「東横線で渋谷から一つ目の駅に着く時の目に入る緑と煙突が忘れられない。」とあの人は言いました。
「雨の日、あすこのホームに立つと草の匂いとうっそうとした緑に、攫われそうになる。あの、団地の奥に迷い込みたくなる。」あの人は確かそのような事をいいました。
七年も前の話です。
その駅の名前を代官山、緑の団地の名前を同潤会アパートと言いました。
アパートの存在もあの人も今となっては遠い昔の記憶でしかありません。
ただ、その記憶が、先日ばらばらと押入れの奥から出てきてしまったもので、
ついつい懐かしく思ってしまいました。
少しだけ話に付き合ってくれたりすると
嬉しいかもしれません。
ううん、とても嬉しいのです。
2002/1/20 Kana