「優太郎が生まれた日に乾杯!」」

亀田総合病院の『Kタワー』に入るには若干の手続がいります。産婦人科で入院している人達のフロアは3階なのだが、そこには一般の人は入れない。簡単な手続で入れる「ビジター」と病院側の承諾が必要な「サポーター」というのがある。サポーターになると24時間出入り自由。そして簡易ベットで泊れる。サポーターの仕事とは、そう、子供が無事、産まれてくるよう出産のサポートをすることなんです。こうしたシステムも僕は初めてでしたが、すごくいいなぁと思いました。新しい医療サービスのカタチだと思います。

 

で、ドナちゃんの入院している病室に入りました。ここは、LDRという部屋で陣痛が起きてから、出産するまですべて同じ部屋でやるというシステムの部屋なんです。でも一見すると高級ホテルみたいですよ。ましてや出来たばかりですからね(^^;)ちなみに気になるお値段ですが(^-^;)、鴨川にしては高い方ですが、東京と比べると同じくらいだそうです。

肝心のドナちゃんですが、まだ陣痛の痛みは鈍く、たぶん、もう少しあとになるんじゃないかと言う感じでした。取りあえず、間に合いました。さてこれからどうなるのか???しばらくすると、ゆきちゃんが来た。そして簡単に出産が早まった経過を聞きました。あとで聞いた話だが、妊娠中毒症が意外に重く、自然分娩は無理だろうと、帝王切開になるんじゃないかと思っていたそうです。ただ、この時点では本人前にしてそんなことは言えなかったみたいだが。そうこうしているうちに午後3時半くらいだったか、いけそうだということで、出産の準備が始まりました。病室内は、看護婦さんや助産婦さんと女の人ばかり。主治医の先生は男性ですが、あとは全部、女性。で、手術するわけじゃないから、そんなに準備するわけではないんですよ。ただ、ひたすら産まれてくるのを待つばかり。僕は何もできないから、ただひたすらドナちゃんの汗をぬぐっていた。。。(^-^;)ゆきちゃんは、、さすがに上手かった。毎日のようにこれまでたくさんの子供を取り上げてきてるわけですよ。「なおちゃん、そーよ!上手よ、そうやっていきむのよ。無理しないでね、次の(陣痛の)ときでいいわ、上手よ。」とすごく包容力のある安心できるサポートだった。僕はそんなゆきちゃんを見て、ふと今回この病院で産むことになったいきさつを思い出した。そう、それは2年前、ここで同じくドナちゃんの幼稚園からの幼なじみ千加ちゃんが出産する時に話はさかのぼる。千佳ちゃんが、ホラ!小学校のとき一緒だったゆきちゃんよ、って言ってもドナちゃんはあんまり覚えていなかったらしい(^^;)でも、ゆきちゃんは、ふたりのことをすごく覚えている“事件”があったらしい。小学校4年くらいだったか、ゆきちゃんは、その頃、前に出るタイプというか先頭になって出る、もしくは出しゃばるタイプだったらしい。それがある日、生意気と写ったのか、クラスのみんなから仲間はずれのイジメにあったらしい。でも、ドナちゃんと千加ちゃんは、その頃からそんな風に群れをなすのがキライな“ROCK”なスタンスだったので、全然フツーにゆきちゃんにも接していたそうだ。それがゆきちゃんにとってはすごく嬉しかったらしい。だか何十年もたっても忘れずに覚えていたのだろう。当の本人達は忘れてしまっている出来事だとしても。そこで、もし、子供が産まれるときは、私に取り上げさせてということになったらしい。ドナちゃんもそんなゆきちゃんをすごく信頼してて今回、ここで

産むに至ってる。その話を思い出して、僕はグっと込み上げるものがあった。実際、無事に産まれた日の夜、僕はそのことを思い出し、涙があふれてきた。ひとは独りじゃ生きていけない。いろんな人達の思いがあって、つながって生きてきている。

 ドナちゃんも頑張ってた。お腹はキューキュー痛いみたいだけど、とにかく産み出さないと、この場は終わらない。子供も産道間近にいるんで、呼吸がしづらくって苦しいらしいんですよ。これを打破するには産み出すしかない。僕もこぶし振り上げがんばれーって気持ちで一杯ですよ。出てきてくれ、とにかく早く出てきてくれ!そんな気持ちでした。生まれ出てきた瞬間は、「やったー!終わった!ついにゴールだぁ!」って感じでした。そう、なんか長距離マラソンにも似ていますね。生まれたらすぐ子供の処置に入り、立ち会い出産につきもののへその緒切りもないままタターーンと子供の処置に入りました。そして5秒くらいして「ほんぎゃ〜」という泣き声。「終わった〜〜」と口々に呟きました。うれしかったですね。とにかくこの日を祝いたかった。祝うっていったら、酒でしょう!?でもここは病院。。。そんなことは言ってられないですよね。(笑)結局、近くのコンビニまで20分くらい歩いて酒を買ってきましたよ。

ドナちゃんは飲めなかったけど、この日をビールで乾杯したかったんです。

 

かたわらには、今回の出産をずっと見守ってくれた枝マメのぬいぐるみがあるんですよ。ドナちゃんも陣痛で痛いときに心が癒されたっていっていました。これ、実はタバサさんていう僕の友達からのプレゼントなんですが、タバサさんも去年の10月に出産したらしく「自分で出産するときあればよかった」と思ったものをプレゼントしてくれたそうなんですよ。この気持ちがうれしいですよね。タバサさんの結婚式のとき、タバサさんにはドナちゃんの作ったティアラを付けてくれたって経緯があるんですよ。一番の晴れ舞台にドナちゃんのアクセサリーを付けてくれて、今度は僕たちの出産というビックイベントに常にそばにある大切な物をプレゼントしてくれるとは。。。つくづくひとはいろんな人とつながって生きているんだって思いますよ。