| 2006/9/10 |
評価 A |
| 風塵の群雄 〜デルフィニア戦記8 (再読) |
茅田砂胡 |
中公Cノベルズ |
王子が敵の手に落ち、意気消沈するタンガの陣に国王ゾラタス率いる援軍が到着した。
迎え撃つデルフィニア国王ウォル。
両国の王を将とした大軍が国境の砦をはさんで対峙するパラストを加えた大華三国は三つどもえの戦乱に突入するのか。
デルフィニア王妃リィの存在がすべての『鍵』を握っている。
「デルフィニア戦記」第8巻。
懐かしい。いくつかのシーンを読みながら、そういえばこんなこともあった、と思い、でもかなり忘れていて新鮮な気持ちで読んだりもしている。
シャーミアンがイヴンの腕を斬ってしまったシーンはかなり鮮明に覚えていたんだけど、ロザモンドのことをきれいさっぱり覚えていなかったのが不思議でしょうがない。
男装の麗人は私の好物なのに、なんで覚えてなかったのだろう。
そして、ナシアスとラティーナの関係は遅々として進まないながらも、微笑ましい(この辺りも記憶の彼方でした……)。
それにしても、やっぱりデルフィニア戦記は面白いなあ。こんな途中から再読しても、ぐいぐい引き込まれる。
難は電車で読むにはイラストがちっと恥ずかしいってことでしょうかね。(いや、沖さんの絵柄は大好きなんですが)
でもそろそろ知人から借りた本を読み終わらせなければ。
「デルフィニア戦記」の再読も、ちょこっと中断ね。
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| 2006/9/4 |
評価 A(B寄り) |
| がん六回 人生全快 〜現役バンカー16年の闘病記 |
関原健夫 |
朝日文庫 |
<内容>
第1章 発病・ニューヨーク
第2章 肝転移・再手術
第3章 三度の肺手術
第4章 プロ患者として
第5章 なぜ治療は成功したのか(主治医座談会)
闘病記を読もうと思い、「大腸ガン」「肝転移」で検索して行き着いた本。
30代の銀行マンが大腸ガンに冒され、その後肝臓や肺に転移してはそのたびに手術で切り抜け、元気に生きている奇蹟のような人生を綴ったもの。
こういうものを読んでいると、人の生死は運命以外無いのだなあ、と思う。
この著者は6回の手術及びバイパス手術を経て健康を保っているけれど、同じ病気で同じ先生に見てもらい、先に逝ってしまった人もたくさんいると思うし、同じ病院・同じ医師に診てもらっても同じ経路をたどれるとは限らないのだなあ、としみじみしてしまった。
だけど、こういう例もあるのだ、と思うことができた。
うちの母も、とっても前向きで明るい人だから、関原さんのように病気に打ち勝てるような気がする。
この本のよかったところは、巻末の「主治医座談会」。
関原さんの主治医たちが関原さんを交えて語っているのだけれど、かなり本音ベースで語っているようで、参考になった。
大腸ガンから肝転移した場合、かなり危ない、と他の本にも書いてあったけど、この座談会では、大腸ガンはまず肝臓や肺に転移してから全身にまわるから、肝臓・肺はフィルターになっていると言え、助かる可能性は高い、とあった(もちろん個人差などいろいろあるでしょうが)。
考え方次第で希望がもてる、のかも?根治するといいなあ。苦しまないといいなあ。
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| 2006/8/24 |
評価 A |
| がんは誰が治すのか 〜治癒のしくみと脳のはたらき |
松野 哲也 |
晶文社 |
<内容>
第1章 奇跡的恢復をした人びと
第2章 夢の抗ガン物質はあるのだろうか
第3章 現代科学はどこまで身体を捉えることができるのか
第4章 量子論からみた身体
第5章 オルターナティブな医療
エピローグ いま、この瞬間を生きる
余命3ヶ月と言われても何年も生きる人がいたり、その逆もあったり、治癒力というのは一体なにか、ということを知りたくて買いました。
いやあ、勉強になりました。
基本的に、全編を通してこの本は元気を与えてくれる構成になっていました。
現代医療だけが絶対ではない。人間の身体というのはもともと治癒力を持っている。ガン細胞は外からやってきたものではなく、自分の身体の中から発生したものなのだから、ガン細胞を憎むのではなく共存していくことが大切、と、まあそんなようなことが脳の働きや医療事情などとともに書いてありました。
プロポリス、野口整体についてかなり詳しかったです。
プロポリスというのは、ミツバチが外敵から巣を守るためにハーブや樹脂から作る物質だそうで、健康食品扱いなんでしょうかね。
この本によると、血圧が高すぎれば低くし、造血能力や免疫能が低下していればそれらを増強させたり、抗ガン剤と併用することで傷みや苦痛とは無縁だったり、塗ることで水虫やアレルギー疾患が治ったり、ガンが消失したり??などなど、夢のようなことがたくさん書いてあります。
ホントにプロポリスってそんなに凄いのか? 飲んだことないので、まったく分かりませんが、とにかく礼賛礼賛なのです。(もちろん個人差はあるらしい)
作者がプロポリスについて長年研究している人だそうなので、随所にプロポリスに関する記述があったのが気になりましたが、まあ仕方ないか。
野口整体は、骨格の歪みを矯正する「整体」とは異なり、身体を通して総合的な人間形成をめざすものだそうで、「気」を治療に使うんだそうです。なんかカルトチックですが。心と体を一体のものとして、体癖を種類に分類しそれぞれに合ったやり方で体をほぐしていくそうです。読んでいると効きそうな気がします。
この2つのほかにも、薬剤でないのに、効くと信じて飲めば本当に効いてしまうプラシーボ効果のことについても興味深く読みました。
人間の精神力というのは計り知れないものがある。
ガンの治療法も医学的に確立していない現状では、「気」で治したり、思いこみで治したり、なにやら前時代的な感じもするけど、それも1つの方法なのだ。
(だから怪しい宗教にすがったり、得体の知れない健康食品を高額で購入したりする人が後を絶たないんだな……)
うーん、少し元気が出てきた。次は闘病記を読みます。
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| 2006/8/22 |
評価 A |
| がんの時代を生き抜く10の戦術! |
絵門 ゆう子ほか |
三省堂 |
<内容>
1章 座談会 患者が変える、医療者が変える
2章 インターネットが、がんとの闘病を変える!
3章 あなたの生き方に合った治療を決めるお手伝い 〜医療コーディネーターに相談しよう
4章 対談 良い病院を選ぶには? 〜「病院ランキング本」をランキングする
5章 「がんのガイドライン」の正しい読み方
6章 対談 今、正しい抗がん剤治療を受けるには?
7章 賢いがん患者として手術を受けるには?
8章 患者と変えるがん病院、がん医療 〜患者の視点をがん医療に
9章 対談 日米がん治療比較 〜アメリカに学ぶ点は?
10章 座談会 進行するがんとのつきあい方 〜明日を信じて生きるために
母親のがんについてですが、今年の3月に切除し4月に退院したばかりなのに、もう再発。
あまりの衝撃に、がんのことをもっと勉強しようと思って、買った本です。
父親は2回がんにかかり、母親も2回目、なのに、全然この病気のことを私は知らなかった。
医者に診せ、医者の言う治療を受ければ治るものだと思っており、この私自身の受け身気質が、今年春の母親の入院時に不満として蓄積していったこの原因なのかも、とも思った。
本の中に、患者が船頭で医療者はサポートだという表現が出てくる。
そのとおりにできるとはとても思えないけれど(専門知識は無いし、わからないことだらけ)、言いたいこと、聞きたいことは遠慮しないで聞いた方がよいのかも。
母親の病状は、まだ表に出ていないけれど、「再発」がどのくらい危険な状態なのか、この本を読むことで以前よりもよくわかったような気がする。
根治の可能性はかなり低い。あとは、死んでしまうまで、どのくらい生き延びられるか。
ただの延命ではなく、健康な時と同じように日常生活を送ったり、心から明るく笑える日を送れるかは、がんという病気といかに共存して行けるかにかかっていると思った。
春の大腸ガン入院の時とは、これからは大きく異なることだろう。
抗ガン剤の影響はまだ出ていないが、28日で1クールであり、どの程度ガン細胞にこの薬が効くのかによって、今後の治療法もかわってくると思う。
私はちゃんと母を支えることができるだろうか。
本当はこの本を母親に貸して、二人でこの病気について同じ認識を持ちたいと思っていたのだが、「再発」になるとどんなに危険なのかということが、前向きに考えると言った母の気持ちをそぐのではないかと思い、貸すのをやめることにした。
この本のおかげで、今母親が飲んでいる抗がん剤がどのような種類のものか、分かった。
ちなみに「ロイコボリン」と「ユーエフティーE」というのを飲んでいる。
両方とも消化器がん等に効く薬で、代謝拮抗剤らしいです。
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| 2006/8/16 |
評価 A |
| コーラルの嵐 〜デルフィニア戦記7 (再読) |
茅田砂胡 |
中公Cノベルズ |
国王に押しかけ愛妾出現。王女にタンガの皇太子との縁談。
日頃は剛胆なウォルも無敵のリィも敵国の策略を知って激怒した。
この事態に対抗すべく国を挙げリィとウォルの婚姻が敢行される。
だが、厳粛な式の最中、タンガから宣戦布告が届けられた。「剣を取れ!」国王の大音声が響きわたる。
デルフィニア戦記7巻。
「大鷲の誓い」で、いろいろなことを忘れており、かなり浦島太郎になっていたことがショックで、「デルフィニア戦記」を再読することにしました。
だけど今さら1巻から全部読むのも勇気がいるもので、ひとまず、ナシアスの奥さんが初登場の時から読んでみようか、と。
で、7巻を読んだのですが、……すごい、私は本当に忘れている!!ということを再認識。
これは、ますます読み続けないと。
しかし、ナシアス、本編では影が薄いなぁ。
再読してみて思ったことは、やはりこの作品、世界観も面白いけどキャラが最高ですな。
何度吹き出しそうになったことか。これは不朽の名作だと思います。続きも読みたいです。
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| 2006/8/12 |
評価 A(S寄り) |
| 大鷲の誓い 〜デルフィニア戦記外伝 |
茅田砂胡 |
中公Cノベルズ |
大華三国の一角、デルフィニア。彼の地に二人の若者がいた。
一人は王国を代表する大貴族であり国王の縁戚でもある筆頭侯爵家の才気煥発な12歳の嫡子。
一方、身分では比べものにならぬ地方貴族の子息ながらも、天才的な腕を持つ17歳の剣士。
国王崩御の混乱の陰で彼らは戦う。未来を掴むそのために。
(カバーより引用)
やはり「デルフィニア戦記」は面白い!
物語が完結して10年近く経ち、なんで今頃外伝が出るんだ、と思いつつも店頭で発見するやレジに持っていってしまったのですが、買って良かった。
内容はバルロとナシアスの出会い編でした。
まだまだ若い時分の二人の育った環境や性格がよく分かります。で、内容もなかなか読ませます。
だけど読みながら驚愕したのですが、私は結構忘れていて、この人誰だっけー、なんて記憶を辿っていました。
特にこの外伝の中で、レヴィン夫人という女性が登場するのですが、私はてっきりレヴィン夫人はナシアスの後の奥さんだと勘違いしていて読んでまして、でもおかしいなーおかしいなーと思い途中で確認したら、ナシアスの奥さんはまったくの別人でした。
なんか似ている気がしたんだよな……。ごめんねナシアス。
私もいい加減だ。バルロの奥さんもどんな人だったか忘れていたし……。いかんいかん。
大好きな本の1つに「デルフィニア戦記」を挙げているのに、この体たらく。しおしお。
「暁の天使たち」シリーズ以来、茅田さんの最近の著作からはすっかり縁遠くなってしまっていますが(だってなんか、過去作のキャラを登場させて絡ませてるだけでストーリー性が感じられないんだもん)、「デルフィニア戦記」の世界観を変えずに書かれた作品は面白いな、と。
もしまた外伝が出たら買います。
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| 2006/8/7 |
評価 A |
| 友 FELLOW 硝子の街にて22 |
柏枝真郷 |
講談社X文庫white heart |
2002年3月11日。半年前に崩壊した二本のタワーが漆黒の闇に甦った。「光の追悼」である。
感無量の想いで眺めているノブに、東京にいる父・泰行から緊急の電話が入った。
祖父が危篤だという。ノブはすぐに東京へと向かった。
その夜、警察無線を使った若い女性のヘルプコールが入り、シドニーは現場へと急行する。
「硝子の街にて」シリーズ、完結。(紹介文より引用)
さわやかなラストだー。22冊も続いたながーいお話もこれで完結。
本当にゆるやかに時間が流れ、登場人物が少しずつオトナになっていく様子がじわじわ伝わってくるような話だった。
キャラクターの誰もがニューヨークに実際に住んでいるかのような、しっかりとした設定が生きていた。
惜しむらくは、どういうわけか数冊続けて読んでいくと途中で飽きてしまうことかなあ。
原因はいまひとつ分からないけれど、それがもったいないような気がする。
「硝子の街にて」も完結したことだし、これからは柏枝さんは「Partner」1本で行くのかな。
あれもゆるやかに時が流れるような話だしなあ。そのゆるやかさが良くも悪くもあるのかもしれないなあ。
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| 2006/8/2 |
評価 A(B寄り) |
| 暁 SUNGLOW 9.11その後 硝子の街にて21 |
柏枝真郷 |
講談社X文庫white heart |
九・一一から半月が過ぎた。グラウンド・ゼロはまだ燃えている。
瓦礫の亀裂から煙が立ち上っているのだ。炭疽菌騒動も起き、NYは閑散としていて、スカイトラベル社も閑古鳥が鳴いている。
そんな状況を変えようと、ノブはある提案をする。一方、シドニーが担当した事件には、テロで受けた精神的な疵痕がまざまざと残されていた。
そんななか、スティーブの所属する第十九分隊が閉鎖されるという噂が流れる。
(紹介文より引用)
読み終わって数日経っているため、どうも感想が希薄。
この人の本は、数冊連続で読んでいくとだんだんイイコチャンな部分が気に入らなくなっていく。
この巻は消防士スティーブが、911テロで多くの仲間を亡くし、市民救助になすすべもなかったことにひどく傷つき、自分自身の意義を模索してぐるぐるしていた前巻・前々巻の終章のような話で、内容的にすごくいい話だと思うのだけど、今ひとつ心に響かなかった。どうしてだろうなあ。
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| 2006/7/30 |
評価 A |
| 悼 SORROW 9.11その夜 硝子の街にて20 |
柏枝真郷 |
講談社X文庫white heart |
九・一一の夜。宵闇のなかで、崩落したツイン・タワーはどす黒い煙を吐き続けている。
ロウア・マンハッタン一帯が停電する中、スティーブは同僚とともに懸命の救助活動を続けた。
災害発生から七十二時間、いわゆる"黄金の七十二時間"にどれだけの人間を救えるのか?
ノブもシドニーも、互いの安否を気遣いながら、それぞれの仕事に立ち向かう。
(紹介文より引用)
もう19巻から続けて読みふけっております。
前巻を読んだ時には、この事件の詳細を忘れていたことに罪悪感を覚えたのですが、この20巻になってくると、おそらく私は情報を仕入れていないな、と。
つまり、消防士達の追悼式の話をまったく知らなかったのです。(日本でも報道されたのでしょうに)
警察官や消防士が市民から感謝されることで、逆に重荷になっていく様子がよく描かれていると思います。
相棒だったアンディに庇われて、アンディが死に、生き残ったスティーブの辛さは、どれだけのものだろうと。
そんな状況の中で、多くの市民から「あなたは私たちのヒーローです」のように讃えられても余計に辛いだけだろうなと想像します。
ある意味、このシーンのために、スティーブという消防士キャラを登場させたのだろうか、このシリーズ。
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| 2006/7/24 |
評価 A |
| 風 BLOW 9.11その朝 硝子の街にて19 |
柏枝真郷 |
講談社X文庫white heart |
二〇〇一年九月一一日。私たちは決してこの日を忘れることができないだろう。
空はどこまでも高く、蒼く、爽やかだった。
前夜、ささいな喧嘩をしたノブとシドニーの目に映ったものは、紅蓮の炎を上げるツイン・タワー。
NY消防局のスティーブはシフト明けだったが、出動命令がだされるやいなや、ビルへ向かって飛び出していく。それぞれの九・一一が始まった。(紹介文より引用)
人間の記憶というのはおそろしい。
これほどの大きな事件を、それもほんの5年前なのに、ほとんど覚えていなかった……。
すみませんと謝っても仕方ないけど、やっぱり謝ってしまいたい。ツインタワーに旅客機が突っ込んだことしか覚えていなかったのでした。
ニューヨークに行ったこともなかったし、それほど思い入れのある街でもないので、ニュースをぼうっと見ていたのかも知れないです。
だけどこの小説のように、ニューヨークで生活をしている人、旅行で観光に来た人など、等身大の視点で描かれていると、なんだか本当にやりきれない。
地震や洪水などの天災もかなりやりきれないけれど、テロのような究極の暴力行為は、もうどうしたらいいか、本当にわからない。
「テロに屈しない」と発言していた人が居て、それはその時頼もしく思えたし、実際私もそう思ったけど、だけどその後の「報復」は私の望むものではなかった。
以前見た映画「華氏911」を思うと、本当に胸が痛いです。このあとこの小説は数冊続くので、いっそのこと一気に読んでみようかと思います。
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| 2006/7/21 |
評価 A |
| 生まれいずる者よ 〜金の髪のフェンリル |
榎田尤利 |
講談社X文庫white heart |
革命の象徴であり、虐げられる人々の希望の星である『金の狼』フェンリルは、白の聖者であるタウバを師として日々の鍛練を重ねていた。
そんなある日、シティとDエリア、ふたつの世界の統合を目指していたマーロン博士の死という悲報と共に、フェンリルに遺言が残されたことが知らされる。
遺言を求め旅立つフェンリルたちは、やがて驚くべき事実を目の当たりにすることになり―。
「金の髪のフェンリル」シリーズ2冊目。(シリーズ全体としては6冊目)
(紹介文より引用)
だんだん面白くなってきた。サラ主役よりフェンリル主役の方が面白い。
だけど、仕方ないけど、主人公にとって都合がよすぎる展開は気になるところ。
ずいぶん簡単にシティに入れたなあ、と。もちろん忍び込まなければ話にならないのは分かるけど、あまりにも簡単に教会に侵入できて、誘拐されたソナムにも会えて、簡単に遺言もきくことができて、ちょっとスムーズすぎる。
でもまあ、遺言は、敵にも当然盗聴されているんだよね。だから「シャーマンはどこだ」ってサラが脅されているんだよね(「おまえが世界を変えたいならば」より)。
この2人目のシャーマンがソナムのことで、鍵はユージン・キーツの赤ちゃんのことじゃないのか?と思うんですが。
次巻ではフェンリルとサラが出会ったところからスタートするようなので(ようやく2つの流れが1つになった)、楽しみです。
ユージンの懐刀であるセシルは、たぶん位置的に私の好みだと思うんだが、あんまり好きではありません。いまひとつ何かが足りない。
むしろタウバが好みです。わかりやすいですが。
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| 2006/7/16 |
評価 A |
| 沙漠の王 〜金の髪のフェンリル |
榎田尤利 |
講談社X文庫white heart |
革命の象徴であり、虐げられる人々の希望の星である『金の狼』フェンリルは、沙漠でシティの者たちに攫われたベドウィンの女たちを助け、沙漠を統べるバダウ族の存在を知る。そこへバダウの白の聖者タウバが、王の言葉によりフェンリルを迎えに現れた。
白の聖者は人々を光へ、黒の聖者は人々を闇へ導くという……。
タウバと共に沙漠へ赴いたフェンリルは、夜な夜な黒の聖者ナフスの誘惑に苦しむことになり!?
「金の髪のフェンリル」シリーズ1冊目。(シリーズ全体としては5冊目)
(紹介文より引用)
いやー、まさか時系列が異なっているとは思っていなかったので、読み始めて驚いた。
この本は「神を喰らう狼」の続編に当たる本で、先に刊行されている「隻腕のサスラ」よりも時間的に前に当たる。おもしろい。
マーロン博士と、記憶封印前の子供時代のサラが登場。
サラのキャラがまったく異なっているのだ。こんな子供だったのか。と、発見することも増えてきた。
が、なーんといっても、この本のヒットは、新キャラ・タウバです。素敵です。
しれっととぼけたことを言ったり、言いにくいことをずけずけ言ったりするキャラクター。
でも頼りになるし、二重人格なのもよいです。
サラ主役の「神話の子供たち」シリーズよりもこっちの方が私は好きです。結構はまって読んでしまいました。
 |
| 2006/7/11 |
評価 A |
| おまえが世界を変えたいならば |
榎田尤利 |
講談社X文庫white heart |
「私の存在意義―それは、きみを守ることだ」。
フェンリルからの連絡を得るため、エリアスとふたり、欲望の渦巻くサブシティ・ヴェガスを訪れたサラ。
そこではフェンリルを救った女戦士キナをリーダーとしたレジスタンス組織が、サラたちを導いてくれることになっていた。
だが、そこで待ち受けていたものは、裏切りとおぞましい人身売買だった!?
運命の少女サラに、いま、新たな扉が開かれる。
「神話の子供たち」シリーズ3冊目。(「神を喰らう狼」を入れると4冊目)
(紹介文より引用)
疲れた頭に軽い読み物を、と思って手に取った本。
前巻「片翼で飛ぶ鳥」からすっかりご無沙汰でしたが(どうも主人公が気に入らないと敬遠気味になってしまう)、「おまえが世界を変えたいならば」はまあまあ楽しめ
た。
エリアスが不遇だったけど、サラといい雰囲気になってよかった。(しかしサラは相変わらずあまり好きになれない)
そして、この巻でサラの世界とフェンの世界がようやくつながった。今後の展開も楽しみ。
でも、追うものがクローンじゃあ、どうも勝ち目がないというか……。
完全なる勧善懲悪は二極化して単純すぎてつまらないけど、主人公側が守ろう救おうとしている者達が敵側にまわる展開というのは、はらはらする。
このあとどうなっちゃうんだろうな。
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| 2006/7/3 |
評価 A(B寄り) |
| バッテリー X |
あさのあつこ |
角川文庫 |
「何が欲しくて、ミットを構えてんだよ」──天才スラッガー門脇を有する横手との試合を控え、練習に励む新田東中。
だが、巧と豪のバッテリーは、いまだにすれ違ったままで…? 「バッテリー」シリーズ第5巻。
(紹介文より引用したけど、意味わかる?)
4巻の感想にも書いたけど、本当に不思議な吸引力のある本。
とりたてて起承転結があるわけでもなく、野球好きの中学生の野球にかける情熱?を野球部を通して描いている作品。
とくに試合風景を描くスポ根ではなく、本当にただ中学生の日常を描いているだけ。なのにかなりの集中力で読んでしまう。
読んでいる間、面白いと思ってしまう。でも読み終わって我に返ると、なんで面白いと思ったんだろう、と自問自答してしまったりする。不思議。
そして次巻に期待してしまうのだ。
この作品は全6巻なので、5巻はラスイチなわけです。
なのに、このまったりとした展開。
そして主人公2人(バッテリー)のまったりとしたつかみ所のない関係。
評価にBをつけてしまったのは、読後の空虚感のためです。
4巻初登場の瑞垣はとても気になるキャラでしたが、5巻でも期待通りに動いていました。屈折したブラックな感じがとってもいいです。
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| 2006/6/28 |
評価 B(A寄り) |
| ダ・ヴィンチ・コード 上下 |
ダン・ブラウン |
角川書店 |
ルーヴル美術館のソニエール館長が異様な死体で発見された。
死体はグランド・ギャラリーに、ダ・ヴィンチの最も有名な素描“ウィトルウィウス的人体図”を模した形で横たわっていた。
殺害当夜、館長と会う約束をしていたハーヴァード大学教授ラングドンは、警察より捜査協力を求められる。
現場に駆けつけた館長の孫娘で暗号解読官であるソフィーは、一目で祖父が自分にしか分からない暗号を残していることに気付く…。
(紹介文より引用)
上巻の終盤、俄然面白くなった。そこに至るまでが長い(笑)。
まどろっこしい状態が延々と続く。まあそれも長編の宿命か。
上巻の終盤に、キリスト教と異教の話が登場するようになって、その辺りから下巻の中盤まで楽しく読めた。
ラングドンの友人リー・ティービングはくせがあって面白いキャラで、結構気に入っていたので、下巻の展開が気に入りません。
なんかTBSドラマ「輪舞曲」を見ているような気分になりました……。いくらなんでもそりゃないでしょう〜〜!って感じ。
まるですっきりしません。
そういうこともあって、作品全体としては評価が微妙です。
上巻の終盤、下巻の序盤はとっても面白かったのに残念。
安易にラングドンとソフィーがくっついたのもお定まりのような感じがするしなあ。
まあ、「最後の晩餐」の解説とかキリスト教の解釈とか、あまり馴染みの無いことが書かれてある点については、興味深く読んだのですが。
Nさん、貸してくださってありがとうございました!
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| 2006/6/11 |
評価 A |
| 心洞 〜Open Sesame〜 (再読) |
五條瑛 |
双葉社 |
家出少女エナは、新宿でキャッチガールをしている。ヤクザとつかずはなれずの付き合いを保ちながらふらふらと自由に生きるヤスフミと一緒に暮らしているが、恋愛関係ではない。だが二人でいる時間は何にも代え難い物だった。
ヤスフミは、根岸会の勝俣というヤクザから、カンボジア出身の鳩という男を捜してくれ、と依頼される。鳩は根岸会だけでなく、北京やタイの組織からも追われている男だった。
「R/evolution」シリーズの3冊目。
革命シリーズの5冊目である最新作「愛罪」を読んだあと、どうしても再読したくなって「心洞」を読みました。
前に「断鎖」(シリーズ1冊目)を再読した時にも思ったことですが、この本は、何度読んでも面白いです。
というか、再読すると発見があります!! これは声を大にして言いたい。
初読のとき、私はこの本の評価を「A(B寄り)」にしているんですが、何を読んでいたのか、と過去の自分の頭をはたきたい気分でした。
確かに1冊目、2冊目と比べると、中心となる人物がエナとヤスフミという若者になり(新キャラ)、インパクトが薄い感もあるけれど、背後で蠢く様々な人々がものすごい閃光を放っているし、なんといっても4冊目・5冊目で明らかになった事実や人物が、もう既に3冊目に登場している! これには驚きました。
4冊目・5冊目ですっかりジゴロの役回りを演じていたルポライターの立石亘が、3冊目には「この辺を調べているルポライター」として登場していました。
いや、本人は出ていないし、名前も出ていないんだけど、ハーシーが名刺をもらったと言っていたり、ハルカが電話をかけていたり、びっくりです。
私は4巻の新キャラだと思っていたのです。
それから、ドゥルダ。5冊目で、ドゥルダはヒマラヤ地方の村で少女の頃に生き神にされていた事実を語りますが、3巻にもその話は出ていたのですね!
知らなかった……。しかも、エナに語っているではないですか。
そして、エナはドゥルダの館のことを、「阿片窟みたいだ」といっているのです。な、なんと!!です。伏線だったのかー。
これは、巻がもっと進んで、更に既刊を再読したときに、もっともっと伏線が見つかるかも知れないです。すごい作品です。
それから、ハーシーはもう出会った最初からエナには優しいんですね。一目惚れだったのかもしれない。
それにしても、私は全然知らなかった。(知らないという表現は正確ではないな。忘れていたというべきか)
エナはサーシャにもリョウジにも会っているのですね。
そして、エナの過去(父親との密室でのできごと)も3巻で既に明らかにされているし、サーシャは知っているし、うーん。
このシリーズは侮れない。6冊目「純棘〜Thorn〜」を心待ちにしています。
 |
| 2006/5/31 |
評価 A |
| 野村ノート |
野村克也 |
小学館 |
名将・野村克也はダメ集団をいかにリセットし、勝者へと再生したのか。
水面下で様々な野球選手の間で知れ渡っている「野村の考へ」に加筆訂正をして出版したそうです。
興味深かった! これまで野村監督にはなんの興味もなかったが、この本を読んで三木谷が楽天の監督に野村を招致した理由もわかるような気がする。(だけど田尾は可哀相)
野球をただ外側から見ている私には、こういう、野球に、しかもプロ野球の世界に携わった者にしか書けないような裏話や駆け引きめいたもの、いわゆる野球理論などはとても新鮮で興味深く読めた。
しかし、読めば読むほど、横浜ベイスターズってダメダコリャ、って感じ(笑)。誰かあの球団をどうにかしてくれー!
この本は選手の実名を挙げて様々なエピソードを書いてあるから分かりやすいけど、逆に選手にとっての名誉毀損とか大丈夫なのかとか思っちゃった。
野村くらいになると別に何もされないのかも知れないが。
(横浜ベイスターズの選手で文中に登場したのはクルーン、牛島監督、村田くらいかな? さして出てこないし、エピソードも特にない……)
Fさん、貸してくださってありがとうございました。
 |
| 2006/5/27 |
評価 A(B寄り) |
| 陽炎ノ辻 〜居眠り磐音 江戸双紙 |
佐伯泰英 |
双葉文庫 |
豊後関前藩の若侍、坂崎磐音、河出慎之輔、小林琴平の3人は、長の江戸勤番をおえて郷里へ戻ってきた。
剣を学び、学問を得、藩政改革に着手すべく意気揚々としていた磐音だったが、帰郷したその夜、大変なことが起きていた。
河出が不在中に妻が不義理をしたとのかどで妻を手打ちにしたというのだ。
河出の妻は小林の妹であり、妻を手打ちにしたので亡骸をとりにこい、と言われた小林は怒りに我を忘れ河出を斬る。
そして、磐音は藩命により小林をその手にかけたのだった。
幼い頃から仲の良かった3人であったが、たったの一日にして関係が瓦解する。磐音は脱藩し、ひとり江戸へ向かう。
佐伯泰英さんの時代小説はなにやら驚異的に売れているようで、本屋さんでいろんなシリーズの平積みを見ますのです。
で、試しに買ってみたのが居眠り磐音シリーズの1冊目です。
なるほど、展開が早く映像が目に浮かびます。陰謀ありチャンバラあり人情ありで、なかなか面白い。
序盤の、前途洋々とした若侍3人があっという間にとんでもないことになってしまったのには驚きましたが、どうやら次巻以降、磐音は故郷・関前藩と関わっていくみたいで、続きを読んでみたいような気もします。
ただ、1冊目は長いシリーズの序盤だからなのかもしれないですが、ちょっと話の流れが私には厳しい。
主人公がスーパースターなのは私の性に合わないのです。
いくら友達を殺したという過去があるからといっても、こんなになんでもかんでも出来てしまっては、共感も共鳴もなんもないのです。
 |
| 2006/5/25 |
評価 S(A寄り) |
| 愛罪 〜Uxoricide〜 |
五條瑛 |
双葉社 |
戦前からの由緒ある大企業・長谷川製薬の社長は、愛人に子供を産ませては引き取っていた。
3番目の子である満夫は、いくつかの子会社を任されていたが、生き別れになった母親の行方を捜していた。
父は、子供は引き取るが愛人とは一切縁を切り、暮らしに困らないように金だけを渡しており、子供とは会わせないようにしていたのだ。
満夫は調べるうち、自分の母親も父親の本妻(故人)も、最近引き取られてきた弟の母親も、すべて信州の病院に入院していたことを知る。
五條瑛の革命シリーズ、第5弾。
革命シリーズもとうとう5冊かぁ。ちょうど半分ですね。
何度も言っていますが、私は五條さんの文章が大好きで、のめりこむように読みました。
雨の日は本が汚れるので別の本を読んだりしていて、思いの外時間がかかってしまいましたが。
戦前・戦中に中国で阿片で一儲けして、現在は大企業である長谷川製薬が登場。
もうこの設定だけでかなり楽しいんですが、占い師のドゥルダの本当の顔も見え隠れし、ただのお家騒動のようでいて、すべてが仕組まれた歯車の一つ、という仕掛けが実に実に楽しいです。
最終的勝利者はuk-Xだと思っていたのですが、こうやってみていくと、どうやらuk-Xもただの歯車?なんて思ってしまう。
エナの立場が今ちょっと微妙ですが、ヤスフミというアキレス腱が存在する以上、彼女も時間の問題なのかな。あ、でも祖父が和田だから、しばらくは生きているか。
ハーシーがあっけなく死んでしまい可哀相。
なんか、すみれも最後死んでしまうのかしら。
全貌がだんだん見えてきた(ような気がする)ので、また既刊本を再読したいです。
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| 2006/5/4 |
評価 A(S寄り) |
| 幻夜 |
東野圭吾 |
集英社 |
借金まみれの水原製作所の事実上の倒産を苦に自殺した父の、通夜を執り行った日の明け方、阪神淡路大震災が起きる。
水原雅也は、文字通り柱が倒れ、残骸と化した工場の屋根の下敷きになった叔父をみつける。
叔父は通夜のために雅也の家を訪れていたのだが、実際にはかつて父に貸した金を返してもらうために保険金を狙っていた。
雅也はふと魔が差し、叔父を殺害し、借用証書を処分する。
その様子をみていた見知らぬ女性・美冬は、雅也を助け、震災のどさくさに紛れて「二人の幸せのために」東京へ行こうと誘う。
同じ作者の「白夜行」という作品によく似た作品。「白夜行」の兄弟といってもいいかもしれない。
若い男女が共謀して、女性の社会的成功を男性が影で助ける、という設定は同じなんだけど、二人が純粋な愛情で結ばれていた「白夜行」に対して、「幻夜」は利用する側とされる側の関係だったこと、それから最後に罪悪が裁かれなかったことの2点が大きく違います。
「白夜行」は泣くほど感動したんだけど、「幻夜」はつらかった。
男性(雅也)の純情が切なく愚かしく、女性(美冬)が憎らしく、最終的に美冬が勝利して終わってしまったので、ものすごく消化不良。
悪は滅びないのか? 真の悪人は是非滅んで欲しい。
ラストシーンのせいで、(S寄り)を付けるか付けないか本気で悩んだのですが、夜も昼も忘れるほどのめり 込んで読みふけったので、付けることにしました。
それにしても、美冬むかつくわー!
Fさん、貸してくださってありがとうございました!
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| 2006/4/22 |
評価 A(B寄り) |
| PARTNER 5 |
柏枝真郷 |
中央公論社Cノベルズ |
それぞれに夏休みを満喫していたセシルとドロシーだが、復帰早々、銃撃事件に巻き込まれる。
セシルの古巣である六分署の刑事が撃たれているところへ行き会ったセシルだが、使われていない精肉工場では、10代の少年が撃たれ、事切れていた。
ドロシーは自らの射撃の腕を嘆き、密かに練習を始める。
こう言ってはなんですが、さすがに同じシリーズを5冊連続で読むと、いい加減に飽きてくる。
既刊もここまでだし、次巻を読むまで時間が開きそうでちょうどいいかも。
今回の話は、不運の重なった末の事件なので、少し可哀相だった。
だけど、その気の毒さのせいなのか、ページがあまり進まなかった。
登場するキャラクターが、いまひとつのめり込めないのも進みの遅い理由の一つかも?
私はやはり、フェイが好きなので、セシルとフェイが時間がかかってもいいから上手くいって欲しいなと思うのです。
今は愛していなくても、お互いを思いやる心しかなくても、今後変わっていくかもしれないじゃないですか。と思うんだけど。
だーけーどー、果てしなく不可解なエピローグ。セシルー……きみはなにをしているんだね。
ドロシーを私はそんなに好きではないので、余計に、共感できないのかもしれないです。
ドロシーの恋人であるオーガストも、あまりに出来すぎなキャラなので、「あんたの本音はどうなんだ!!」と肩を揺さぶりたくなりますし。
皮肉屋で斜めになっているロイドとか、うちに暗いわだかまりを抱えつつ表面は爽やかなフェイが好き。
ドロシーは表も裏も同じで、ただ明るかったり素直すぎたり自分の考えを人に押しつけたりして、そのくせ乱暴者なのでダメなのです。
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| 2006/4/13 |
評価 A(B寄り) |
| PARTNER 4 |
柏枝真郷 |
中央公論社Cノベルズ |
セシルとドロシーが覆面パトカーを運転している時、突如信号が一斉に消え、目の前で交通事故が起きた。
ニューヨークを襲う大規模な停電に、2年前の9.11テロを思い出す二人。
だがそんな中で、交通事故の加害者ビリーは病院に搬送された後、逃亡。二人は車の持ち主の家に行くなど捜査を続けるが、翌日、ビリーが別のビルのエレベータで死体となって発見された。
ストーリーはこれまでの4冊の中で一番、すんなり読めた。
交通事故と、ニューヨーク中が停電になるという大騒動と相俟って展開する殺人事件。その落ちも、至る理由も納得できた。(ただ、なんで今死ななくてはいけなかったのかは腑に落ちないけど)
何年もの間ずっとずっと自分を責め続け、亡くしてしまった後輩の死を、乗り越えることができなかった哀れなビリーの描写が良かった。
だけど、ストーリー以外の部分で、本題であるセシルとドロシーの関係ですが、ますます泥沼ですな。
仕事上のパートナーなんて好きになっちゃいかんよー。そりゃタブーでしょうが……。いつも一緒にいなきゃいけないのに、ドロシーはラブラブの彼がいるのに、そりゃ苦しいわ。あーあ馬鹿だねえ、と思いながら遠くから二人を見ているため、あまり共感などできない。
フェイが可愛い。いい子だ。ドロシーよりフェイの方が好き。セシルもそのままフェイにしちゃえよ。
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| 2006/4/9 |
評価 A(B寄り) |
| PARTNER 3 |
柏枝真郷 |
中央公論社Cノベルズ |
殺人事件の資料を取りに所轄分署へ向かう途中、一人で歩いている少女をみつけたセシルとドロシーは、少女を家へ送り届けることにした。
聴けば、友達がコンタクトレンズを使っていて、レンズを保存するために食塩水が必要だと思いこんだ少女・アニーは、塩を買いに行く途中だという。
セシルは、コンタクトレンズの保存には食塩水ではだめだと教え、専用の保存液をプレゼントする。
アニーの友達を同じくらいの年の子供だと思っていた二人は、アニーの自宅で留守番をしていた男子大学生だと知って驚く。
2巻とちがって、ストーリーは分かりやすかったし、落ちについてもまあそういうこともあるだろうと納得もした。
だけど、B寄りなのはね、ドロシーの気持ちがどうも共感できないところです。
この作品のテーマ「男女の友情」について、だんだんその要素が見えてきています、第3巻にして。
どうやら二人がお互いに惹かれ始めているけど、仕事上のパートナーだし、公私混同するとろくなことがないし、ドロシーにはラブラブな彼氏がいるし、などと自制心が働いて、惹かれ始めているという事実に目をつぶってやりすごそうと、悩みかけているようなんだけど、それにしてもセシルの気持ちは分かってもドロシーには共感できないのだ。
だってドロシーにはちゃんと彼氏(オーガスト)がいるじゃないの。
長すぎる春だから、もうそれほど熱くないのかと思いきや、ラブラブじゃないですか。んー。
セシルのことだって、そんなに好きじゃないんでしょ?(少なくとも「好き」の意味が違うはず。勘違いするとも思えない) なのに、セシルが過去に何人も恋人が居たとか、若い頃複数の人と同時につきあったことがある等の話をきいて、「最低」呼ばわりはどうなの。
仕事上のつきあいならば、「ふうん」で済むと思うんだけど。これだとドラマにならないからか? でも不自然だよ。
一服の清涼剤はフェイとオットー(あまり出番無し)、ロイドですが。もう少し巻が進んで、もう少し二人の懊悩がよい方向に進むことを希望します。
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| 2006/4/4 |
評価 A(B寄り) |
| PARTNER 2 |
柏枝真郷 |
中央公論社Cノベルズ |
参考人として事情聴取しようとしていた男が、急に車に乗って逃亡し、セシルとドロシーはニューヨークのど真ん中でカーチェイスをするはめになる。
どうにか捕らえて事情聴取を行ったが、釈放後、その車から十万ドルが出てくる。
再度、男のところへ行って確かめると、十万ドルは誘拐の身代金だ、とのことだった。
にわかには信じられない話に、二人は調査を進めていく。
顔合わせの1巻から1ヶ月経過。
お互い、相手の言動が癪にさわったり、それを我慢し、あるいは我慢しきれなくなり、ぎくしゃくする。
ドロシーが何かを質問すると、それはセシルにとってふれて欲しくない部分だったりして、「答えたくない」と拒絶されるのだ。
だが、ある事件を通じて、セシルは過去の一部をドロシーに打ち明ける。
というわけで、セシルの過去が少し明らかになり、それに応じてキャラの深みが増す第2巻。
それはいいんだけど、殺人事件の流れは今ひとつ……。硝子の街にてシリーズにもそういうのがあったなあ。メインキャラの深部掘り下げは面白いんだけど、1冊の本としては釈然としないって奴。
全体としては、ラストのセシルのエピソードがかなり印象深く、もうそれで評価Aか?とも思ったんだけど、理性が働き、B寄りにしました。
この分ならおそらく第3巻はドロシーの掘り下げがあることでしょう。
オーガストとセシルの初対面も面白かったけど、このシチュエーションはちょっと生々しい。
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| 2006/4/2 |
評価 A |
| 愛と死をみつめて(ポケット版) |
河野実・大島みち子 |
大和書房だいわ文庫 |
軟骨肉腫という難しい病気で入院している大島みち子は、同い年の河野実(まこと)と知り合う。
昭和37年から38年にかけて、当時20歳(〜21歳)のみち子がマコトと文通し、手紙を通してお互いに正面から向き合い、愛情を深めていった実話を、二人が交わした手紙で綴る書簡集。
この書簡集が昭和39年に出版されベストセラーになり、テレビドラマや映画になって一大ブームを巻き起こしたそう。
そして、その書簡集を再度編集(冗漫なところや、二人に直接関係の無いところを割愛)したものの文庫版。
3月17日〜18日にテレビで放映された、広末涼子の「愛と死をみつめて」(ドラマ)がものすごく良かったので、その勢いで原作本を買ってしまいました。
ああ、我ながらなんていうミーハーな。
原作は、二人の書簡集でした。(ノベライズではなかったのだ)
こうやって読んでみると、手紙ってすごいなと思います。
実際にこの文章で、手紙が寮と病院を行ったり来たりしていたんだよな、と想像すると、不思議と切なくなります。
小説とちがって、日記とも違って、手紙は宛先が1名であり、その相手に向かって自分の心情を吐露したり、少し強がってみたり、弱いところをさらけ出したり、本当に素直な表現物。
この二人の手紙は、特に、東京と大阪に離れた二人(しかも彼は学生)がそうそう会うこともままならず(新幹線もまだないし)、遠距離電話も高額でままならず、ほとんど唯一の通信手段ということもあって、実に胸に迫るものがあるのです。
真剣な語りがあり、普通の若者らしい軽口もあり、文章なだけに赤裸々に語られる愛情を伝える言葉だったり、自分の将来を語るキラキラしい思いだったり、いったいこの二人の絆(愛情)は、ほかの多くのカップルとどう違うというのか、何故二人が引き裂かれなければいけないのか、神様を恨みたくなるような、明るくて真摯な眼差しに、手紙を読んでいるこちらが涙してしまうのです。
こんなに短い期間に400通もの手紙を交わした二人。
顔の半分を失うことになる大きな手術に悩むみち子が、奮起して手術を受け、そのあと社会奉仕活動に自分の第二の人生を懸けようと思っている矢先、病気が再発してしまったときには、こちらがやるせない気持ちになりました。
マコトの手紙は病に悩むみち子を支え続けたけど、逆にみち子の手紙もマコトを励ましていて、彼女の病気が治って二人で新たな生活を送れればどれほどいいだろう、と。
書簡集はこの二人の愛情がメインですが、テレビドラマ(広末主演の奴)は、みち子の周囲の人物(マコトやみち子の両親、妹、兄、友達、主治医、病室が相部屋の患者等)をよくよく掘り下げてあって、むしろ、周囲の人たちの気持ちに共感し、ぐっと胸にせまる作りになっていました。
でもこの書簡集を読んで思うのは、本当にみち子という人は、明るくてちょっと気が強くて、茶目っ気たっぷりの魅力的な女性だなあと。
この時代の20歳の女の子って、言葉遣いがステキです。だいぶ大人っぽい。(だけど時々子供っぽくて、それがまた可愛らしい)
そういえば状況はまったく違うけど、私、6年生の時に周囲に誰も話をする人がいなくて、文通相手(一番多い時で20人くらい居た)からの手紙をとにかく心待ちにしていたことがあったなあ。なんてことも思い出した。
病床のみち子はさぞかし手紙を頼りにし、支えられたことでしょう。本当に言葉って暖かい。
原作を読んでよかったです。
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| 2006/3/30 |
評価 A(B寄り) |
| PARTNER 1 |
柏枝真郷 |
中央公論社Cノベルズ |
セシルは六分署からNY市警察本部殺人課に転属になった。
新しい職場での相棒は、ドロシーという名の女性刑事だった。顔は可愛らしいがとんでもなく気が強く、腕っ節も強い。
ドロシーは前の相棒から、女性だということで散々馬鹿にされていたらしく、セシルに対する高飛車な物言いはその影響もあるのかもしれない(と考えつつもセシルには癪に障っている)。
セシルが転属した日、バッテリーパークで死体が発見される。これが、二人がコンビを組んだ最初の事件となる。
柏枝真郷さんといえば、硝子の街にてシリーズ。
当該シリーズはニューヨークを舞台に、NY市警察本部の刑事であるシドニーと幼なじみのノブ(旅行会社勤務)の2人が事件を解決していく話でしたが、この「PARTNER」は、セシルとドロシーの2人の刑事が事件を解決する話、らしいです。
シドニーとノブはともに男性だけど恋人同士。セシルとドロシーは男女で、いまのところまだただの仕事仲間ですが、あとがきによると「男女の友情」がテーマのようなので、将来的には親友みたいな関係になるのかな。
ただ、この2つのシリーズは少し年が異なるだけで(2年くらい違うのかな)、同じNY市警本部殺人課、課長も同じキャプラン課長、事件の舞台も同じニューヨークとあって、読みながらかぶっていて面白い。パラレルワールドみたい。
殺人課にシドニーが在籍していると思うんだけど、ドロシーの科白によると「雲の上の人」らしいです。検挙率ナンバーワン? でしょうともでしょうとも。だから、これはおそらく後に登場することも充分考えられる。
こういう内輪受けみたいなお楽しみも、お遊びチックでいいかなー。
主役2人の出会い編としては、まあ読みやすくそれなりだったのですが、事件そのものはどうも不可解でもある。
硝子の街にてシリーズでも時々あるんだけど、ひっぱるわりに解決してみれば、「えー、動機ってそんなもの?」なんて思うこともある。この1巻もそうだった。
ただ、まったく犯人や事件のからくりが分からないので、ぐいぐい最後まで読ませてしまう吸引力はさすがというか。
事件の解決に関していえば、硝子の街にてシリーズは、ノブが第6勘でひらめいたことを、まわりくどく説明したり(説明しなかったり)して解き明かすので、読みながらストレートにわかりづらく、回りくどいというか、はっきり喋ってよ!!と苛々したりするんだけど、この「PARTNER」もどうやら同じかもしれないです。
気に入ったキャラは、セシルの従兄のロイド。(ニューヨーク大学工学部非常勤講師、兼、院生) 家事一切をこなし、アルバイトにもいそしむ働き者。性格も食えなさそうで、今後の動向に期待が持てます。
それから、セシルの元相棒のオットー。2メートル近い巨漢で、猿人風らしいです。
この2人の活躍に期待しつつ、次巻も楽しみ。
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| 2006/3/24 |
評価 B |
| アーモンド入りチョコレートのワルツ |
森絵都 |
角川文庫 |
<収録作品>
・「子供は眠る」ロベルト・シューマン<子供の情景>より
……従弟同士で別荘に集まり合宿のようなことをするのが、毎夏の楽しみだった。それが今年は去年までのように素直に楽しめない。原因は、中3の章の言動が鼻につくせいだ。だけど、章を怒らせると、来年から別荘に招かれなくなる。僕たちは章を怒らせないよう、決して章を追い抜かないよう、水泳や英語ができない振りをする。
・「彼女のアリア」J・S・バッハ<ゴルドベルグ変奏曲>より
……偶然音楽室で知り合った藤谷りえ子は、僕と同じ不眠症だった。同じ悩みを共有する者として、なんとなく連帯感のようなものを感じ、毎週火曜日の放課後、音楽室で会うようになる。そして話をするうち、藤谷はものすごく複雑な家庭環境だということがわかってくる。遺産相続争い、父親の不倫、母親の不倫、妹の家出、兄の反抗。ドラマ顔負けの境遇に同情していた僕だったが、それらが作り話だったことを聴いてしまう。
・「アーモンド入りチョコレートのワルツ」エリック・サティ<童話音楽の献立表>より
……私の楽しみは毎週木曜日、友達の君絵と一緒に絹子先生のピアノ教室に通うこと。あるとき絹子先生の家に、サティそっくりのフランス人のおじさんが居着くようになる。サティのおじさんと絹子先生と4人で過ごす木曜夜は、私にとっての大切な宝物。だけど、多くの父兄にサティのおじさんは不評で、ピアノ教室の生徒はどんどん減っていく。
タイトルはピアノ曲でなんとなく共通しているっぽいのですが、話はまったく異なる短編集。
3つの短編から成りますが、双方につながりは一切ありません。
で、私はこの手の話が苦手です。そもそも短編ってだけであまり好みではないのですが(連作短編は好き)、 こういう、教科書か何かに載りそうな正統派っぽい感じが、村山由佳風でもあり恩田陸風でもあり、なんにしても苦手です。
中学生や高校生が主人公だったり、周囲からはみだしている部分や心の暗部をもてあましたり嫌悪してみたり、とそうしたことに焦点を充てている小説は好きなはずなんだけど、こんな風に綺麗にされると、50メートルくらい引いてしまいます。なんでだ?
文章は読みやすいんだけど、うーん。
森さん、「DIVE!!」は良かったけど、……うーん。
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| 2006/3/17 |
評価 A(B寄り) |
| 重耳 全3巻 |
宮城谷昌光 |
講談社文庫 |
黄土高原の小国曲沃の君主は、器宇壮大で、野心的な称であった。
周王室が弱体化し、東方に斉が、南方に楚が力を伸ばし、天下の経営が変化する中で、したたかな称は本国翼を滅ぼして、晋を統一したが…。
広漠たる大地にくり広げられる激しい戦闘、消長する幾多の国ぐに。躍動感溢れる長編歴史小説全三巻。
(引用)
てなわけで、久ーしぶりに中国の歴史物を読んでみました。
上巻・中巻の面白いこと。
称は名君で、大人物であり、周囲の家臣達も能力の高いものが集まっていて、国もまだまだ小国だけど、発展途上というか可能性が見え隠れするのが面白い。
称や家臣たちの活躍により、小国である曲沃がどんどん力を付けていくのを、わくわくしながら眺めている感じです。
それが中巻で称が死んでしまい、息子・キショの代になってから、暗転します。
キショは若い美女・リキに騙され、よい家臣を殺害したり、どんどん自分の名を貶めていく。
内容的にはやはり、称の代が安心して読めていいんですが、(早くキショには死んで欲しいと強く思いつつ) 一方で読書の加速が付いたのは、キショがリキにまるめこまれた辺りからですねー。
だめだめな奴のだめだめな政治を、「だめだなーこいつは」と思いながら読んでいくのが楽しい、みたいな感じ。
そこには、主人公である重耳(キショの次男)が、いったいどんな大人物に成長し、どんな風に華やかに晋に返り咲き、立派な王になるのだろう、という大きな大きな期待があるから、キショの悪政を楽しむわけなんだけど、それがもう、この重耳ときたら!(ー_ーメ)
下巻に入って、重耳にようやくスポットが当たり、どうにかこうにか晋への凱旋に向けて動き出す、はずなんだけど、こんなに愚鈍な主人公がこの世にいるのかね、という感じで、まるで動きが悪いのだ。
ここまでキショの悪政を誇張して書いているならば、同じくらいのベクトルで重耳を鮮やかに描いて欲しかったよ。
上巻中巻があんなに面白かったのに、この下巻のつまらなさはひとえに重耳がよくないせいだと思う。
上巻も中巻も、キャラがいきいきとしていて歴史絵巻って感じだったのに、下巻になると重耳がただの愚鈍な奴にしか見えないのだが……。
上巻・中巻では未完の大器風だったから、どんな風に晋の君主として返り咲き、名君になるのかと期待していたので、余計にがっかりだ。
晋で君主になって良い施政を行いたい、という積極性がまるで伺えず、周囲の家臣にお膳立てされるようにして亡命先の国を出て、運が転がり込んでくるのをただただ待っているようにしか見えない!!
もっと積極的に動かないと全然感情移入できない。前2冊が面白かったのに、残念すぎる。
長男の申生は可哀相だったけど、申生の側近たちがより可哀相だった。
重ねて言いますが、上巻と中巻は読むに値します。
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| 2006/2/10 |
評価 B |
| つきのふね |
森絵都 |
角川文庫 |
女子中学生のさくらは親友の梨利とともに集団万引きのグループに入っていた。
だがタツミマートで失敗したさくらは捕まり、梨利は逃げおおせる。
この時から二人は口をきかなくなってしまった。
さくらはタツミマートで自分を見逃してくれた店員・智と仲良くなり、彼の家へいりびたるようになるが、智の様子がだんだんおかしくなっていく。
心を病んだ智を救うべく、さくらは奮闘するが。
「DIVE!!」の面影を求めていたわけではないけれど、まあ少しは期待して、同作家さんの本を買ってみましたが、……だめだった。
まず、女の子が主人公なのは読んでいてつらいし、誰にも共感できないし、ページを繰るのが結構苦痛でした。
中学時代の女子というのがどういう生き物なのか、自分のことも他人のことも生々しく覚えているけれど、実際もうあの時代には帰りたくないというのが本音で、読みながら心情を追う段階で、勝手に自分が拒否してしまうのでした。
深入りしたくないと思ってしまう。
その意味ではリアルに描かれているのかもしれない。
巻末の解説も、この作品については大絶賛だったし、ちまたの評価は高いのかもしれないが、どうもこういうのは。
恩田陸に通じるところもある。私の苦手なタイプ。
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| 2006/2/8 |
評価 A |
| バッテリー IV |
あさのあつこ |
角川文庫 |
原田の速球に惚れ込んだ横手二中(県内強豪校)の門脇が練習試合を申し込んだところで終わった第3巻(たしか)。
そのあと、実際に練習試合が行われ、原田は先発として横手二中の打者に対し、次々と速球を放る。
が、門脇を三振に仕留めた後、5番打者瑞垣の囁き作戦に翻弄された豪は、自分の力に自信が持てなくなりバッテリーが崩壊する。
相変わらず不思議な吸引力のある本だ。
だが話はちっとも進まず、それだけに心情を丁寧に追っているのかと思いきや、むしろ葛藤する2人の心情は敢えて書いていない。
その代わりに2人の周囲に、人をたくさん登場させて狂言回し的にどんどん動かしている。
ささいなことがきっかけですっかり話をすることができなくなった二人を、お膳立てして向かい合わせたのは、たくさんの他人(友人)なのだ。
まるで動かない当の二人は、思いをぶつけあうこともせず、結局そのまま本が終了してしまった。
こういう手法もあるのか。でもかなり掟破りのような。
今回登場したキャラで実に注目株なのは横手の3年生・瑞垣ですか。
吉貞と張るくらいおしゃべりで、そして頭の回転が速くて、たくさんの屈託を抱えたブラックな奴。気になるキャラではある。次巻に期待です。
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| 2006/2/4 |
評価 B(A寄り) |
| スポーツドクター |
松樹剛史 |
集英社文庫 |
高校で弱小バスケ部に所属し猛練習している夏希は、誰にも言えない秘密があった。
それは、きちんとした指導をされずに(顧問が社会科教師で練習は生徒任せ)、コンクリート直張りの体育館で無理な練習をし続けてきたことのよる膝の故障。
前十字靱帯の損傷である。
一部員として仲間と部活を楽しみたいという気持ちから部活を続けてきた夏希だったが、幼なじみの幸がスポーツクリニックに相談したことがきっかけで明るみに出てしまう。
靫屋(うつぼや、と読む)スポーツクリニックと関わることになった女子高生・夏希を主人公に、スポーツにまつわる病気や怪我などを描いた小説。(連作中編)
「DIVE!!」のあとだから、いまひとつ乗って読めなかった。
解説によると、どの逸話も実にリアルな話らしくて、解説者は絶賛していたんだけど、私としてはどうにももう一つ物足りない感じ。
キャラは癖があって面白いんだけどな。
看護婦の一枝とかスポーツライターの近藤とかインストラクターの義陽とか。
でも女子高生がたくさん出てきた第1章は、読むのが苦しかった。元気な女の子はつらい。
恋愛エピソードも不要だなあ。
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| 2006/2/1 |
評価 A(S寄り) |
DIVE!! 第4巻
〜コンクリート・ドラゴン |
森 絵都 |
講談社 |
オリンピック代表をかけた選考会。
600点以上を出した選手に代表権が与えられる。
前人未踏の前宙返り4回半に挑んできた知季、腰に爆弾を抱えながらも表現力に磨きをかけてきた飛沫、子どもの頃の怪我でトラウマになっていた前逆宙返りを克服してきた要一、それぞれの成果が競われる最終巻。
ああ。なんというか、感慨無量ですよ。
よかったなー。久々に爽やかで明るくて前向きな風に当たった感じだわー。
しかし、要一にはまいった。大事な試合に高熱だなんて、もうマジにツボじゃないですか。私はやられてしまいましたよ。
このままとち狂って麻木コーチに告白でもかましたら、まじで私は堕ちていったかもしれない。まあ、そんな面白恐ろしい展開はなく、一方でほっとしたのですが。
(告白云々は私の妄想です。要一のキャラではありません。そういう話でもありません)
しかし本当にこの作品、要一がいいです。素敵です。要一の続編希望です。
まあ、それはさておき、4巻は、これまで1冊まるまる誰かの視点で綴られていたのに、初めて1冊のうちに何人もの視点で描かれていた。それも章ごとに脇役視点で。
おもしろい。これがまた良いのだよー。
試合の展開だけでも充分だけど、こういう手法をとると、ますます作品自体の広がりが出る。
たとえばレイジとかサッチンとか恭子ちゃんとか要一パパとか、これまでただの脇役だった人の語りは実に興味深かった。
4冊読んでみて、この本が児童書コーナーに置かれているのはもったいないと思いました。
まあ今の児童文学ブームにより、この本もいずれ文庫化されるような気もするんだけど、たくさんの大人に読んで欲しいかな。
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| 2006/1/30 |
評価 S(A寄り) |
DIVE!! 第3巻
〜SSスペシャル'99 |
森 絵都 |
講談社 |
父も母もオリンピックに出場経験のある飛び込み選手である要一は、サラブレッドだの富士谷ジュニアだの言われながらも、正統派の演技でジュニアの大会は常に優勝。
MDCにおいてもエースであった。
シドニー五輪の代表選手を決める試合は翌年のはずが、どういう理由でか、突然要一のもとに「代表内定」の報が舞い込む。
嬉しいはず。とても行きたかった五輪。だけど、本来胸はずむはずの五輪行きが、要一の気分を沈ませる。
何かが胸を塞ぎ、体内で暴れ出す。押さえようとすればするほど苦しくなる。要一は初めて一週間練習を休んだ。
その後、とんでもないスランプが要一を待っていた。
飛び込み競技に燃える少年たちを描く「DIVE!!」。
3巻は、サラブレッド要一がメインの本でした。
おもしろいですー。1冊ずつメインとなるキャラクターを変えているのですが、これが広がりを感じさせて実によいです。
話に深みが増すようです。改めて、実によい手法だー。
さて、1巻は知季、2巻は飛沫、ときて3巻は要一でした。
この要一のキャラクターはなかなかいいです。ちょこっと神経質でストイック、自信家であり冷静な分析屋。
表現によっては鼻につくキャラクターになってしまいそうな設定なのに、森さんはとっても魅力的な少年に仕上げています。
要一の場合、予想される典型的な「サラブレッドゆえの悩み」とはまったく異なるところに屈託があるのが面白い。
試合のシーンがあるからなのか、これまでの3冊の中で一番めりはりがきいていて面白かった。
試合後、3人がじゃれるシーンが実に可愛らしい。
そしてラストの麻木コーチと要一の会話も実に可愛らしかった。
麻木コーチ、1巻と比べて、私の中でどんどん好感度があがっています。
男前でいてくれ!と願っていましたが、私の願いを大きく上回る男前度です。
米倉涼子辺りに演じてもらいたい!
次巻は最終巻! 決着が楽しみです。
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| 2006/1/25 |
評価 A(S寄り) |
DIVE!! 第2巻
〜スワンダイブ |
森 絵都 |
講談社 |
中国で行われるアジア合同強化合宿に参加する選手を選ぶための選考会。
ミズキダイビングクラブ(MDC)のメンバーは、果敢に挑戦し、好成績をおさめる。
合宿に行けるのは3人で、この選考会の1位と2位の生徒が選ばれた。だが、最後の1人である3人目をめぐって、小さい嵐がMDC内に吹き荒れる。
飛び込み競技を描いた小説第2巻。
1巻より2巻の方がおもしろかった。
このシリーズはどうやら次の3人を軸に描かれているらしい。
・知季 ……中学2年生。8歳の頃から飛び込みを続けているが、目立つような成績は納められず。だが新任の麻木コーチにその才能を見いだされ、3回半を回れるようになった。今波に乗り中。
・要一 ……高校2年生。飛び込みのオリンピック選手を両親にもつ、いわゆるサラブレッド。競技会では1位2位は当たり前。描写によるとイケメンらしいが、特に恋人は居ないらしい。
・飛沫(しぶき) ……高校2年生、なんだよなあ、意外にも。幻のダイバーといわれた沖津白波の孫。津軽の海に飛び込む飛沫を麻木コーチの祖父(=白波の元親友)がみつけスカウトするも拒絶。祖父の没後は麻木コーチに口説き落とされ、ふてくされつつも上京。故郷に彼女あり。
1巻は知季が中心で、まあいわゆる、弟に彼女をとられた話やら(そりゃ彼女ほったらかしで飛び込みに明け暮れていたら振られるさ)、麻木コーチに才能を見いだされるくだりやらが語られたんだけど、2巻は飛沫がメインでした。
この2人、たった3歳しか年が離れていないとは思えないくらい、印象が異なっていて、特に飛沫は祖父の想い出に引きずられたり、そこから脱却したり、と知季とは違う意味で新しいスタートを切って、実に大人っぽいわけですよ。
2巻は、知季&要一&飛沫の3人の関係を、友達のようなライバルのような不思議な感じで書いてあって、やけに爽やかで良かったなあ。
飛沫が実に人間らしく、いい感じです。
でもあと2冊なんだけど、どうなってしまうのだろう。
全体的に語り口があっさりしているわりに、映像が鮮明に頭に残る感じ。
森さんは児童文学作家さんだし、実際「DIVE!」も本屋さんの児童書コーナーにおいてあったけど、内容的には児童向けじゃないなあと思います。
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| 2006/1/20 |
評価 A |
DIVE!! 第1巻
〜前宙返り3回半抱え型 |
森 絵都 |
講談社 |
中学2年の知季は、プールの飛び込み競技を小学生の頃から続けている。
だが知季の通うダイビングクラブは経営難のためつぶれかかっていた。
そこへ、謎の美人女性コーチ・麻木が突然現れ、クラブの立て直しを図るためには、オリンピックに出場するしかない、と力説する。
国内の大会でもあまりいい成績を残せないクラブメンバーは驚くが、アジアの有力選手が参加するという強化合宿の存在を知り、俄然練習に熱が入るようになる。
また、知季のもつ潜在能力を鋭く見いだした麻木は、知季に前飛び込み前宙返りの3回半を飛ぶよう提案する。2回半しか飛んだことのない知季は躊躇するが……。
これは元は児童文学なんですかねー。森さんは児童文学作家だし。「バッテリー」みたいなものかな。
「バッテリー」は野球だけど、こちらはプールの飛び込み競技を描いたスポ根もの。
とはいいつつ、主人公は中学2年でいたって素直な性格だし、そもそもチームプレイでなく個人プレイの競技なので、いわゆるスポ根ものとは少し性質が異なっている。
かえってそれがいいのかも知れないなあ。もくもくと自主練をしたりして身体を鍛えたり、まあストイックなことといったら。
児童文学だけあって、文章が大変読みやすい。言葉の使い方がキレイで、好感が持てます。
マイナースポーツに焦点を当てているのが面白く次巻も読んでみたいですが、キャラクターがまだよく分からないかな。
最初麻木夏陽子(あさき・かよこ)のキャラが今ひとつだったけど、読んでいるうちに慣れてきた。彼女にはずっと男前で居てほしい。
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| 2006/1/14 |
評価 A(B寄り) |
| 四日間の奇蹟 |
浅倉卓弥 |
宝島社文庫 |
ピアニストだった如月敬輔は、ウィーンでの留学中に殺人事件に巻き込まれ、日本人の子どもをかばおうとして左手の薬指を拳銃で吹っ飛ばされる。
助けた子どもは脳に障害をもっており、言葉を自由に紡ぐことができなかった。千織という名のその女の子は件の事件で一度に両親を殺害され、天涯孤独の身の上となってしまった。
ピアニストとしての道を絶たれ、人生に絶望し、心を閉ざしていた敬輔は、千織を連れて日本へ帰ることにする。
日本では千織の行き場が無く、敬輔の家で共に暮らすが、千織はピアノに才があり、いつしかレコードを聴いたとおりに完璧に弾きこなすようになる。
一緒に暮らすうちに千織の保護者としての感情が芽生えた敬輔は、千織が他に対して少しでも心を開けるように、訓練もかねて、演奏旅行に連れ出すようになる。
その演奏旅行中、二人はとんでもない事故に遭遇し、千織は怪我をする。
うーん、微妙。
傷を持つ人々が出会い、奇蹟とも言うべき出来事を通じて心を通い合わせ、一応の決着を見る。少しずつ成長していく主人公達。そして、要所要所に流れるクラシックピアノ。
どう考えても私の好みの要素が詰まっているはずなのに、はまれない。感動しない。喜べない。琴線に触れない。
理由はわからないが、読後の感想も希薄だった。
なんでだろう。
この話の根幹である大事故がきっかけで起こったことが、東野圭吾の「秘密」と同じ状況だから?
いや、違うな。やはり、あまりにも非現実的だからかもしれないなー。
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