な仕事や人の嫌がる仕事を進んで引き受けては、稼いだ金子を国許の家族へ送金している。 人は彼を「守銭奴」とも言った。 鳥羽伏見の戦のとき、新選組の敗残兵は大坂城へと引き上げたが、その際隊を脱走する隊士たちに混じって、吉村だけは南部藩蔵屋敷の門を叩く。 以前南部藩で禄を食んでいた者である、どうか帰藩を認めて欲しい、と頭を下げる吉村。 そのとき蔵屋敷の責任者は、吉村の親友・大野次郎右衛門だった。 一方では吉村自身のモノローグ、もう一方では何者かが(名前がわからない!北海道出身らしい)、吉村貫一郎の生涯を調べるために、吉村に関わりのある人物のところへ取材に行くというスタイルで綴られている。 つまり、吉村の一人称による語りと、取材を受けた者の一人称による語りとが交互に現れ、全部を読む事で、一つの世界が完結する、という形式。 「守銭奴」と蔑まれてもお金を稼ぐことに懸命だった吉村が、そこまでして守りたかった物はなんだったのか、がより明確に示される。 そうした時代の厳しさ、人間の強さ・弱さを浮き彫りにすることで、家族の暖かさ、命の尊さを描いている、と思う。 本当に申し訳ない。私は浅田次郎さんの小説が苦手である。 「鉄道員 ぽっぽや」を読んでそれを身にしみて分かっていたはずなのに、「新選組」ということでどうしても読みたくなってしまったのだ。つまり、読んだ私に責任がある。 何が苦手といって、もうこれは相性という以外に説明ができない。 文章および描かれる世界からにじみでる優等生的な所や性善説信奉的な所が苦手なのかもしれない。(いや、これは後から考えた理屈なので、本当かどうかは分からない) しかも、「鉄道員」も「壬生義士伝」も、テーマは「家族愛」である。 私の一番苦手な、もっと言えば嫌いなテーマである。 そうなのだ、読んだ私が悪いのだった。 新選組のところだけを取り上げると、そこはかなり興味深かった。 ○沖田総司の生まれ年が天保13年になっている。 私が過去に多数読んでいた本では、天保15(弘化元)年生まれが通説であった。 辰年生まれ、近藤よりも10歳年下、25歳の時に死亡、というのがその通説である。 が、この本では天保13年生まれ、つまり寅年生まれ、近藤よりも8歳年下、27歳で死亡、ということだ。 新選組初期メンバーで一番年下は沖田ではない、ということになる。 そしてどうやら、最近の通説は後者らしいのだ。 浅田さんは最新情報を取り入れたことが分かる。 ○坂本龍馬を殺したのは斉藤一 私が過去に多数読んでいた本では、「昔は原田左之助が犯人であると言われていたが、現在は見廻組の佐々木只三郎という説が有力」とされていた。 この本では、原田でもなく佐々木でもなく、斉藤である、ということになっている。 これは浅田さんのオリジナル? それとも最近はこの説が有力なのか。 ○沖田総司のキャラ 私が読んでいた頃は、沖田は末弟的イメージで、いつまでも子供の心を失わない天真爛漫な少年として描かれているのが多かった(マンガや小説で)。 この本では、人を斬るのにひとつも躊躇しない、半分いかれた人物のような描き方をしている(「斬っちゃおうか」といった科白に顕著)。 島崎譲のマンガ「風の如く火の如く」でもそういう描かれ方をしているのだが、最近はそういうのが沖田のイメージ? ○土方さんの最後 「燃えよ剣」では馬に乗って敵陣に乗り込み撃たれて死んだことになっているが、私が過去に読んでいた本では流れ弾にあたっただのお尻を撃たれただの散々なことが書いてあり、死体・最後の地等詳細は不明ということだった。 この本では腹を撃たれたことになっており、付き従っていた隊士(名前不明)が五稜郭の一角に埋めたということになっている。 ただし、私の函館話は信じちゃいけません、と言わせているので、浅田さんの創作なのかも? 全体的に浅田さんは好意的に近藤さん・土方さんを描いていたように思う。 特に、土方さんの愛刀・和泉守兼定に付いていた「赤い下げ緒」のことまで書いてあることからもそう思ってしまった。(土方さんは若い時分、剣道の面に赤いひも?を長く垂らしていたそうなのだ) この作品全体では大野次郎右衛門と斉藤一が気に入ったキャラ。 大野は庶子だったのがいきなり嫡子として屋敷に上げられ、妾腹と蔑まれないように自らを叱咤して「切れ者」ぶりを発揮し、家来達から信頼されるに至る、という人物なのだが、馬鹿にされまいと完璧を自分に課するストイックさが好み。 斉藤は、ひねくれもの、へそ曲がりとして作り上げられたキャラで、登場した時にはとても安堵した。 斉藤登場まで、とにかくいい人のオンパレードで、辟易していたためである。 斉藤が宴会の席で、頓着せずに笑顔を振りまき自分の故郷の自慢話をしまくる吉村に対して苛々し、「殺してやろう」と思うシーンはとても良かった。 ![]() |
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