ミートホープって少なくとも牛には希望だよね(牛肉以外ばかりを牛肉と偽って使っているから)。 
                はい。あいかわらずどうしようもないことをいっておりますKanaが、 
                「誰か 
                食べて 
                くれませんか」 
                家原利明:著 
                という本を読みました。 
                   
                  飽食に飽きたお金持ちが冗談から人肉を食したくなり、人肉では問題が出るからクローンを製造して食べてしまおうと、そういったお話。 
                星新一的な文体です。淡々と刻々と、クローズアップされて状況が変化していくさま、Kanaは最初は人肉食いという発想にすら少々嫌悪感をいだいておりましたが、読み進めていくうちに、いとおしいほどに人間の本質をよくあらわしているなと…。お友達は「ばかばかしいよ〜」と貸してくれましたが、最終章以外はかなり、真剣に作者の深みを感じられました。 
                状況の変化は、たとえば星新一でいうところの「声の網」、小松左京で言うところの「復活の日」のように、個人で動かす歴史、ではなく、純粋に時の流れを部品部品として扱っています。飽食のために生み出されたクローンが(以下反転でネタばれ)、ずさんな管理体制から、人間社会に徐々に流出し、やがてクローンを食べているのか人を食べているのかわからなくなっていって……というさまを、歴史の教科書のようにオムニバス小説のように描いていきます。あくまで、軽妙に。 
                Kana的には人の欲望は其れを生み出しえるだろうなということが心に残りました。吶々と書かれた特徴ある文章の中に、洗脳や、食糧問題、役人の腐敗や人口問題など、現代を切り取った事象がたくさん含まれています。 
                もっと、度肝をぬく終わらせ方もいくらでもあったでしょうに、作者はあくまで、経過として、軽いテンポで、ばかばかしい話だったでしょう。というエンディングを選んでいます。そこに作者の思いを感じます。クローンの位置付け的には、鉄腕アトムのロボット三原則やアップルシードにおけるクローンを髣髴とさせられます。人間以上に純粋な彼らは、人間以上に人間らしいのです。そして本物の人間たちは、どこまでも人間らしく、利己的で愚かなのです。 
                よほどの印象だったのか、文体が夢に出てきました。赤川次郎や、星新一のような、なつかしい匂いがするのです。 
                結局我々が食べている肉だって牛だと思っていたら、ウサギだったりパンだったり、鴨だったり豚だったり血だったりするわけです。 
                昨今の事件とあわせてこの本を読むと、いろいろ感慨深いものがあります。 
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