2012/4/25  |
評価 A |
| 夜鳴きめし屋 |
宇江佐真理 |
光文社 |
本所五間堀の「鳳来堂」。
若い亭主の長五郎が調えた美味い酒と肴、そして親譲りの心意気に惹かれてまた一人、今宵も暖簾をくぐるー。
連作短編集。
夜鳴きめし屋/五間堀の雨/深川贔屓/鰯三昧/秋の花/鐘が鳴る
面白かったです! さすが宇江佐真理!
ヒロインが芸者だったり、火事で焼け出されるシーンがあったり、時折著者の代表作「髪結い伊三次」を思い出しますが、楽しかった。
鳳来堂の客として子ども達が登場しますが2人とも可愛いし、やはり昔の子どもは年若いうちから大人として独り立ちしていくんだなー、などとしみじみしたりして。二十歳過ぎても親がかりの現代日本とは雲泥の差です。
主人公の長五郎の経営する居酒見世「鳳来堂」で出されるお料理がとっても美味しそうで、親が夜お座敷で家におらず、駄賃を渡されて買いに行く食べ物に飽きた子ども達が、長五郎に「普通のもんを出して」とおねだりしている様子を見て、「私も普通のもんを食べたいかも」と珍しくごはんと魚を食べたり、読書中は影響されてました。
(私はいつもは米飯はいただかないのです)
長五郎とみさ吉のあれやこれやは回りくどすぎてあまり萌えませんでしたが、夜鷹のおしのや、みさ吉の同僚の駒奴、長五郎の友達の友吉などと長五郎が交わす会話は楽しかったです。
みんなお店のお客ではあるけれど、心の底からつながっている何かを感じます。
もしも続巻が出たらまた読みたいです。
KTさん貸してくださってありがとうございました。
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2012/4/22  |
評価 B(A寄り) |
| 運命の人 1 |
山崎豊子 |
文春文庫 |
毎朝新聞政治部記者、弓成亮太。
政治家・官僚に食い込む力は天下一品、自他共に認める特ダネ記者だ。
昭和46年春、大詰めを迎えた沖縄返還交渉の取材中、弓成はある密約が結ばれようとしていることに気づいた。
熾烈のスクープ合戦の中、確証を求める弓成に、蠱惑的な女性の影が…。
TBSで放送していた同名ドラマが始まった時に買ったんですが、結局読み始めたのはドラマが中盤を過ぎた頃でした。
そして途中読むのを中断したりしていたので、今頃第1巻を読み終えるような状況となっています。
思ったことは、ドラマを見てしまった後に原作を読んではいけない、ということでした。
脳内に浮かぶ人物は全部ドラマの映像になってしまうからです。
モッくんに松たか子に真木よう子。
こんなことでは小説を読む意味がありません。
完全に順番を間違えました。
また、第1巻について思ったことは、ドラマは相当原作に忠実に作られたのだ、ということでした。
同じ科白が結構あります。
この後の巻はどうか分かりませんが、少なくとも1巻はドラマのままでした。
このままでは2巻以降も脳内はモッくんに松たか子に真木よう子になってしまうので、続きを読むのをやめるか、読むとしても大分経ってからになると思います。
それと、第1巻では主人公の仕事の仕方に反発を覚えてしまうことも困りました。
やり手の新聞記者という設定なのですが、あまりに強引すぎて、許せません。
本人は真実を追究しているつもりなのでしょうが、糸口を掴むと同時に新聞に載せて世間に大々的に発表してしまう、というのはあまりにもひどい行動だと思ってしまいます。
時代が1970年代前半なので、そういうことがまかり通っていた時代なのかも知れませんが、今の感覚からすると乱暴に感じます。
なので主人公が窮地に追い込まれても、そりゃそうだよな〜と思ってしまい、同情出来ない自分がいます。
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2012/4/22  |
評価 B |
| 特捜部Q 〜キジ殺し |
ユッシ・エーズラ・オールスン |
早川書房ハヤカワ・ポケットミステリーブック |
「特捜部Q」-未解決の重大事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署である。
見事に初の事件を解決したカール・マーク警部補と奇人アサドの珍コンビ。
二人が次に挑むのは、二十年前に無残に殺害された十代の兄妹の事件だ。
犯人はすでに収監されているが、彼一人の犯行のはずがない。
事件の背後には政治経済を牛耳るあるエリートたちの影がちらつく。
同じ特捜部Qシリーズ1作目「特捜部Q〜檻の中の女」が面白く、翻訳物なのに読みやすかったのでこの2作目も期待していたのですが、どうも読みづらい。
なんでだろう、おかしいおかしいと思って良く見たら、訳者が変わっていました!
同じシリーズなのに訳者が変わるなんてどうしたこと!
前の巻を訳した人(吉田奈保子さん)に代わって欲しい!!
この2作目はとにかく読みづらくて、3月から読んでるんですけど1ヶ月かかってしまいました。
しかも、今回のストーリー、大がかりではあるんですけど、肝心の特捜部Qのカールやアサドが事件の解決に直接関わっていないんですよね。
勿論2人は頑張って捜査をしていますが、結局事件を解決したのはキミー本人で、彼らはそれを見ているだけだったし、更にキミーを目の前で死なせてしまうし、読後もすっきりしません。
次巻に期待します。
ハヤカワ様、次巻はぜひ、吉田さんの訳でお願いしたいです。
KTさん、貸してくださってありがとうございました!
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2012/4/16  |
評価 A |
| 東雲の途 |
あさのあつこ |
光文社 |
「断ち切れ、断ち切れ、過去の一切を断ち切って生きろ」
宿命に抗う男たちの悲痛な叫び。同心木暮信次郎、商人遠野屋清之介。
屍体に隠された瑠璃石が、因縁の男二人を突き動かす。
3月中にはほとんど読み終わっていたのですが、終章だけ残していまして、今頃になって終章を読み終えました。
このシリーズは好きなので、新刊が出たと知った瞬間にレジに持っていったものです。
期待に違わず面白かったです。
面白かったけど、あんまり話は進まないですね。
まあ前巻の「木練柿」よりは展開しましたが、信次郎と遠野屋の2人が共闘するまでに3冊必要だったかと、4冊目でやっとここまで来たか、と感慨深くもあるし、まだるっこしい。
呆れるほどのスローペースです。
ちゃんと最後まで書いてくれるんでしょうか、あさの先生。
文春文庫の「燦」も同じ意味で心配なんですけど、あちらはまだ巻数物ですから多少の縛りを感じますが、こちらのシリーズはそうではないので、ある意味番外編とかにも逃げられますし、回想だけで1冊とかも有りなので心配です。
少なくとも「東雲の途」ではストーリーが完結していないので、続巻が待たれます。
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| 2012/3/19 |
評価 A |
| 元禄太平記 全2冊 |
南條範夫 |
徳間文庫 |
華やかなりし元禄の世。将軍綱吉の信頼を一身に集め出世の階段を駆け登った男、柳沢保明。
寵童から側用人、幕閣の最高責任者へと、その勢いはとどまるところを知らず、驕り高ぶる保明は強大な権力を揮い始める。
恒例の勅使参向で、保明は浅野内匠頭長矩を勅使御馳走役に任命する。
高家筆頭吉良上野介、浅野内匠頭、そして柳沢保明。
運命の糸はもつれ、浅野家の悲劇の幕が切って落とされた。
綱吉と柳沢がメインの小説はないでしょうかと尋ね、Sさんが教えてくださった本。
往年の大河ドラマ「元禄太平記」の原作本でもあります。
いやーこれがドンピシャでした! Sさま、ありがとうございました!
舞台「大江戸鍋祭」を見た人ならば間違いなく楽しめると思います。
本書は柳沢吉保が主役で、赤穂の仇討ち事件がからみ、生類憐れみの令がからみます。
知的好奇心も満たせた上に、小説としても面白く、途中まではぐいぐいでした。
が、下巻の真ん中当たり、吉良邸討ち入りが本決まりになった辺りから驚くほどに失速してしまいました。
ストーリー的には山場だと思うのですが、自分的には盛り上がらなくて非情に残念。
前編であれほど熱中して読んでいたのに、どうしたというのでしょう。
終盤、討ち入り後の江戸の人々の反応(赤穂の仇討ちを喝采する様子)が描かれていたのは良かったのですが、エピローグだけにあっさりし過ぎで、綱吉もあっさり死んでしまい、柳沢もあっさり没落してしまい、ちょっと残念でしたね。
せっかくのオリジナルキャラ・信花兵庫もなんとなく後編では微妙な存在感でした。
ドラマの方はどうだったんでしょうね。
本書においては、綱吉と柳沢、大石主税と水耶の衆道がきちんと描かれていたのは良かったと思いました。
山岡荘八先生は「徳川家光」で家光の衆道を完全にぼやかしていましたが、南條先生は違いますな〜。
全然いやらしくないし、心の繋がりの深さが見事に描かれ、寧ろそれだけに色っぽくてグッドでした。
というわけで、前編はS(A寄り)、後編はA(B寄り)ですね。
全体としては残念なA評価でした。
前編だけは超おすすめです。
他にも綱吉本が読みたいなあ。
それと、南條作品はたぶん初めて読んだのでは、と思いますが、とっても読みやすかったので、他の本も読んでみたいと思っています。知らなかったのですが、母校の先生でした。

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| 2012/3/7 |
評価 A |
| くちびるに歌を |
中田永一 |
小学館 |
長崎の五島が舞台。
中学校の合唱部の話です。
顧問の先生が産休で臨時教員が代行することになり、その人が美女だったことから男子生徒が複数入部。
それまで合唱部の部員は女子のみだったので、部内が男子部員擁護派と反対派に割れるなど、波乱が巻き起こる、というストーリーです。
いつぞやの少女マンガのようでした。
まあベタな展開ではあるのですが、熱い中学時代を過ごした私にとっては、みんなの熱量も部活への拘りも共感でき、楽しく読みました。
私は合唱に関する知識が全くないので、混声合唱が、ソプラノ・アルト・男声 のことだと改めて認識したような感じです。
(混声合唱という言葉は知っていたけど、具体的にどういうものか考えたことがなかった)
そういえば、私の通っていた中学の合唱部も女子ばっかりでした。
高校や大学は、合唱部があったかどうか定かではないです。あったんでしょうねえ。
でも男子部員、居たのかな。
この本には、障害を持つ兄の面倒を見るサトルくんという中学生が登場します。
普段は友達もいなくて目立たない生徒なのですが、合唱部に入部したことがきっかけで友達が出来、それまで表に出てこなかった彼の真面目で優しい所が現れてくるようになります。
彼は、心の奥底で、自分の兄に障害が無ければ自分は生まれて来なかったのだ、兄の面倒を見るために生まれてきたのだ、という凄まじくネガティブな気持ちを抱えているのですが、傍から見ていると、親御さんは絶対にサトルのことをそんな風には思っていないことが分かります。
合唱コンクールの会場に両親と兄が訪れた場面と、前述の地の底を這うような述懐を綴った手紙の場面では、私は読みながら涙目になってしまいました。
こういう設定にとっても弱いです。
サトルはちゃんと家族に必要とされているし愛されていると思う、と近くに居たら本人に訴えたい。(余計なお世話か)
なんでもこの本は、2009年NHK合唱コンクールの課題曲である「手紙 〜拝啓十五のきみへ」という曲にインスパイアされて書かれた小説とのことでした。
もうそのエピソードだけで、私は絶対に手にしない小説だったと思います。
いま「本屋大賞」にノミネートされているとのこと。
KTさんが貸してくださらなければ、この本が大賞を取ろうと取るまいと、きっと読むことのなかった本だと思います。
こうして色々なジャンルの本を貸してくれることに感謝しております。
いつもありがとうございます。
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| 2012/2/19 |
評価 A(S寄り) |
| 舟を編む |
三浦しをん |
光文社 |
玄武書房に勤める馬締光也。
営業部では変人として持て余されていたが、人とは違う視点で言葉を捉える馬締は、辞書編集部に迎えられる。新しい辞書『大渡海』を編む仲間として。
定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる老学者、徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男、そして出会った運命の女性。
個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのかー。
キノベス1位とは聞いていましたが、その名の通り面白かったです。
辞書作りに人生をかけた人たちの青春小説だと思いました。
この本は前半と後半で分かれていて、その間に13年の時が流れていますが、前半で27歳だった馬締だけではなく、定年間際の荒木も、重鎮である松本先生も、みんな青臭くて一生懸命で青春でした。
かつて若かった人が年をとっても、やっぱり青春なんだなと。熱い人生を垣間見た感じです。
三浦さんの文章は時々ツボにはまるので、電車で読んでいてにやけて仕方ありませんでした。
馬締が『大渡海』(だいとかい)と聞いて、突然 ♪あーあ〜〜〜 と歌い出したり、「ソケブー大百科」を手がけた折に、馬締があまりに細かい設定を矢継ぎ早に質問するので、ソケブーの制作会社から「馬締さんの好きなように設定してください。こちらがそれに従いいます」と言われたり。
チャラ男西岡のメールにも脱力させられました。
そうかと思うと、ほろっとくるシーンがあって、涙腺も緩んだりして大変でした!
電車で読むと、表情筋が鍛えられます。
(ひとりでニヤニヤしたり、真っ赤な涙目になったり……。一応人にわからないように表情筋を駆使していましたが、だめでしょうね、きっとね)
それだけ琴線にふれまくったということです。
とても楽しい読書でした。
それにしても、辞書を作るのがこんなに大変とは。
個人的に三省堂の国語辞典が好きなのですが(この本にも書いてあったけど、用例が面白いんですよ)、辞書を見る目が変わりそう。
岩波の国語辞典は学生の時に、「右」をひいたら「左の反対」と書いてあって、「左」を引いたら「右の反対」って書いてあって、超がっかりした覚えが。天下の岩波なのにね!と友達と言ったりしました。
その点三省堂は、ちゃんと「右」の説明をくどくどしていて、好感が持てたものでした。
最後まで読み終わってわかったのですが、この本「舟を編む」の装丁は、作中の「大渡海」の装丁と同じなんですね。
粋ですね〜〜。
それと、一度読み終わった後、もう一度一番最初に戻って読み始めると色々発見があって面白いです。
松本先生と荒木の絆が読み取れます。
私も辞書制作じゃなくていいんですけど、人生をかけられるような何かを見つけたいです。
Sさま、貸してくださってありがとうございました!!

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| 2012/2/14 |
評価 A |
| 特捜部Q 〜檻の中の女 |
ユッシ・エーズラ・オールスン |
早川書房ハヤカワ・ポケットミステリーブック |
「特捜部Q」とは、未解決の重大事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署である。
カール・マーク警部補は「Q」の統率を命じられた。
しかし、あてがわれた部屋は暗い地下室。
部下はデンマーク語すら怪しいシリア系の変人アサドひとりのみ。
上層部への不審を募らせるカールだが、仕事ですぐに結果を出さねばならない。
自殺と片付けられていた女性議員失綜事件の再調査に着手すると、アサドの奇行にも助けられ、驚きの新事実が次々と明らかに。
海外の小説はあんまり読まない(訳が苦手)のですが、これは面白かったです!
文章が軽妙で、ちっとも引っかかることなくすいすい読めました。2段で450ページ、というボリューム満点な本のため、すいすいの割に日数がかかってしまいましたが。
主人公のカールもいいですが(気の強いダメ女に弱いという弱点が面白い)、そのアシスタントのアサドが最高です。可愛いです。液晶テレビの配線はたったかやるくせに、コピー機が扱えない愚か者。
かと思うとオフィスでサモサを作ったりして部屋中をスパイシーな香りで充満させてしまう。
過去も謎だし、危険な友達もいるようだし。使えないようで使える部下です。
カールの元相棒のハーディも気になります。とある事件でカールをかばうように倒れたため重傷を負い、完治不能で入院中。
すっかり心を閉ざし、見舞いに来たカールに、「俺を殺してくれ」なんて言うんだ。
お願いだから早く元気になって欲しいです。そして、カールに優しくしてあげて。
カールだって傷ついているんだよ。
とにかく犯人がまったく分からなくて(私だけでしょうか)、ようやく犯人が明らかになった!と思ったところから、事件解決までが長い(笑)
でもそれだけに手に汗握るといいますか、この後どうなっちゃうのー?という吸引力があります。
なんでもこの本には続編があるらしいです。日本では2冊目までしか出ていないですが、本国(デンマーク!)では5冊出ているそうですよ。そうそう、この作品、デンマークの小説で、舞台がデンマークなんです。珍しいですよね。
KTさま、いつも貸していただき感謝しております!
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| 2012/2/3 |
評価 A(B寄り) |
| 衝撃を受けた時代小説傑作選 |
杉本章子ほか編 |
文春文庫 |
人気時代作家3人が選んだ傑作短編集。
暗殺剣虎ノ眼(藤沢周平)/正義の政府はあり得るか(山田風太郎)/血みどろ絵金(榎本滋民)/異聞浪人記(滝口康彦)/冬の金魚(岡本綺堂)/忠直卿行状記(菊池寛)
巻末に3人の座談会が掲載されてます。
杉本章子、宇江佐真理、あさのあつこという時代小説を書く3人の作家が、それぞれ衝撃を受けた時代小説を2作品ずつ選出し、収録した本。
選定基準がものすごく個人的だと思うのですが、宇江佐さんもあさのさんも好きな作家なので、気になって読んでみました。
既読の作品は一つもなかったです。
・暗殺剣虎ノ眼(藤沢周平)
杉本さん選出。
藤沢周平だけに読みやすいですが、ラストがブラックです。
巻末座談会でも皆さん話題にしていましたが、この後、志野はどうするんだろう……。
手放しで喜べない作品(笑)。
・正義の政府はあり得るか(山田風太郎)
杉本さん選出。
これは読みづらかったですね。
時代は明治初期で、薩摩の人たちがぞろぞろ出てくる。
でもメインに描かれているのは、政権を手にした薩摩の人たちの強引な手法(断罪したりなど)でした。
この作品は、後半いきなり活劇に変貌するのが不思議でした。
山田風太郎だから? アニメとかにするといいかも?
逃亡しながらどんどん人が死んでいく。
・血みどろ絵金(榎本滋民)
宇江佐さん選出。
これは読みながら、あれ?!って思いました。
主役は絵師なんですが、お父さんが髪結いだっていう設定なんですよ。
宇江佐さんの髪結い伊三次の息子は絵師見習いなので、同じだ〜!と思いました。
巻末座談会で、宇江佐さんも自身で指摘していました。偶然のようです。好きな作品だけに血となり肉となっている様子。
それにしても、こちらも毒々しい程にブラックな作品でしたよ。
・異聞浪人記(滝口康彦)
宇江佐さん選出。
これ、面白かったです!!
滝口さんという作家さんも、初めてお名前を知ったような体たらくですが、他のも読んでみたくなりました。
時代は、江戸時代初期。戦国の世が終わり、貧苦にあえぐ浪人が、病気の妻子のために井伊家の屋敷を訪れ、当時流行していた狂言切腹をし、いくばくかの金子をもらおうと(もしくは仕官)するのですが、切腹に追い込まれてしまう。そして武士の恥だといたぶられてしまう。
病の妻子も死んでしまい、一人残された、舅に当たる老武士が、仇を討つために井伊家に乗り込む物語です。
引き込まれました。
老武士の孫に向ける優しい眼差しが、目に浮かぶようでした。
・冬の金魚(岡本綺堂)
あさのさん選出。
半七捕物帖の一編。
これも面白かったです。文章がとてもステキです。
江戸情緒が目に浮かび、こちらも引き込まれました。
半七捕物帖ってこんなに面白い小説だったのですね。
岡本綺堂って聞いただけで、ものすごく古い作品のイメージでしたが、全く!古さを感じません!
こちらも読んでみたいです。
あさのさんがオススメする理由も分かる感じ。あさの作品と共通点があるような気がします。
・忠直卿行状記(菊池寛)
あさのさん選出。
これは最初読みづらかったのですが、(旧仮名遣いというか、文章が古いのです) だんだん引き込まれました。
舞台劇とかになりそうな。シェイクスピアの匂いがしました。言い過ぎ?
家康の孫にあたる忠直は越前の当主で武張ったことが好きなのですが、ある時、実力で勝利したと思った試合が、実は家臣に勝ちを譲られたのだと知ってしまう。
そこから悲劇が始まり、部下の言葉がいちいち信じられず、わざと怒らせるようなことを言ってみたりする。
挙げ句は、家臣の妻を召し上げ自分の女にしてみたり、どんどんエスカレートしていくわけです。
こんな人が殿様だと家臣も領民も苦労しますね。早く死んで次の代に譲って欲しいところですね。
面白かったのは、巻末の座談会で、それぞれの作品について3人で語らっているのです。
どのような所が気に入って選出したか、とか、ここの部分が気に入ってるとか、いろいろ面白いです。
本について他の人と語り合う、というのが、普段の生活でなかなか出来ないので、興味深かったです。
それから、読んで思ったのは、時代小説って一言でいっても色々だ、ということでした。
全く存じ上げない作家さんが居たり、名前は知ってたけど読んだことなかった小説だったり、新鮮で勉強になりました。
6編しか収録されていないのに、この多彩ぶりはどうしたことでしょう。
一番良かったのは「冬の金魚」と「異聞浪人記」です。他の作品も読んでみたくなりました。
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| 2012/1/28 |
評価 B(A寄り) |
| 徳川家光 全4巻 |
山岡荘八 |
講談社山岡荘八歴史文庫 |
年末に見に行った「大江戸鍋祭」をずっと引きずっていて、徳川綱吉が主役の小説を読みたくなりました。
「大江戸鍋祭」の1シーンで、綱吉と柳沢が屋根の上で歌っていた歌詞が、♪じいさん秀忠ひいじい家康〜身分の違いがあるのよ〜Oh great family〜〜♪というもので、「あれ、綱吉のお父さんって誰だっけ?」と調べたところ、家光だった、というわけです。
家光がお父さんだと分かったものの、家光ってゲイじゃなかったっけ、なんてことを思い、綱吉どころか家綱も家光の息子だったりして、これは読むしかないと。
困った時の山岡荘八です。
夏に読んだ山岡荘八の「伊達政宗」の8巻にそういえば家光も出てきたな、とか。スピンオフのような気持ちで読み始めました。
全体を通して思ったことは、この本は人物伝ではなかった、ということです。
これまでに山岡荘八の本は、「織田信長」と「伊達政宗」しか読んだことありませんが、両方とも人物伝でした。
主人公が生まれてから死ぬまでが描かれている。どのような人生を送ったのか、がエピソードとともに展開される。
「徳川家光」もそうなのかと思ったのです。
実際、1〜2巻はそのような感じでした。
でも、4巻を読んで、これは違うなと。
著者が書きたかったのは、家光という人物ではなく、戦国の世を終わらせ泰平の世を築き上げようとした家康と、その後を引き継いだ秀忠・家光及び老中達がどうしても家康ほどの力を発揮できず、家康亡き後の偉業を補完できなかった、という時代なのでは、と思いました。
家康がもっと長生きしていたら(いや、充分長生きなんだけど)、もしくは同じだけの才能の持ち主が後を継いでいたら、もっと違う徳川幕府の基礎ができたのかも?
不完全だったことを示すための素材として、由井正雪のエピソードを絡ませた形になっているのかも知れない、と思いました。
由井正雪は1巻からずっと出ていますが、具体的に何をしていた、というわけでもない。
溢れる浪人達の行き場を憂い、この世を憂い、自らの正義・信条に従い、仲間と語らい画策していたくらいです。
特に4巻に至っては、俗に言う幕府転覆のような思想を全く抱いていなかった人として描かれており、正雪自刃の後、正雪の家族や何も知らない父や叔父が捉えられ処刑。
自刃した正雪も遺体を磔刑にされたり、叛徒の仲間の家族(つまりほとんど無関係の人々)を何十人も処刑させられたり、幕府の行き過ぎたやり方が書かれて本書が締められています。
小説としての後味は良くないですが、色々考えてしまいます。
たった3代でこのような下降線(に見えた)を辿ることを思えば、よくも15代まで保ったなあ、とか。
この時感じた薄い暗雲が、この後の幕府の傾いた経済や暗愚な将軍の治世などを想起させるなあとか。
軽い気持ちで読み始めましたが、不思議な本でした。
家光自身については、1〜2巻と3〜4巻では、人が違ったように描かれています。
これはどういうわけなのかよく分かりませんが、完全に別人のようです。
1〜2巻はよく知っている家光像そのもの。
明るくてやんちゃ坊主みたいで、派手好き。わがままでころころ気が変わる。
傍にいる土井大炊頭や酒井讃岐守、松平伊豆守、春日局達がみんな家光の保護者のようで、やんちゃな家光に諫言しまくる図が実に微笑ましい。
特に象徴的なのが、上洛した時のエピソードです。
37万人もの大人数で上洛し、しかもみんなが綿密に立てた旅程をことごとく粉砕したり、京の人々(庶民)に金子をばらまいたり(下賜金)、本当にやりたい放題。
(ここで大金をばらまいたりせずに、後々のために貯蓄しておけば、後にみんな苦労しなくて済んだかもしれないのに)
このような人が、3巻になったらめっきり大人しくなってしまいました。
前述の土井大炊頭や酒井讃岐守、春日局、天海大僧正、柳生宗矩など、周囲に仕えていた人たちが次々に亡くなってしまうのが3巻。
4巻になったら、めっきり老けてしまい、元気も無くなってしまいました。そのとき年齢的には40代前半なのに。
1〜2巻のキラキラした雰囲気はどこへやら、です。
そうとは書いていなかったけど、この人は心の病でしょうか。
4巻においては血を吐いたり、相当具合が悪かったみたいですが、なんとなくですけど、それ以前に神経症の匂いがします。
子どもを作り始めたのが遅かったので、48歳で亡くなった時には、4代将軍を継いだ家綱はまだ11歳なんですね。
この時点で、徳川幕府も暗雲ですよね。
そういえば、本書では家光は特にゲイの設定ではありません。
女性に興味が無いのは性的に淡泊だから、という設定になっています。
(苦しいよ、山岡先生!)
なので、柳生友矩についても、よく自分に仕えてくれるお礼に十四万石のお墨付きを渡した、みたいな説明でした。
「伊達政宗」においては、家光は歌舞伎にはまっていて、自らも女装したり、というエピソードが出てきてましたが、本書ではそういうのも一切無しでした。
2巻には伊達政宗が登場し、「伊達政宗」第8巻のエピソードが再び書かれていました。
具合の悪くなった政宗の御見舞に、家光が伊達家を訪ねる場面です。
夏に読んだ話をまた読んでしまった、みたいな、不思議な感じ。
著者同じだし、得した感じ。
2巻には島原の乱が描かれていますが、かなりあっさりしていました。
天草四郎も名前だけの登場でした。ちょっと残念。
評価ですが、1〜2巻はA評価、3巻はA(B寄り)評価、4巻はB(A寄り)評価です。
全体的にはB(A寄り)ですかねー。
さて、綱吉。
本書ではまだまだ幼児です。
綱吉と柳沢がメインの小説はないかしら。
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| 2012/1/4 |
評価 B |
| 死を騙る男 |
インガー・アッシュ・ウルフ |
創元推理文庫 |
小さな町の平穏は、その冷酷な殺人で完全に破られた。
なぜ連続殺人犯は、末期の人々を手にかけるのか?
国難を抱えた女性警察署長が追う。
最初から犯人がわかっている設定で、警察が追いつめていく話。
殺人事件も猟奇的殺人だったりするので、私の得意な要素や展開のはずなんですけど、読むのに苦労しました。
なんでこんなに苦労したのか考えてみたのですが、海外の小説(日本語訳)を読み慣れていないからか、と思います。
どうも文章がまどろっこしく、頭に入って来づらかったです。
かつて読んだディーン・R・クーンツの「ウォッチャーズ」などは読みやすかったのですが。
まあ翻訳小説を読むことが滅多にないのでそれも悪いのでしょうが、日本語訳の文章にどうも最後まで慣れませんでした。
他の要因としては、主人公の相棒レイ・グリーンという男が、主人公を支えていたのですが、作中半ばに仲違いしてレイは辞表を出して警察をやめてしまい、そのまま最後まで登場しなかったのも残念でした。
別に警察をやめてもいいけど、最後に何らかの形で現れて、主人公を助けるなり何なりして欲しかったです。
最後の最後に主人公の傍にいたのが、若い新米の?男の人で、レイを出してくれ〜と思っていました。
そもそもこの作品、主人公が60代女性、と異色。
薬が手放せないほど、腰や背中の痛みと闘っていて、最後の雪のシーンは読んでいるこちらも背中が痛かったです。
私も年をとったら、こんな風に痛みと闘わなくてはいけないのでしょうか。
80代後半のお母さんと2人暮らしだったり、別れた夫(既に再婚してる)と2人で食事したりするシーンがありまして、敢えて60代に設定しなくても良かったのでは、なんて思いました。
40代くらいにしてはどうでしょう。
ま、それだと死を目前に足掻く犯人との対決が、だいぶ違った色合いになってしまうから、やっぱりダメなんでしょうけどね。
KTさま、貸してくださってありがとうございました!
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| 2012/1/1 |
評価 A |
| スタンレー・ホークの事件簿 U 葛藤〜アンビヴァレンツ |
山藍紫姫子 |
角川文庫 |
三人の男達が熱く危険に絡み合う、息が詰まるほどの三角関係!
凄惨な強盗殺人の囮調査のために社交クラブに潜入したアリスター警視に危機が迫る!
クールな不良刑事スタンレーと美貌の精神科医ジン。
3人の男達の息の詰まるほどの三角関係を描くシリーズ第2弾!
葛藤ーアンビヴァレンツ/双龍ーツインドラゴン/秘密ーハイド
この間、大阪に行った際に新幹線のお供に1巻を持っていったこともあり、今回の大阪行きにも2巻を持っていきました。
別に大阪とはなんの関係もないんですが、薄いので旅行にちょうどいいのです。
エロいシーンは覗かれるとやばい感じですが、調子に乗りました(笑)
山藍なのでエロいのは仕方ないけれど、やっぱり話は面白いと思います。
恋愛メインになっていないのが特に良いです。
次も出たら買います。
しかし、新年1発目がこの本というのは、どうなんだろう、自分。
あ、1巻の感想にも書きましたが、この本は、同性愛(男性同士)が大丈夫な人でないと読むのは厳しいと思います。
さらに、山藍さんは3Pを多く描いている人なので、今後の展開上そう言うこともあり得ることをご了承の上、お読みください。
(私がお断りを入れる理由もないんですが(^_^;)

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